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「おかって」の意味と使い方・語源や由来・方言なのか

更新日:2024年02月01日

社会人常識

皆さんは「おかって」と言う言葉をご存知ですか。昔、おばあちゃんがいうのを聞いたことがある、テレビのドラマなどで見たことがあると言う人が多いのではないでしょうか。「おかって」は「お勝手」と書き台所の意味ですが、今ではあまり使われていません。なぜでしょうか。

先に少し説明しましたが、江戸時代に「勝手方」と言う役職があり、この勝手方は政府や各藩の財務を担当していました。この時代にも財務について「台所が苦しい」などの使われ方をしており、その言葉が江戸時代の中期には庶民の間に広く使われるようになり、台所事情を「勝手場」と呼ぶようになりました。 このように財務を担当する役を「勝手方」と呼ぶことをまねて、庶民の家計を預かる奥さんのいる場所を「おかって」(お勝手)と呼ぶようになったと言う説です。

ダイドコ(台所)説

鎌倉時代から「ダイドコ」(台所)と言う言葉は使われていたそうですが、台所一ヶ所で料理をするようになったのは江戸時代後期以降のことです。それ以前は火を通す料理は「囲炉裏」(いろり)、煮たり焚いたりする料理は土間、洗い物も井戸端で行われていたとされています。 そのとき土間を「ダイドコ」と呼び、囲炉裏がある板の間を「カッテ」と呼び、それに丁寧語の「お」がついて「おかって」と呼ぶようになったと言う説です。

家計説

最後は家計説です。この説は勝手口と言う言葉が先に使われています。昔から「勝手」は「生計」と言う意味で使われていました。 ほかにも「勝手向き」、「勝手元」と言う言葉があり、「暮らし向き」と言う意味で使われていたため「家計」、「暮らし向き」をイメージする出入り口のことを「勝手口」と呼ぶようになり、お客様が出入りする玄関に対し、御用聞きが出入りする場所を「おかって」(お勝手)と呼ぶようになった説です。

このように諸説あり、どれが正しいのかわかりませんが、どの説も頷けるものでした。昔は男性があまり「おかって」に入ることはなく、女性が自由になる場所でしたが、現代では男女平等となり、男性も「おかって」に入るようになりました。 「おかって」は女性だけが勝手に使える場所ではなくなりましたが、それでも「おかって」は女性のテリトリーと言えるのではないでしょうか。

「おかって」を使った例文は?

太宰治の「おさん」と言う作品にお勝手と言う言葉が出てきます。「私はお勝手で夕食の後始末をしながら、すっとその気配を背中に感じ、お皿を取落すほど淋しく、思わずため息をついて、すこし伸びあがってお勝手の格子窓から外を見ますと」とあり、このようにお勝手はキッチンと言う意味で使われていました。

太宰治 おさん

また、夏目漱石の「吾輩は猫である」の最後の方にも「勝手へ廻る。秋風にがたつく戸が細目に開いてる間から吹き込んだと見えてランプはいつの間にか消えているが」と言う一説があります。これは主役の猫がお勝手(キッチン)に行く様を書いています。

夏目漱石 吾輩は猫である

このように著名な作家もキッチンのことを「おかって」と呼び、作品に使っていることがわかりました。

「おかって」は死語なのか?

小さいころはよく聞いたり、自分でも使っていた言葉「おかって」ですが、最近はあまり聞くことがなくなりました。「おかって」と言う言葉は死語なのでしょうか。 死語とは以前は使われていましたが、現在は使われなくなった言葉と言う意味です。類似語で廃語と言う言葉があります。以前は使われていたが、廃れて使われなくなった語と言う意味です。 確かに「おかって」は古くから普通に使われていた言葉です。地方によっては、いまだに使われているところもあります。自分は使わないが、「おかって」と聞けばキッチンと言うことは、わかる人も多いのではないでしょうか。

しかし、年代や家の構造が変わり、マンションなど裏口がない建物が増えるに従い、使われることがなくなる言葉の一つでしょう。「おかって」と言う言葉は遠くない将来、死語の仲間入りする言葉と言えるのではないでしょうか。

「おかって」は残していきたい言葉です

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初回公開日:2017年11月13日

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