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帰納法と演繹法の読み方・例と違い・覚え方・本|弁証法

言葉の読み方

帰納法と演繹法という言葉については、知っていることは知っているという人が多いでしょう。普段はあまり使わない、難しい言葉です。意味を調べたという人も、その解説を見て頭が混乱したのではないでしょうか。今回は、帰納法と演繹法について、わかりやすく見ていきます。

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帰納法と演繹法ってどう読むの?

帰納法と演繹法ってどう読むの?

まず、帰納法と演繹法の読み方です。それぞれ、帰納法「きのうほう」、演繹法「えんえきほう」と読みます。特に、演繹法の「繹」は難しいです。

帰納法と演繹法はどのように使われるの?

帰納法と演繹法はどのように使われるの?

では、帰納法と演繹法はどのように使われるのでしょうか。例文を挙げて比較しましょう。 <帰納法>「源頼朝は死んだ」「織田信長は死んだ」「豊臣秀吉は死んだ」「徳川家康は死んだ」「ヒトラーは死んだ」「だから人間はみな死ぬ」 <演繹法>「人間は必ず死ぬ」「私は人間である」「私は必ず死ぬ」 いかがでしょうか。結論として同じことを言っているとしても、プロセスの違いに気づくはずです。

帰納法と演繹法の違いって?

帰納法と演繹法の違いって?

まずは、帰納法と演繹法の違いを感覚的に分かっていただくために、具体的な使い方を挙げました。でも、何が、どう違うのか、具体的に見ていきましょう。

帰納法って?

まず、帰納法についてです。結論から言うと、帰納法とは、「個々の事実から、一般的な原理を導く推論」です。 使い方として、「一般原理として正しい」と証明したいことを「仮説」に立てます。先ほどの例では、「人間はみな死ぬということは、一般原理として正しい」というのが「仮説」です。その「仮説」を証明するために、ここでは、「歴史上の人物が死んだ」という事例を挙げて、仮設の正しさを結論付けています。整理すると次のようになります。 ・仮説:「人間はみな死ぬ」 ・事例:「源頼朝は死んだ」、「織田信長は死んだ」、「ヒトラーは死んだ」 ・推論:「人間はみな死ぬ」は、正しい理論である。 以上の3つの要素が、結論を正しく導くためには必要不可欠です。

帰納法に問題点はないの?

では、帰納法には問題はないのでしょうか。先ほどの例でお分かりのように、「歴史上の人物はみんな死んだ」という絶対的な事実を事例として複数挙げています。そして、これら事実の事例から導かれる推論は、必然的に正しいです。逆に言えば、一つでも、事実ではない事例があると、推論(理論)は崩れます。

演繹法って?

次に、演繹法について見ていきましょう。演繹法とは、「正しいとされている一般的原理から、個々の事柄が正しいことを推論する方法」です。使い方としては、まず、証明したいことを仮説として立てます。 先ほどの例では、「私は必ず死ぬ」というのが仮説です。これを証明するために、まず、一般的原理の大前提を立てます。「人間は必ず死ぬ」が大前提に当たります。 次に、事柄関係を論証するために小前提を立てましょう。先の例では、「私は人間である」の部分が事実です。そこで、「私は必ず死ぬ」ということが推論できます。整理すると次のようになります。 ・仮説:「私は必ず死ぬ」 ・大前提:「人間は必ず死ぬ」 ・小前提:「私は人間である」 以上の3点から、推論として「私は必ず死ぬ」と導き出せることに気づくでしょう。

演繹法に問題点はないの?

では、演繹法の問題点はどこにあるのでしょうか。先ほどの例では、大前提として「人間は必ず死ぬ」とし、なおかつ正しい推論が導かれました。 しかし、大前提が間違っている場合はどうでしょうか。樹木の根っこが腐れば生物は成長しないように、根本である大前提が間違っていれば、間違った推論を導く可能性も生じます。これでは演繹法を用いる意味がありません。 演繹法においては、まず「大前提が正しいかどうか」を確認するように心がけましょう。そうすることで、正しい推論を自ずと導けるようになります。

弁証法という言葉もあります

弁証法という言葉もあります

ここまで、帰納法と演繹法について見てきました。ここで、もう一つ、「弁証法」という言葉を聞いたことはありませんか。 私たちが相手に何かを伝えたい時、必ず無意識のうちに、論理的な筋書きを描いています。実はこの論理パターンには、帰納法、演繹法、そして弁証法の3つの型に集約されます。では、弁証法について詳しく見ていきましょう。

弁証法って?

