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退職で損害賠償が発生すると脅された判例|かかるケースはある?

退職ノウハウ

退職を決意して上司にその意思を伝えたら損害賠償が発生すると脅される、そんなケースはあるのでしょうか。また、実際にそのような損害賠償は有りうるのでしょうか。退職による損害賠償が発生するか否かをまとめましたのでご参照ください。

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退職で損害賠償で訴えるというのは単なる脅し?

労働者には原則として、退職の自由が認められています。労働者が自己都合で退職したいと考え、事業主に「退職願」を提出した場合は、退職日を事業主と話し合った上で、退職の手続きを進めることになります。このように事業主と労働者が合意の上で退職することを「合意退職」といいます。 この場合は、労働者と事業主が退職日の調整やその他の退職条件を話し合い、円満に退職手続きを進めるので基本的にトラブルが発生することは少ないです。しかし、退職しようとしている労働者が、事業主の会社経営にとって必要不可欠な存在で、その者が辞めると困るという場合、事業主は労働者からの「退職願」を受け取ることを拒否することがあるでしょう。または、その労働者に対し「もし、ここで辞めるといえば、会社に甚大な損害を及ぼす。そうなれば損害賠償を請求するぞ」などと脅されることさえあるかもしれません。そのような場合には、労働者は会社を辞めることが出来ないでのしょうか。

法的にも事業主が労働者を縛り付けて辞めさせないのは許されない

辞めさせないということは、いくら事業主が労働者を会社に縛り付けようとしても法的には絶対に許されません。それは憲法22条で「職業選択の自由」は全ての国民に認められた権利であるとしていることと、憲法18条の「何人も奴隷的拘束を受けない」「意に反する苦役に服させられない」と規定されているからです。労働基準法もこのような憲法の思想を取り入れ、労基法第5条で「強制労働の禁止」を規定しこれに違反した事業主には労基法上最も思い刑罰が課せられます。

<憲法22条> 何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。

<憲法18条> 何人も、いかなる奴隷的拘束も受けない。又、犯罪に因る処罰の場合を除いては、その意に反する苦役に服させられない。

<労働基準法 第5条> 使用者は、暴行、脅迫、監禁その他精神又は身体の自由を不当に拘束する手段によつて、労働者の意思に反して労働を強制してはならない。

退職したら損害賠償請求すると脅された場合の対処法

会社を辞めたいがその際に損害倍書を請求すると脅された場合、そんなことになったら困ると我慢して勤め続けるのは避けるべきことでしょう。もし、雇用契約に退職による賠償金額や違約金の定めがあったとしても払う必要はありません。雇用契約にあったなどと言われると、そうだったのかと泣き寝入りしそうですが、そんなことはありません。なぜなら、「労働基準法 第16条」で、このような賠償予定を罰則付きで禁止しているからです。

<労働基準法 第16条> 使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない。

賠償額に関する雇用契約上の取り決めは禁止

賠償額に関する雇用契約上の取り決めは禁止されており、もし賠償額があらかじめ定められている場合はその部分は無効になります。この規定は労働者の自由を奪い、身分を不当に拘束することを防ぐために設けられました。この条文に反している雇用契約は、その箇所すべてが無効扱いとなります。 但し、この規定が禁止しているのは、事前に損害賠償や違約金を設定することであって、労働者の過失による損害を請求することを禁止しているわけではありません。例えば、「研修にかかった費用を返せ」と言われて裁判までなった場合、「その研修を受けるか否かを労働者が選択できたか」「業務とどれほど関係があったか」「拘束はどの程度だったか」などが注目されます。

新日本証券事件(平成9年) 就業規則としての性質をもつ留学規程の中の、留学終了後5年以内に自己都合退職した場合に留学費用を全額返還させる旨の規定は、労働基準法16条に違反して無効であると判断した事例。

期間を決めた雇用契約には注意が必要

初めから損害賠償や罰金を決めた雇用契約が無効となることは前述しましたが、期間を決めた労働契約を結んでいる場合は少し注意が必要です。期間を決めた労働契約の場合は、会社側も期間内に労働者を辞めさせることが出来ないのと同様、労働者側も正当な理由なしに辞めることができません。 正当な理由には、妊娠・出産や病気などの個人的事情、介護などの家庭事情、パワハラやセクハラなどの職場環境が該当します。しかし、単にもっと良い転職先が見つかったなどの自己都合である場合は正当な理由にはなりません。そのような正当な理由なく退職して会社側に損害を与えた場合、損害賠償請求が認められる可能性は十分にあります。

