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更新日:2024年07月12日
エサを口にする前によだれを垂らすパブロフのイヌ、カフェインを摂り続けることで耐性がつくわたしたち…これらは「古典的条件付け」という要素がかかわってなされています。難しいように聞こえる「古典的条件付け」は日常でも教育の場面でもよく目にしているものなのです。
心理学を構成する大きな枠組みとして、以下の3つがあります。 「生物学的」…行動と心のメカニズムの基礎にあたる神経生物学に関する研究をする 「認知的」…記憶・意思決定などに至るまでの心の変化の過程を研究する 「行動主義的」…外からの刺激による反応・行動を科学的に分析する
このうち行動主義的枠組みについて、アメリカの心理学者ジョン・ワトソン(John Watson)が重要な提唱者として知られています。彼は、心理学は意識よりも行動の面で研究するべきだと主張しました。この主張は、ロシアの心理学者イワン・パブロフ(Ivan Pavlov)による動物研究(以下で紹介)によって、より強い確信を持たせることとなったのです。
「パブロフのイヌ」という言葉は有名ですよね。大体の人が思い浮かべるのが、エサが出ていないのに唾液を垂らすイヌの姿…かと思いますが、正解です。ただ、これが何の実験で、どういう結果が引き出されたのかまでを知っている人は少ないかもしれません。 もともとイワン・パブロフはイヌの、エサに対する反応として唾液分泌を測定していました。口の中にエサが入っている時、もちろん唾液は分泌されます。しかし、ある時イヌが口の中にエサを入れる前、つまりエサを入れる皿が置かれただけで、唾液が分泌されている様子を認めました。そこでエサに関連した刺激をイヌが理解し、反応するのかどうかを調べることにしたのです。
パブロフの実験では、イヌの前にエサが自動的に出るエサ皿を置き、どういった場合に唾液が出るのか、またその分泌量を測定します。 まずは、エサを食べた際に唾液は分泌されます。これは基本的な反応であり、無条件反応と呼びます(※この場合のエサを無条件刺激という)。 ≪エサ(無条件刺激)⇒唾液分泌(無条件反応)≫ 次に、イヌの目の前にあるライトを点灯させます。しかしこれは、本来エサとは全く関係のない刺激ですよね(※中性刺激という)。 ≪ライトがつく(中性刺激)⇒特に唾液に関する反応なし≫ この無条件刺激と中性刺激を組み合わせてイヌに提示します。 ライトがつく⇒エサが出る⇒ライトが消える ≪=ライトがつく(中性刺激)⇒エサが出る(無条件刺激)⇒唾液分泌(無条件反応)≫ これを条件付け期と呼び、何度も繰り返していくうちにイヌはエサが出なくとも、ライトが付くだけでエサが出ると学習し、唾液を分泌させるようになります。 ≪ライトがつく(中性刺激)⇒唾液分泌(無条件反応)≫
上記の実験結果から、イヌは2つの全く無関係な刺激が関連していると学習したことになります。 すると、≪ライトがつく(中性刺激)⇒エサが出る(無条件刺激)⇒唾液分泌(無条件反応)≫を繰り返すことで、ライトは条件刺激となり、唾液分泌も無条件反応ではなくなります。 そこで、≪ライトがつく(条件刺激)⇒唾液分泌(条件反応)≫となります。 つまり、中性刺激を別の刺激とセットで繰り返し提示されるようになると、これらふたつ刺激を関連付けし、反応・学習するようになるというのが古典的条件付けの定義なのです。
初期の行動主義者は、「すべての学習過程」の基本に古典的条件付けや、道具的条件付けといった要素が含まれており、それらの条件付けが連鎖していくことで、複雑な学習も獲得できるようになると考えたのです。 ただし、刺激を受けて反応する間の心の変化を考えていない科学至上主義的な一面もありました。現在は他の認知的・生物学的考えも考慮されるようになり、学習に対する認識も変わりつつあります。しかし、こういった行動主義的考えは、人間の行動と研究における基本理論を築きあげました。
パブロフの条件付けでわかったことは、古典的条件付けで起きる反応は動物や人間にとっての自然な行動となる(唾液分泌反応など)。 つまり、私たちが当たり前のように感じている反応…膝蓋腱反射や、まばたきもこういった古典的条件付けの結果であると、行動主義者たちは考えたのです。
記載されている内容は2017年03月19日時点のものです。現在の情報と異なる可能性がありますので、ご了承ください。
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