弁証法の一般的な概念は、 ①テーゼ(命題):今、自分の中で正しいと思っていること ②アンチテーゼ(反対命題):それが正しいとは言い切れない視点 ③ジンテーゼ(合):テーゼとアンチテーゼに折り合いを付け、本質的に統合され、「ジンテーゼ」として新しい何かになる ④アウフヘーベン(止揚):これらのプロセス全体をいう 最後のアウフヘーベンは、東京都知事の発言で有名になりました。それはともかく、この思考法は、日常を思い浮かべるとわかりやすいです。 「人よりたくさん働くと、給料が多くもらえる」(テーゼ)「でも、プライベートの時間が少なくなり、やりたいことができない」(アンチテーゼ)「仕事かプライベートかという二者択一ではなく、自己達成感に幸福度を求める」(ジンテーゼ)といった論理展開です。うまく生きていくためには、相反する事柄に折り合いを付けていくことが不可欠だと言えるでしょう。

帰納法と演繹法はどうやって覚えたらいいの?

帰納法と演繹法はどうやって覚えたらいいの?

帰納法と演繹法の違い、いざ、思い出そうとすると、頭の中がごっちゃになって混同しませんか。そんな時のために、リズム感のある言葉で覚えるようにしましょう。まず、帰納法とは、「個々の事実から、一般的な原理を導く推論」でした。そこで、「一つずつ 積み重ねていく きのうほう」と覚えましょう。 次に演繹法です。演繹法とは、「正しいとされている一般的原理から、個々の事柄が正しいことを推論する方法」でした。そこで、「全体から 一つずつ見る えんえきほう」と覚えましょう。 これでも覚えにくい人は、AKB48をイメージするのがおすすめです。「メンバー一人ひとりが、可愛くて庶民的だ。だから、AKB48は可愛くて庶民的な人の集まりだ」が帰納法で、「AKB48は、可愛い上に庶民的だ。だから、それぞれのメンバーは、可愛くて庶民的に違いない」と考えるのが演繹法と覚えればいかがでしょうか。

帰納法と演繹法を理解するのにお薦めの本は?

帰納法と演繹法を理解するのにお薦めの本は?

では、帰納法と演繹法を理解する上で、お薦めの本をいくつか紹介しましょう。どの本も、帰納法や演繹法の基本について学べるのみならず、思考力を強くするのには有益です。お好きな本を手にとって、気軽に読んでみてはいかがでしょうか。

アブダクションー仮説と発見の論理

アブダクション―仮説と発見の論理
アブダクション―仮説と発見の論理

知の巨人といわれるパースが、帰納・演繹と並ぶ第三の推論として提唱したのが「アブダクション」です。論理学の本ですが、面白く読みごたえを感じるでしょう。 パースのアブダクションについて詳細に解説されており,パース自身による記述についての理解には有益です。科学的探究という視点から論理学を学ぶともなれば、どこか難しく感じるのも、決して無理はありません。しかし、「アブダクション」を手にとってみれば、初めて論理学を学ぶ人でも、楽しく読み進めらます。

大変良い本ですが、このようにわかりやすい本は「解釈」を伴うことが多いのではないでしょうか。むろん、パースの評判にあるように、パース自身が一貫していない(又は変化している)面もあるのでしょう。が、例えば「連続性の哲学」 (岩波文庫)の講演録などを見るだけでも、パース自身がアブダクションを時に否定的に、時に異なる見方で捉えていたことに気がつきます。もちろん、そこから、自分で鵜呑みにするのでなく、考えてみることが、読書であると私は考えます。この本の「解釈」を鵜呑みにしない人にとってはとても役に立つように思われるので5つ星としました。

99.9%は仮説

99・9%は仮説 思いこみで判断しないための考え方 (光文社新書)
99・9%は仮説 思いこみで判断しないための考え方 (光文社新書)

思いこみ、常識、前例、先入観、固定観念など、私たちはいろいろなものに縛られています。そんなときは、気休めにこの本を読んでみましょう。 ものの考え方から世界の見え方まで、すべてが変わります。 思い込みや常識、先入観、固定観念を科学の基本によってなくそうという内容の本です。同時に雑学が身に付くという点ではオススメです。

自分や世間の常識とされることが、必ずしもそうでないという考え方は勉強になり、幅広い人の意見を受け入れたいと思えたので良かったなど、評価する口コミが多数寄せられています。

3分でわかるロジカル・シンキングの基本

3分でわかるロジカル・シンキングの基本
3分でわかるロジカル・シンキングの基本

ロジカル・シンキング本は多数出版されていますが、そのほとんどが敷居が高く難しいもので、手が出しにくいのが現状です。本書は日常の仕事で活かせるロジカル・シンキングのコツをわかりやすく、実践的にまとめられています。 手軽に理解できるロジカル・シンキングの入門書として、日常のビジネスでも活かせるコツがまとめてある実践本です。帰納法、演繹法も自然に理解できるので、ロジカルシンキングの基本について学びたい時は、ぜひ手に取ってみましょう。

中学2年生が読んでも、理解できるほど簡単に書いてありつつも、仕事の話をけっこう入れてくれているので、仕事のことを考えながらも、すらすら頭に入ってきます、など、読みやすさを評価口コミがたくさんあります。

帰納法と演繹法は誰が唱えたの?

