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「モラトリアム」の意味と使い方|無罪/心理学/大学/看護

初回公開日:2018年01月30日

更新日:2020年08月07日

記載されている内容は2018年01月30日時点のものです。現在の情報と異なる可能性がありますので、ご了承ください。

また、記事に記載されている情報は自己責任でご活用いただき、本記事の内容に関する事項については、専門家等に相談するようにしてください。

言葉の意味

「モラトリアム」は「モラトリアム人間」のように「いつまでも大人になれない」の意味で使われることがあります。「モラトリアム」が起こる仕組みや「モラトリアム」と関係の深いアイデンティティの意味や確立の仕方についてタイプ別に見ていきます。

「モラトリアム」とは

「モラトリアム」は深い意味を持った言葉です。

意味

「モラトリアム」には大きく分けて三つの意味があります。 ①政府が法令により金銭などの債務の支払いを一定期間猶予することを意味します。戦争・天災・恐慌などの非常事態に際して、債務不履行による経済の混乱を未然に避ける目的で実施されます。支払い猶予ともいわれます。 実際に実施された例は、1923年の関東大震災、1927年の昭和金融恐慌、1946年の戦争後の金融緊急措置令です。 ②知的・肉体的には成人に達していながら、社会人としての義務や責任を猶予されている期間、または心理的にそのようにとどまっている期間を意味します。 ③主に核実験や原子力発電所設置に際しての実施や使用を一定期間猶予することまたは停止を意味します。

簡単

「モラトリアム」を簡単に説明すると「公に考慮・認められる事情があるため、大目に見て待ってくれる期間」という意味です。③の核実験や原子力発電設置に関しては特別な意味を持つので、こちらの意味は使えません。 ①の支払い猶予と②の成人を迎えても猶予される期間では、こちらの意味が当てはまります。①の支払い猶予は、本来は支払われるべき債務が公の特別な事情があるため、支払うことが難しいと考慮され、実際に支払いを待ってくれることを意味します。 ②の成人を迎えても猶予される期間では、本来は知的・肉体的には成人に達しているため、社会人としての義務や責任を果たすべきですが、学生などの場合は社会人としての責務を果たすことが難しいと考慮され、就職するまで待ってくれることもあります。 「モラトリアム」の期間を過ぎているのに、社会人としての責務を果たさない場合は問題があります。

英語

「モラトリアム」は英語でmoratoriumといいます。発音やアクセントが少し違うだけで「モラトリアム」の語は英語も日本語もほぼ同じです。語源はラテン語の「mora」は「遅延」の意味から来ています。

「モラトリアム」の使いかたの例文

現代の日本では「モラトリアム」の使い方に最近の若者の傾向が見られる場合があります。本来のモラトリアムの猶予期間を過ぎても社会人にならない成人を「モラトリアム人間」のような使い方をします。 例文: 「モラトリアムの期間はとっくに過ぎているから、早く働きなさい」 「自分は何ができるのだろう、モラトリアムをどうにか脱したい」 「学生のうちは堂々とモラトリアムを満喫したい」

「無罪モラトリアム」の意味と使い方

「無罪モラトリアム」の意味と使い方
※画像はイメージです
出典: People in Couch · Free Stock Photo

「無罪モラトリアム」は1999年に発売されたシンガーソングライター椎名林檎によるスタジオ・アルバムのタイトルです。「モラトリアム」の前に「無罪」を付けてオリジナルの意味を持たせています。「無罪モラトリアム」に込められたメッセージを本人が次のように語っています。 電脳RAT/004「無罪モラトリアム」インタビュー. インタビュアー:ツダケン. EMIミュージック・ジャパンより

少なくとも、人としてマジメに生きていこうとする以上、社会に適合できないモラトリアムな瞬間って、きっと誰にでもあると思うから、自分のためにも「それは無罪なんだ!」と言ってしまおうと。

「無罪モラトリアム」の意味

「モラトリアム」はインタビューによると、誰にでも訪れる精神的な意味で用いられています。社会に適応できない自分は悪くない、自分を責めないで、自分のためにも、そんな自分を許してあげようという意味が込められています。

心理学・エリクソンの「モラトリアム」の意味と使い方

心理学において「モラトリアム」は「ライフサイクル」の理論で使われます。まずは「ライフサイクル」について見ていきましょう。

エリクソンのライフサイクル理論

心理学者のエリクソンは「ライフサイクル」において「人が生まれてから死ぬまでの間に何回か重要なポイントを迎えて変化していくこと」の意味で用いています。 ライフサイクルは心理・社会的な面を重要視し人の一生を8つの段階に分けました。それらの段階には心理的・社会的な危機と発達課題があり、各段階で危機を乗り越え、発達課題を達成することで、次の段階へと進むことができるというのがライフサイクル理論の考え方です。 人は身体の生物学的な成長段階があるように、精神の発達にも年齢に適した段階があるという発達の漸成(ぜんせい)説を唱えました。この発達漸成説がライフサイクル理論を意味しています。では8つの段階を見ていきましょう。

①乳児期(0~1歳)

乗り越える危機は「不信」であり、課題は「信頼」、達成後に獲得されるのは「希望」です。

②幼児前期(1~2歳)

乗り越える危機は「恥」「疑惑」であり、課題は「自律性」、達成後に獲得されるのは「意志」です。

③幼児後期(2~6歳)

乗り越える危機は「罪悪感」であり、課題は「自主性」、達成後に獲得されるのは「目的」です。

④学童期(6~13歳)

乗り越える危機は「劣等感」であり、課題は「勤勉性」、達成後に獲得されるのは「有能感」です。

⑤青年期(13~21歳)

乗り越える危機は「同一性混乱」であり、課題は「自我同一性」、達成後に獲得されるのは「忠誠」です。

⑥成人前期(21~35歳)

