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綺譚の読み方/意味/由来/同音異義語・綺譚を使用した作品

更新日:2024年10月12日

言葉の違い

綺譚という言葉は、本などのタイトルで見かけても、その意味や由来などご存知でしょうか。綺譚のタイトルの付いた小説やコミックには、不思議なことや、奇想天外な内容のストーリーを描いたものが数多くあり、今回は綺譚のタイトルが付いた作品などをご紹介させて頂きます。

永井荷風は東京小石川の生まれで、小説家、随筆家として、江戸情緒が残る向島などの下町を舞台に、花柳界に生きる女性などを描きました。 永井荷風の作品「濹東綺譚」(ぼくとうきたん)は、中高年作家と娼婦の女性とのかりそめの出会いから別れまでを軸に、近代化してゆく東京の街の、失われゆく情緒の香り残る、向島や浅草などの下町風景を丁寧に美しく描いた小説です。 荷風は、この作品のタイトルを付けるときに色々考えて、綺譚という新しい、自分独自の言葉を生み出しました。また濹東とは、東京の隅田川東岸の地区のことで、現在の江東区を指します。濹は墨田川、今は隅田川と書き、濹東に伝わる綺譚、江東区周辺の美しい物語といった意味のタイトルになります。

奇談珍しい話

泉鏡花1873年(明治6年)11月4日ー1939年(昭和14年)9月7日、本名鏡太郎、石川県金沢市出身は、小説家、戯曲家で、近代に幻想文学というジャンルを先駆けて確立した作家です。 自由で豊かな想像力と、流麗で卓抜な表現力を駆使した文体で、妖気漂う美と幻惑に満ちた深遠なファンタジー世界を描きました。 最初に評価を得た、文語体の美しい文章で描かれた純愛ロマンス「外科室」、旅僧が魅惑的な美女と出会う怪異物語の名作「高野聖」、心理描写の細やかさと、五感を刺激するイマジネーションが広がる傑作「歌行燈」、少年の見た束の間の美しい幻「竜潭譚」(りゅうたんだん、全て岩波文庫)など、鏡花の作品は、どれも万華鏡のようにさまざまにきらめく美しい幻想綺譚です。

綺談面白く造った話

「京都綺談」は、古都を舞台に人の心の闇と愛憎渦巻く、幻惑的な作品を描いたアンソロジーです。収録作品は次のとおりです。 赤江瀑「光悦殺し」、芥川龍之介「藪の中」、岸田るり子「決して忘れられない夜」、柴田よしき「躑躅幻想」、澁澤龍彦「女体消滅」、高木彬光「廃屋」、水上勉「西陣の蝶」、森鴎外「高瀬舟」 また、「沙高楼綺譚」浅田次郎著は、秘密サロン「沙高楼」に、出世して富と地位、名声を得た人々が集い、死ぬまで秘密にしておかなければならない真実を告白し合う話です。その場だけの語りとして、胸裏におさめるべき互いの秘密を所有し合うことの怖さを感じるミステリーです。

奇譚珍しい話や言い伝え

「ゴシック名訳集成西洋伝奇物語ー伝奇ノ匣(7)」は、ゴシックの名作を気品あふれる名訳でえがいた作品です。ゴシック小説とは、18世紀後期から19初期にかけて、退廃の雰囲気漂う怪奇的な作風で描かれた恐怖小説のことです。 ゴシック小説のジャンルを築いたホーレス・ウォルポールの「オトラント城奇譚」(平井呈一郎訳)、恐怖など異常な精神状態にある人間を描き、そこから美を見いだしたエドガー・アラン・ポー「大鴉」(日夏耿之介訳)など収録されています。 「因果物語」1661年(寛文1年)鈴木正三著は、江戸時代の仮名草子で、著者が多くの地域を旅して見聞きした怪異綺譚です。全て事実として、具体的な場所や名を記し、「聞く人慥かに語るなり」、「見たる人多し」などと現実に起きたことを強調して書いています。

怪談

「怪談・奇談」小泉八雲著、田代三千稔訳は、ギリシャ生まれのアメリカ人新聞記者、本名ラフカディオ・ハーンが、民間伝承を基に集めた怪談話で、広く知られた「耳なし芳一のはなし」、「雪女」、「破られた約束」などの怖い話が42編収められています。 著者の小泉八雲は、日本人の美意識や伝統文化、風土などに魅了され、日本を深く愛した作家で、「怪談・奇談」も日本の情趣ある美しい文章で読みやすい本となっています。

綺譚を使用した作品は?

綺譚のタイトルの付いた小説やコミックは数多くあり、テーマやジャンル、ストーリーもさまざまです。

綺譚倶楽部

「綺譚倶楽部」JET著は少女漫画で、作者の代表作です。文庫では、「春」「夏」「秋」「冬」の4冊と「帰之章」コミックス2巻があります。舞台は大正時代のロマン薫る東京、新聞社「綺譚倶楽部」に勤務する新聞記者とカメラマンの主人公が、残忍で奇異な事件を追うホラー漫画です。 作者の描く人物は男性はハンサムで、女性は美しかったり、背景や小物も含めて確かな画力が魅力的です。他に「シャーロック・ホームズ」シリーズやモーリス・ルブラン原作のアルセーヌ・ルパン、横溝正史の「犬神家の一族」、「悪魔の手毬唄」などの推理小説をコミック化していて、一度読んでみてはいかがでしょうか。

綺譚集

「綺譚集」津原泰水著は、生や死の世界を時に残酷に、時に美しく描いた15の短編ストーリーが描かれた幻想文学です。生者と死者の世界の迫間、普通の人間には理解しがたい、底知れぬ精神の深い闇など、残酷で醜悪な中に耽溺した美を表現した小説です。 著者は幻想文学だけでなく、ミステリーやホラーなど多方面のジャンルで才能を傑出しています。他に「赤い竪琴」、「少年トレチア」、「ルビナス探偵団の当惑」などの作品があります。

綺譚の島

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初回公開日:2017年12月26日

記載されている内容は2017年12月26日時点のものです。現在の情報と異なる可能性がありますので、ご了承ください。
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