帰納法と演繹法は誰が唱えたの?

では、そもそも、帰納法と演繹法は誰が唱えたのでしょうか。それぞれについて見ていきましょう。

帰納法を唱えたのは?

まず、近代的な帰納法の創始者は、イギリスのフランシス・ベーコン(1561~1622)です。ベーコンの唱えた帰納法とは、観察や実験を通して集めた事実に基づいて、それらに共通する普遍的な法則を見出すという方法です。 彼は、従来の先入観や偏見を、正しい知識を習得するのに害となる「イドラ」と呼んで批判しました。当時は、自然や社会に起こる出来事をすべて「神の仕業」とし、非科学的な方法に反対する人が多かったと言われています。そのような中、ベーコンは実験と実証から多くの事例を集め、それらの情報に基づいて、事実の本質を追求していく思考法を取りました。 経験主義に基づく帰納法によって近代科学が成立したことから、彼は「近代科学の父」とも呼ばれています。

演繹法を唱えたのは?

次に、演繹法の創始者は、フランスの哲学者、デカルト(1596~1650)です。「我思う、故に我あり」という言葉は有名です。 彼が提唱した演繹法は、疑いようのない普遍的な原理や論理的な推論を用いて、個別の事柄を導く方法です。演繹法においては、大前提・小前提・結論の構成で事柄を説明します。例えば、大前提で「すべての生き物は死ぬ」、小前提で「人間は生き物である」とすると、結論は「すべての人間は死ぬ」となります。よく使われる「三段論法」です。 彼は、絶対に確実な原理を確立して、そこから物事を考えていく思考法、すなわち、演繹法を取りました。この演繹法は、近代合理主義の出発点です。

帰納法と演繹法の数学的な違いは?

帰納法と演繹法の数学的な違いは?

では、帰納法と演繹法の数学的な違いとは何でしょうか。イメージしやすいように、高校の数学を事例に考えてみましょう。

数学的帰納法とは?

まず、高校数学で出てくる、数学的帰納法についてです。 数学的帰納法の解き方は一つしかありません。すなわち、①n=1の時、命題Pが成り立つことを証明する。②n=kの時、命題Pが成り立つとすると、n=k+1の時も、命題Pが成り立つ。 ①と②を示すことによって、①より、n=1の時に命題Pが成り立つ。②より、n=2の時も命題Pが成り立つ。②より、n=3の時も命題Pが成り立つ。したがって、すべての自然数nについて、命題Pが成り立つと言える。 このような照明方法が数学的帰納法です。

数学的帰納法の例題は?

では、先述した解き方に沿って、例題を解いていきましょう。 <例題>任意の自然数nについて、2(1+2++n)=n(n+1)①であることを、数学的帰納法を用いて証明しなさい。 <答>(1)n=1の時、(①の左辺)=2×1=2、(①の右辺)=1×(1+1)=2より、①は成り立つ。 (2)n=k(k:自然数)の時、①が成り立つと仮定すると、2(1+2++k)=k(k+1)が成り立つ。② n=k+1の時、(①の左辺)-(①の右辺)={2(1+2++k+k+1)}-{(k+1)(k+1+1)}={2(1+2++k)}-{k(k+1)}+2(k+1)-(k+k+1+1)={2(1+2++k)}-{k(k+1)}③ ②より③=0 よって、n=k+1の時も①は(1)、(2)より、すべての自然数nで与えられた方程式は成り立つ。

数学的帰納法の実態は?

おさらいしましょう。数学的帰納法について、前提は、n=1で成り立つ、n=kで成り立つ、n=k+1で成り立つ。よって、「結論としてすべての自然数nで成り立つ」ということでした。 確かに、数学的帰納法は、一般的な演繹法と同じように見えます。ところが、例題でお分かりのように、実は問題文に結論が示されています。 これまで見てきたように、演繹法は、結論から一つひとつの事柄に注目する方法です。数学的帰納法は、結論が与えられていて、(n=1、n=k、n=k+1)という一つひとつの例で成立することに着目しています。そういう意味では、数学的帰納法は正しく演繹的だと言えるでしょう。

今の思考は帰納的?演繹的?

今の思考は帰納的?演繹的?

以上、帰納法と演繹法の違いなどについて見てきました。日常生活の中では、今の思考は帰納法だ、演繹法だなどと区別して意識することはまずありません。 しかしながら、ともに推論の基本です。状況に応じた使い分けを行うことで、論理的思考が高まります。この機会に、帰納法と演繹法について意識してみてはいかがでしょうか。きっと新たな視点に気づくはずです。

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