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「庵」の意味や正しい読み方とは?名付ける際の例と名前の由来も

更新日:2024年08月24日

言葉の違い

皆さんこんにちは、今回は「庵の読み方・意味と類語・亭との違い・使い方」と題して、「庵」という言葉の正確な意味やその用法、またさまざまな分野で扱われる「庵」の用例についてご紹介します。「庵」の意味にはとても奥深い背景が隠されており、実に興味深い歴史があります。

「庵」という言葉が持つ意味合いが先述のように「非常に簡素で粗末な佇まいをしている家屋」であることから、話者が自分の家を「狭い家」や「何もない家」などと簡素なことを引き合いに出し、相手に対して自分の家を謙遜して言う場合でもこの「庵」という言葉が使われます。 「草庵(そうあん)」という言葉がありますが、この言葉も同じく「自分の家屋をへりくだって言うときに使われる言葉」に認められ、この言い方は近現代頃の小説の中でも普通にうかがえます。 ・山梨県、甲府のまちはずれに八畳、三畳、一畳という草庵を借り(太宰治『畜犬談』) ・御部屋は竹縁をめぐらせた、僧庵とも云いたい拵(こしら)えです(芥川龍之介『俊寛』) このように近現代頃の文学作品の中でも「草庵」や「僧庵」という言葉が使われており、「粗末な家」や「世捨て人が住む家」などと形容されて、相手に対する話者の謙遜の意味合いが見てとれます。

大きな禅寺に付属している小さな僧房

「庵」というのはそもそも「仮小屋」や「仮設家屋」のことを意味するため、千利休や多くの茶人などが造った「お茶を飲む家屋」なども、すべてこの「庵」という言葉で表現されることがあります。 社寺や禅寺というのはもともと大きな敷地面積を保有しており、いくら俗世を離れた僧侶の多くがそこに住んでいると言っても、その社寺・禅寺を指して庵とは言いません。 そこでその社寺や禅寺に付属して建てられた小さな家屋や、またお茶を飲むだけの目的で建てられた小さな家屋を指して「庵」という形容が取られます。 この場合でも、「お茶を煎じること」を茶人の仕事と見れば、その「お茶を煎じるという仕事のために建てられた仮設家屋」として認めることもでき、先述しました「庵」の本来の仮設家屋の意味合いともつながってきます。

「庵」の類義語と意味

日本語をはじめ多くの言葉を覚える際には、ひとつひとつの言葉の関連語を一緒に覚えることが効果的です。 この関連語には類義語と対義語とがまずあり、この類義語と対義語とをワンセットで覚えることによって、そのひとつの言葉を多方面から理解し、自分の言葉や表現として使い分けることができます。 ・東屋(あずまや) ・庵室 ・草庵(そうあん:草ぶきの簡素な家) ・庵上(いおがみ:庵と同意) ・仮設 ・仮設家屋 ・仮小屋 ・草堂(そうどう:草ぶきの家、へりくだって言うときの自分の家) ・ほったて小屋 ・バラック小屋 ・小屋 ・アトリエ このように「庵」の意味合いを含む言葉はいろいろな用途によって使い分けられ、どの言葉の意味にも「粗末な家」や「簡素で必要な物だけが置かれてある家」という意味合いが含まれます。

草庵

「草庵」という言葉の本来の意味は「草ぶきの屋根で造られた質素な家屋」を指しており、歴史的に言えば、その家屋は「茶室」や「出会い茶屋」などを言う場合に多く使われた言葉でもありました。 「庵」の意味を言う場合にはこの「草庵」がもっとも多く使われ、文章や会話などで「庵」と表現される際には、たいていこの「草庵」を指しています。 またこの「草庵」の特徴から、「世捨て人が書く文学作品」として「草庵文学」という文学ジャンルも認められており、この草庵文学のうちの作品には、鴨長明『方丈記』や吉田兼好『徒然草』など、他にも「俗世間の煩い事や誘惑を脱ぎ捨てて、出家した境地で書く作品」として認められる作品が多くあります。

庵室

この「庵室」というのも先でご紹介したように「世捨て人が住まう部屋・家屋」という意味合いが強く、「室」の字には「世間との交流を隔てた家屋」という意味合いが全面的に表現されています。

草堂

「草堂」というのは先でご紹介しましたように、「草ぶきの家・草庵」をそのまま意味する言葉で、そうした「簡素な家」を指すことから、話者が自分の家をへりくだって言う場合に使われることが多くあります。

「庵」のニュアンス

先述で「庵」の意味合いや、その言葉が使われてきた歴史的背景を眺めてみるとお気づきでしょうが、「庵」というのは「俗世間での競争や煩悩の誘惑、また世間での煩わしい諸事や雑事をすべて過ぎ捨てた人が住まう家屋」というイメージが鮮烈に認められるため、「落ち着いた住まい・家屋」という印象がとても強く見受けられます。 しかしその家屋は質素で、「生活に必要な物以外は置かれていない環境」も同時に見受けられるため、一般に生活する家屋や環境から見ると「娯楽がない、寂しい家屋」ともイメージされます。 これらの「落ち着いた環境・寂しい家屋」というイメージがこの「庵」を使う意味のニュアンスに認められ、人によっては「庵に住んでみたい」と言う場合や、「寂しいから嫌」と言う場合との2つの意見に分かれてしまうこともよくあります。

「庵」と「亭」の意味の違い

「亭(てい)」という言葉はもともと「中国の東屋」、「旅館・食事処・料理店・茶屋・寄席会場」などを指す、「庵」の意味合いと似たニュアンスで使われますが、この「亭」という言葉の基本的な意味合いには「高くそびえた建物」という意味もあります。 「大きな建物」ではなく、「その建物の内装が狭くても高くそびえていること」を指して言う言葉ですから、その点でまず「庵」の意味合いから外れます。 慣用句・熟語として「亭々(ていてい)と」という言葉がありますが、この言葉の意味は「樹木や草木などが、まっすぐと空高く伸びていること・そびえ立つこと」や「目的地までがはるか遠いこと」を言い、この点では「庵」の意味合いとは全く逆の意味を指すことになります。

「庵」という言葉と意味の使い方

言葉を覚える際には、その言葉を実践的に学ぶことが必要です。 その覚えようとするひとつひとつの言葉を例文に当てはめて学習したり、または他人が作った文章や情報を見ながら「その言葉がどのように扱われているか・意味が活用されているか」を確認しながら覚えることが大切です。 ・凡兆草庵にしばらくいては打ちやぶり(寺田寅彦『映画雑感』) ・私たちの借りている家賃六円五拾銭の草庵は、甲府市の西北端、桑畑の中にあり(太宰治『美少女』) ・当国船岡山の西麓に形ばかりなる草庵を営み罷在候えども(森鴎外『興津弥五右衛門の遺書』) ・日蓮は鎌倉に登ると、松葉ヶ谷に草庵を結んで、ここを根本道場として法幡をひるがえし(倉田百三『学生と先哲』) どの場合でも「庵」や「草庵」という言葉の意味合いは「簡素な家屋」や「質素で何もない家」、また自分の家を謙遜して言う場合に用いられています。

「庵を結ぶ」の意味

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初回公開日:2018年03月09日

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