実際に退職による損害賠償が認められた判例

特定業務の担当者として雇用した労働者が退職したことにより、その業務が打ち切られたためにその労働者に対して損害賠償を請求した判例があります。その判例は、以下になります。

ケイズインターナショナル事件(平成4年9月30日 東京地裁)

労働者の突然の退職(入社後4日)によって被った損害賠償が認められたケースです。 <事案の概要> 損害賠償を求められたXが勤めていたY社はA社と結んだ期間3年のビルインテリアデザイン契約を履行するため、常駐担当者としてXを新たに採用して配置をします。しかし、Xが入社して4日後に病気を理由に欠勤し辞職したことから、A社との契約は解約されました。そこでY社は、1,000万円の得べかりし利益を失ったとしてXと交渉の上、月末までに200万円を支払う旨の念書を取り付けたました。しかし、これが履行されなかったためその履行を求めて提訴しました。 東京地裁は以下を勘案し、3分の1の70万円と5分の遅延損害金の支払いを命じることで判決は確定しました。 1.経費を差し引けば実損額はそれほど多額ではないこと 2.労務管理に欠ける点があったこと 3.Xの対応にも問題があること この事件では会社の損害賠償請求が認められ、労働者は請求額の3分の1を支払うことになりました。この事件のように、損害賠償請求されて支払い義務が生じる場合もありえます。

退職時に損害賠償請求が可能なケース

ここまで見てきて、あらかじめ賠償することを決めた雇用契約を締結すること自体が無効であることはわかっていただけたでしょう。また、退職により実際に損害を被り裁判でも損害賠償が認められたケースも見ていきました。では、会社側が退職者に損害賠償請求することが認められるケースには他にどのようなものが考えられるのでしょうか。

損害賠償請求可能なケース-一切引き継ぎをしないで退職

退職するにあたり、誠実に引き継ぎする必要があります。そのため、労働者が引き継ぎ自体を一切せずに退職すれば、使用者はこの労働者に対して損害賠償請求できる可能性があります。但し、使用者としては次にその業務を行う人が満足する仕事ができるように完璧な引き継ぎを求めたいでしょうが、現実的にはそこまでのものは実際には不可能と考えられます。そのことから、誠実に必要な範囲内で引き継ぎが行われていれば労働者に責任を問うことはできないでしょう。 また、引き継ぎが一切されなかった場合に労働者の義務違反を問うことはできたとしても、引き継ぎ未了によって損害が起きたという因果関係については、使用者側が立証を行わなければならず、そのことは困難が生じます。さらに言えば、その労働者のみに責任がある場合に、その損害額がいくらになるのかという算定やその立証も難しく、会社が求める金額を全額請求するというのは現実的にも難しいでしょう。

損害賠償請求可能なケース-引き継ぎが不十分で退職

それでは退職した労働者の引き継ぎが不十分だった場合はどうでしょうか。引き継ぎが不十分という場合は、その程度や態様があまりに悪質であると認められない限り損害賠償請求は認められにくいといえます。その理由は以下です。 1.一応、引き継ぎは行われている。 2.不十分の定義が不明確である。 3.不十分な場合は、使用者が退職日を先延ばしして依頼するなど、本人に何らかの提示をしたり、対策を講じる余地があった。

突然退職した社員に対して損害賠償は発生するか?

最近では退職時におけるトラブルが問題となることが多いです。その中でも、退職したら会社から損害賠償請求されたというものです。労働者は、期間の定めがある労働契約を除いて、退職する日の2週間前までに退職届を提出すれば退職できます。しかし、損害賠償請求を盾に会社側が退職を拒否することがあるでしょう。

試用期間中に即日退職した労働者に対しての損害賠償請求

通常2週間前に退職届を提出するという民法の規定に従っていませんので、即日退職した労働者には損害賠償請求することができます。しかし、試用期間中となれば話は変わってきます。この期間中に即日退職されても損害賠償請求することは難しいでしょう。

就業規則に退職に関する特約がある

就業規則に、退職の場合は半年前に届けることこれを満たさない場合は損害賠償請求できると記載があった場合に、2週間前に退職届を提出すれば損害賠償請求できるのでしょうか。 就業規則で退職に関する特約を規定することは労働基準法上も問題ありませんので、損害賠償請求の可能性は十分ありえます。但し、仮に損害賠償請求されたとしても実際に生じた損害のみに請求できますので、明細を確認してもらうことになります。道理にかなわないものには、支払う義務はありません。

