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更新日:2024年06月28日
「枕詞」と聞くと和歌の世界というふうに結びつくかと思います。最近では「ちはやふる」のアニメでもなじみ深いものになったという人もいるのではないでしょうか。具体的に「枕詞」にはどんな意味があるのかについてご紹介します。美しい和歌の世界をより楽しむことができます。
「青丹よし(あおによし)」は、「あをによし」とも読みます。奈良で産出された青土を表すという説や青と丹の色のように美しい奈良のことを意味するという説があります。ここでは、「あをによし」の枕詞で詳しくご紹介していきます。
「あをによし」の枕詞から始まる有名な歌は、万葉集の中の小野老(おののおゆ)の和歌です。 『あおによし 奈良の都は 咲く花の にほふがごとく 今盛りなり』 「青丹も美しい奈良の都は咲き誇る花のように今が繁栄の真っ盛りです(口語訳)」
「あおによし」の枕詞の意味は、奈良の良さを表す言葉として使われます。この歌は、小野老が太宰府(福岡県)に赴任になり故郷の奈良の都をおもって詠んだ和歌です。いつ戻れるかわからない奈良に恋しさと懐かしさを募らせ詠んだ歌とも言われています。
「ひさかたの」からはじまる枕詞で有名なのは、紀友則の百人一首の中の和歌です。 『ひさかたの 光のどけき 春の日に しづ心なく 花の散るらむ』紀友則 「日の光がのどかにさしている春の日に、落ち着いた静かな心もなくどうして桜の花は散っていくのだろう(口語訳)」
この和歌は古くから人々に愛唱され続けたもっとも有名な歌のひとつとして知られています。「ひさかたの」の枕詞は、日、天、空、雲などに関する意味を持ちます。光がおだやかな春の日にどうしてそんなに慌ただしく散っていくのだろうかと桜にやさしく問いかけています。 「の」の音や「は行」の音を重ねリズム感をもたせ、前の句に春の日の静かでうららかな様子を描き、下の句で「しづ心なく 花の散るらむ」という下の句と上の区で相反する意味をもつ表現を用いて「どうしてだろう」という疑問を投げかけています。紀友則の「ひさかたの」の枕詞からはじまるこの歌は、流麗で優美な歌を詠む歌人として知られた彼らしい和歌です。
「あしびきの」からはじまる枕詞で有名な和歌は、柿本人麻呂の百人一首の中の和歌にあります。 『あしびきの 山鳥の尾の しだり尾の 長々し夜を ひとりかも寝む』柿本人麻呂 「山奥の長く垂れ下がっている尾のように、長い長い秋の夜を、(愛しい人と一緒ではなく)たった一人で寝るのだろうか(口語訳)」
「あしびきの」は、山、峰の前に置かれる枕詞になります。秋の山の妻を恋い慕う山鳥のイメージを浮かび上がらせていると同時に「の」の表現の繰り返しによりやわらかいイメージも持たせています。「長々し夜」で秋の夜長に恋しい人を求めながらひとり寝を嘆いているようすを表します。 山鳥の雄と雌は、昼間は一緒にいて夜になると谷を隔て別々の場所で寝ると言われていて、「しだり尾」は雄の垂れ下がる尾のことを意味しています。その尾の長さのようにという視覚的な意味から「長々し」の語を導きだし時間的な意味のあるものに移行されます。 このような見事な表現法で歌を詠んだ宮廷歌人としても名高い柿本人麻呂は、のちに「歌聖」(歌でもっとも優れた人物)として称されています。
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