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アフォーダンス理論とその具体例|建築・保育・人工知能・作業療法

マネジメント

アフォーダンスという言葉はご存じでしょうか?本稿では、アフォーダンス理論の概要を説明した後、アフォーダンスをより理解して頂くための例をご紹介します。その後、アフォーダンス理論の応用が著しい分野である建築、保育、人工知能、作業療法について具体例をご紹介します。

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アフォーダンス理論とは

『アフォーダンス』と聞いて、皆さんはどのようなものを想像するでしょうか。『アフォーダンス』というのは、「与える、提供する」という意味の英語、アフォード(afford)からきており、知覚心理学者であるアメリカのジェームス・J・ギブソンによって作られた造語です。

アフォーダンスの定義

アフォーダンスは、動物(有機体)に対する「刺激」という従来の知覚心理学の概念とは異なり、環境に実在する動物(有機体)がその生活する環境を探索することによって獲得することができる意味/価値であると定義される。

上記のことを要約すると、アフォーダンスとはつまり『環境が様々な要素により、人や動物、生き物に働きかけることで、そのフィードバックによって感情だけでなく動作も生まれる』ということを指しているのです。 例えば、引き手のついたタンスを想像してみましょう、"私"はタンスの取っ手を引いて開けることができるということを知っています。ここに存在する「私はタンスの開け方を知っている」と、実際に開けるであろうタンスと"私"の間にできる関係のことを、「私とこのタンスには"引いて開ける"というアフォーダンスが存在している」と言い表します。 要するにタンスの取っ手が"私"に対し『ここを引っ張ればタンスが開くよ』『私はタンスの取っ手ですよ』と語りかけているからだ、という解釈をするのが、アフォーダンスの理論に基づいた考え方だと言えるでしょう。

近年のアフォーダンスの使われ方

しかし近年、特にデザインの世界において、アフォーダンスというのは「人をある行動へと結びつけるために必要なヒントを示す事」という意味でも使われています。もう少し分かりやすく言い換えてみましょう。 アフォーダンス理論とは、私たちが『過去の経験から物事に対する行動や考え方を結び付けることのできる効果』のことを言います。このように、結び付けられたイメージ・想像や個々の考え方などを『アフォーダンス』といい、分かりやすく言えば固定概念(先入観など)と同じような意味で使われることもあります。

アフォーダンスの例

アフォーダンスとは何か、ということを上記で説明しましたが、理解は深まったでしょうか。ここでは、『アフォーダンス』の例をご紹介いたします。例を見ることでより『アフォーダンス』への理解を深めていきましょう。

ドアノブが付いたドアを開ける

"私"の目の前にドアの取っ手があったとしましょう。すると、"私"の体と意識は自然に「ドアノブを回す」と言う行動を反射敵に行うはずです。しかし、そのドアが例えドアの取っ手を回したとしても開かないドアだったとしても、過去の経験から『ドアの取っ手を回せば開く』という行動が働いてしまい、結果的にドアを開けることができないのです。

平たい場所

"私"の周りに平面の物体があれば、過去の経験から『椅子があれば座る』というイメージが頭には定着しています。そのことから、反射的に「ここに座ろう」という意識が働くのです。

スイッチ

私たちの周りには様々な形状のスイッチがあり、スイッチを押すと何かが起きるということを過去の経験から判断することが可能です。、仮にそのスイッチが何の意味を持っていなかった押しても憶測や先入観、過去の経験から『スイッチは何かを起こす役割を持っている』と判断するのです。

赤色の文字

重要なポイントは分かりやすいように赤で印がつけられているものです。私たちはその経験から、赤文字を文章中に見かけると『重要なワード』である、と反射的に認識します。

具体例

建築の例①

先述した扉の例を思い出してみましょう。私たちは、ドアを開ける部分に平たい板が貼り付けてある場合、そのドアを「押して」開けるものだと瞬時に理解することができます。(これをアフォードすると表現します。)同様にドアノブがついている場合は、ノブを「回して」開けることをアフォードしています。