乗り越える危機は「孤立」であり、課題は「親密性」、達成後に獲得されるのは「愛」です。

⑦壮年期(35~65歳)

乗り越える危機は「停滞」であり、課題は「生産性」、達成後に獲得されるのは「世話」です。

⑧老年期(65歳~)

乗り越える危機は「絶望」「嫌悪」であり、課題は「統合性」、達成後に獲得されるのは「英知」です。

発達課題が達成できなかったら

ライフサイクルの各段階の危機を乗り越えられなかったらどうなるでしょう。その段階にとどまってしまうことを意味しています。 また課題は自分だけで乗り越えるのではなく、親などの自分以外の人の影響と関連しながら乗り越えていきます。親は親で自分自身の発達課題があり、親が自分の課題を乗り越えて子どもと関わることが重要と考えました。 つまり人はそれぞれ自分の発達課題があり、他の人との相互関係により自分の発達課題や人の発達課題に影響を与え合いながら成長していくという意味があります。

青年期の「モラトリアム」

近代になってライフサイクルが変化することで「青年期」の重要性が注目されてきています。青年期の乗り越える危機は「同一性混乱」であり、課題は「自我同一性」です。 「自我同一性」は「アイデンティティ」を意味します。「アイデンティティ」とは「自我によって統合されたパーソナリティが社会と関わっていくこと」を意味しています。 「アイデンティティ」は「自分らしさ、自分であること、他者と異なる自分の存在」の意味があります。「モラトリアム」は青年期に「アイデンティティが確立せず、自分が何者であるかがまだわかわず模索中であること」を意味しています。 現代では「モラトリアム」の期間が延長されていく傾向にあります。自己について考えなくても問題のない環境に育ち、「アイデンティティ」を確立する機会や気持ちが訪れないまま、いつまでも大人になれない人が増えてきています。

エリクソンの「モラトリアム」使い方

「モラトリアム」は青年期に発達課題の「自我同一性」を達成できなかったときに使われます。

心理学・マーシャの「モラトリアム」の意味と使い方

マーシャのアイデンティティ・ステイタス

心理学者のマーシャは、アイデンティティの達成状態について危機と積極的関与から四つの型を提示しています。「危機」とは「重要な意思決定を自分でしたかどうか」を意味し、「積極的関与」は「仕事や生き方に積極的に関わっているか」を意味します。

①アイデンティティ達成

危機は経験済みで、積極的関与もしているタイプです。これまでの考え方に自信がなくなっても自分自身で解決し行動できている状態です。自分自身の行動に責任を持ち、環境に合わせた人間関係も築けています。自分自身の長所や短所も理解でき自分自身を受け入れられています。

②モラトリアム

危機の中にいる状態で、積極的関与をしようと努力している最中です。自分の意志で自分について考える中でいくつもの選択肢で迷い、自己確立のためにあれこれ考え模索しています。

③フォアクロージャー

危機は未経験ですが、積極的関与はしている最中です。親のいうことや年長者の価値観で自分が行動することに疑問を持たないことを意味しています。与えられたまま自分で考えずに従っている状態を指します。融通の利かなさに特徴が見られます。

④アイデンティティ拡散

危機の有無で2つに分かれます。2つとも積極的関与はしていません。危機があるタイプは自分が主体で考えたり行動したことがないため、無気力で自分が何者であるのかを想像することが難しい状態です。 危機を経験済みのタイプは、何もかもが可能であり可能なままにしておこうと簡単に考えているタイプです。 これら2つの特徴は、自己を見失った状態であり、不信感、自意識過剰、焦燥感、希望喪失の症状があります。自分が何者であるかわからない、自分が自分である感覚がわからない、自己がバラバラで統一感がない状態をいいます。

マーシャの「モラトリアム」の使い方

マーシャの「モラトリアム」はアイデンティティの達成について見たときに、危機の中にいながらも積極的に模索中であるとき使います。

大学での「モラトリアム」の意味と使い方

アイデンティティ・ステイタスのアイデンティティの達成状態で、危機の中にあり積極的関与をしているときに「モラトリアム」は使われます。

大学での「モラトリアム」の意味

大学生の時期はちょうど青年期に当たるため、モラトリアムの期間と考えることができます。しかし考え方には個人差があります。モラトリアムの期間と解釈してしまうと責任感のある行取れなくなる恐れがあります。 そもそもモラトリアム=自由と勘違いしてしまう人がいるのも事実です。本気で自己と向き合いアイデンティティを確立する過程での真摯なモラトリアムだったら意味のある猶予期間ですが、遊ぶことだけに夢中になってしまうのは問題があります。

大学での「モラトリアム」の使い方

大学での「モラトリアム」を使う場合は、「モラトリアム」を理由に好きなことをしたり、ダラダラしたりすることで使われます。「モラトリアム」について理解し、真面目に仕事や自己について考えることでも使えます。 例文: 「大学生活はモラトリアムと考える」 「大学と共にモラトリアムは終わる」 「モラトリアムに甘えて大学では遊んでばかり」

看護での「モラトリアム」の意味と使い方

看護師の試験では「モラトリアム」についても出題されます。主に青年期の特徴として学ぶことになっています。意味は心理学と同じで「青年期において見られる心理的・社会的猶予期間」を指します。 使い方は看護の基本概念としての知識として使われます。

モラトリアムの奥深さ

「モラトリアム」は意味が深いです。心理面での「モラトリアム」は「アイデンティティ」と関係が深いことがよくわかりました。 その「アイデンティティ」も生まれてからの発達課題をこなしていっての上での「アイデンティティ」であることもわかりました。順調に精神的に成長していくのは本当に難しいことです。

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