退職届提出後の無断欠勤はダメ

労働者は退職したい日の2週間以上前から退職届を郵送で提出し退職日までの欠勤届も提出すれば、損害賠償請求は逃れられるでしょうか。 答えは、欠勤届が会社側で受理されない場合に無断欠勤扱いとなるために損害賠償請求の可能性があるということです。もし、無断欠勤したために会社が臨時で従業員を雇った場合、その費用を請求されれば支払う義務が生じる可能性があります。きちんと会社と話し合った上で退職しなければなりません。

突然辞めた場合に退職金不支給とすることができるか

退職届け提出後も一定期間正常に勤務しなかった場合や引き継ぎ業務をしなかった場合、または企業からの貸与物の返還義務に応じなかった場合は、退職金の一部または全部を支給しないという規定が就業規則や賃金規定で明確にされていれば、退職金の一部または全部の没収を警告して引き継ぎ業務を促すことは可能です。では、実際に退職金不支給とすることはできるのでしょうか。ここで、退職金の不支給に関する事例をみていきます。 <退職金不支給が認められた判例> 大宝タクシー事件(昭和58年4月12日 大阪高裁) 退職申出後2週間正常に勤務しなかった場合には退職金は支給しないことが認められました。退職の申し入れを行ったとしても、民法上2週間の勤務義務があり、それを怠ったことにより退職金不支給とすることは有効であるとしました。 <退職金不支給が認められなかった判例> 栗山製麦事件(昭和44年9月26日 岡山地裁玉島支部) 円満退職者以外には退職金を支給しないとされている退職金規程が円満退職者以外の即ち、何かしら会社とトラブルがあって退職した労働者に対して、退職金が実質的に損害賠償金としての意味をもち、労働基準法第16条賠償予定の禁止と第24条全額払いの禁止の規定に反するから無効であるとしました。 大宝タクシー事件自体は、引き継ぎの問題による不支給ではなく、退職前の2週間は正常に勤務するとの労使協定を締結しているという前提で、正常な勤務をしなかったとして、退職金の一部が不支給となった事案です。

退職時に損害賠償請求された時の対応方法

会社に損害を与えたとして賠償することが退職の条件とすることは、労働基準法上違反となり無効になるということは前述しました。それでは、退職すると申し出たときや退職後に、会社が業務上のミスを理由として損害賠償や慰謝料を請求してきた場合に、労働者はこの損害賠償をしなければならないでしょうか。

退職後、損害賠償請求された

会社から「あなたが在職中の業務ミスによって、会社が大きな被害を被ったため、損害賠償請求する」と通告された場合、どのように対処すればいいのでしょうか。まず初めに、検討すべきことを解説します。

損害賠償請求をした会社の目的を考える

会社から従業員に対して「損害賠償請求する」「慰謝料を払え」と警告された場合の会社の狙いや目的を考えましょう。特に、退職時や退職後のタイミングで「業務上のミスを理由に損害賠償請求する」と通告された場合、在職期間中は特に問題とならなかった些細なミスであることが多いです。ブラック企業が損害賠償の警告をする背景には、退職を阻止したいなど金銭的請求とは別の真意が隠れていることが多いのです。会社との退職交渉において、会社側の牽制材料として損害賠償や慰謝料請求を利用している場合は、会社の目的や狙いを検討しましょう。

労働者側に故意や過失が存在するか

使用者である会社が労働者に対して損害賠償を請求する場合は、民法における不法行為や債務不履行などの根拠によることとなります。不法行為の場合は、労働者側の主観的な要件として故意や過失が必要です。故意で会社に損害を与えた場合は損害賠償を請求されても仕方ありませんが、労働者が使用者からの業務上のミスを理由として損害賠償請求に反論するとすれば過失があるかどうかが争点になります。過失が一切ないケースなら、そもそも会社の主張する損害賠償請求は裁判などの法的手続きでは認められません。以下のようなケースでは、労働者側には会社からの損害賠償請求されるほどの過失は存在しないと言って良いでしょう。 ・業務の特性上、一定程度発生するミス ・他の労働者も、同様のミスをある程度起こす可能性がある ・職務上、通常尽くすべき注意を尽くしても避けられないミス