建築の例②

人は水平面を見ると、物を置こうと考えます。これも先述した過去の経験からくるアフォーダンスと言えるでしょう。しかし、それが物が置けるほどの幅広の手すりだったと仮定しましょう。低い場所にあるなら荷物を置いても問題はありませんが5階だったらどうでしょうか。物を置くと落下するという危険性が考えられるため、置こうとは思わないはずです。 こういったアフォーダンスを元に、建築の世界では、危険だと思われる手すりには傾斜をつけて、予め物を置けないようにデザインしています。

建築の例③

別の例をあげてみましょう。中には「近道行動」と呼ばれるアフォーダンスがあります。人は前方にコーナー(曲がり角)がある場合、できるだけ内側を歩こうと反射的に動きます。この時、曲がり角の位置を見誤ると体の一部がそこに接触してしまう危険性があります。 上記のことからアフォーダンスを考慮すると、コーナーは人に接触されても大丈夫な素材にするか、形状を工夫して予め事故を防ぐ必要があると言えるのです。

保育①

こどもたちは、ものなどの環境と自分の行為・行動の関係について、より原理的に捉え・考えています。例えば「○○ちゃん、テーブルには登らないよ!」と、保護者をはじめ周囲を取り巻く保育者たちが口にしているのを聞いたことがあると思います。 それは、テーブルがこどもにとって好奇心をかられ、登りたくなる、きっと登れるだろうと判断できる形状をしているからです。テーブルの形状や状態は、こどもに、『登る』ということをアフォードしている、と言えます。 しかし、テーブルの上に食事が並びきらないほど置いてあったとしたら、それでも登ろうとするこどもは、ほとんどの確率でいないでしょう。この時のテーブルの状態は、こどもにとって登れない状態だと判断されている(テーブルの状態が、登ることをアフォードしていない)のです。

保育②

子供は、大人が考えつかないような行動を取り周囲をびっくりさせることも多いです。例えば「わざわざ石の上を歩く」、「大人が入れないような隙間に入る」などです。これらはこども目線で見た環境から「抵抗の変化」を経験してアフォードしていると考えられます。 さて、上記で出てきた「抵抗の変化」を分かりやすく解いていきましょう。不安定な場所(石の上)を歩く時には、一歩・一歩違う感覚が体にかえってきます。それは大人でもこどもでも同じ感覚で、予め得ていた安定感から急激に不安定な状態になったりすることで、「抵抗の変化」を経験することができます。 こういった不規則的な情報を経験することで、安定面・不安定面という様々な「支持面がもつ規則性」を学習していきます。こどもは不安定な場所(石の上)にて異なる支持面の安定性を探り、支持面によって変わる自己の体に感じる抵抗の変化を楽しんでいるとも考えられます。

人工知能

人工知能やロボット制御の分野では、アフォーダンス理論が活用されており、既に大きな成果が上がり始めています。従来のロボットは「刺激に反応する複雑な機械」という人間観に基いて、できる限り人間の頭脳に近づけるため、『刺激に対する処理能力』を上げることが課題となっていました。 しかし、アフォーダンス理論が取り入れられたことによって、人間や動物は刺激に反応するのではなく『アフォーダンスの知覚』という視点で考えはじめ、今まで知られていなかったシステムによって反射的に行動することが明らかになりました。 アフォーダンスは「刺激」でなく「情報」のことを指します。動物は情報に反応するのではなく、情報を環境に「検索」し、その中から反射的行動をピックアップしているのです。この考えに基づき、現在では人工知能の研究開発に、大きな前進が期待されています。

作業療法など

精神科分野においてのアフォーダンスは、「危機管理上の注意」として言われています。つまり、自殺願望の患者は、どんな物でも自殺の道具としての利用価値を見出すということです。「腰紐」「洗剤」「縄跳び」「薬」「歯ブラシ」「コード」思いもよらないものでさえも自殺の道具にしてしまいます。 この場合は、病院や作業療法施設の道具類が自殺を提供している訳ではないことは明白です。精神科作業療法では「自殺」という作業は決して提供しません。しかし、自殺願望者患者にとっては、すべての物事を自殺に結びつけてしまう、という一つの例です。

アフォーダンスのこれから

これまで、アフォーダンスについて、アフォーダンスとは何かを、応用が進む代表的な分野の例を交えながらご説明してきました。アフォーダンスについては、ご紹介した分野以外にも、Web関連での応用が期待されています。今後もますます利用されていくことでしょう。

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