損害賠償額は、適切な損害額か

使用者である会社が労働者に対して損害賠償請求するためには、民法上の損害賠償の要件を満たす必要があります。そのためには、損害が発生していることが必要です。会社に発生した損害を、その限りで賠償するのが「損害賠償請求」だからです。ブラック企業からの損害賠償請求の場合、実際には会社に全く損害が発生していないケースや、会社が請求している損害額が実際の損害に比べてあまりにも過大なケースが散見されます。 また、損害と過失の間には相当因果関係が必要です。偶然、特別な事情により発生した損害は、相当因果関係の範囲内の損害であるとはいえません。勤務を続ける場合に人事上の責任をとらされるか(降格、降給)はありえますが、損害賠償請求はできないのです。

すべてが労働者の責任にはならない

民法上の不法行為の要件を満たし会社が労働者に対して損害賠償請求できる場合も、前述の判例にもありましたようにありえます。労働者に損害賠償請求することが可能な程度の過失があり、その過失によって会社に損害が発生した場合になります。 しかし、労働者に非がある場合でも労使関係の特殊性から全額労働者の責任にはなりません。労使関係では、会社は労働者の労働により利益を上げているという関係にあるのでたとえ労働者が損害を生じさせた場合であっても、全てが労働者の責任とはならないのです。労使間の「公平」の考え方です。この公平の考え方から、具体的に会社から労働者へどの程度の損害賠償請求が可能かを次のような事情から考慮して決定されます。 ・過失の程度 ・業務上のミスの内容、回数、頻度 ・会社によるミスの防止措置、対策の有無、実効性 ・労働者の日常的な貢献の程度 以上のことから、自分にも少し落ち度があると思った場合でも会社の言いなりになる必要はありません。

業務上のミスを理由に損害賠償を請求された場合の対応方法

使用者である会社から労働者に業務上のミスを理由に損害賠償された場合は、以下の対応をとります。 ・内容証明で損害賠償を拒否する。 まず、前述の説明をもとに「会社が要求している損害賠償を支払う必要があるのか」という点、支払うとすればどのくらいの金額が妥当かについて検討してください。支払う必要がない金銭について損害賠償や慰謝料を請求されている場合や、労働者側に非があるが明らかに過大請求されている場合は、支払いを拒絶する意思表示を明確にします。支払拒絶の意思表示や、労働者側の意見を会社に正しく伝えるために、損害賠償を拒絶する意思表示を内容証明郵便の方法で行います。但し、支払いの意思があり会社との話し合いで解決できる場合はそちらを検討してください。 ・裁判で損害賠償を拒否する 内容証明郵便で労働者側の拒絶意思を明確にしたにもかかわらず、会社がなお業務上のミスを理由に損害賠償請求するという場合は、会社側がどのように進めるかを決めます。会社は労働者側に対して、損害賠償請求の裁判を提起することになるかもしれません。その場合は、裁判で労働者側に有利な結論を勝ち取るために内容証明を送付した時点からの証拠収集を怠らないようにしましょう。

損害賠償を脅しに、退職を拒否された場合の対応方法

使用者である会社から労働者であるあなたに対して、損害賠償請求することを脅しに、退職拒否するように要求してきた場合の具体的な対応方法は以下になります。 ・内容証明で強い退職の決意を示す 退職するなら在職中の業務上のミスについて損害賠償請求するぞ、という脅しは違法行為です。労働者に認められる「退職の自由」を不当に制限するからです。最も大切なのは、あなたが強い気持ちで退職の意思を示すことです。あなたが退職の意思を会社に対して示したことを客観的に証明するために、退職の意思表示を示す際には、内容証明郵便の方法を行います。会社が請求したいと思う金額が少額の場合や、交渉カードとして脅しをかけているだけの場合は、弁護士名義で内容証明を出すことにより、これ以上の損害賠償請求が行われないケースも少なくありません。 ・裁判で退職の意思を示す 内容証明郵便によりあなたが退職の意思表示を明確にした場合でも、会社があなたの退職を拒否したいという場合は、訴訟により解決するしかありません。裁判となった場合、損害賠償をすべき業務上のミスが存在しないこと、会社からの嫌がらせ目的の訴訟であることを証明できるように、証拠収集を怠らないようにしましょう。

自分に非がない根拠のない損害賠償は認められない

いかがでしたか。憲法や労働基準法により退職の自由は保障されていますので、会社側が退職すれば損害賠償請求するぞと脅すことは許されません。但し、損害賠償請求の根拠がはっきりしていて、労働者側に因果関係が認められる場合は損害賠償が認められるケースもありえます。 但し、通常にミスなく勤務していて、退職の意思を示した途端に会社側が損害賠償請求を口にし始めたなどの場合は根拠のない損害賠償請求は認められませんので、断固として退職の意思を示しましょう。

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