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失礼にならない「知っている」の敬語表現・メールでの例文

更新日:2024年07月28日

敬語表現

ビジネスの場で「知っている」ということは、大きなアドバンテージを持ちます。しかし、その「知っている」ことを伝えるには、どんな敬語を使えばよいのでしょうか。ここでは、「知っている」をシーン別に考えながら、敬語に対する苦手意識をなくしましょう。

<ケース1> 部長の不在中に取引先からかかってきた電話に対して、応答した部下が相手に、その件を部長が知っているかどうかたずねる場合 <誤>「その件について、部長の〇〇はすでにご存じでしょうか」 <正>「その件について、部長の〇〇はすでに存じておりますか」 「知っている」の尊敬語「ご存じ」は、自分の身内である上司の行為に対して使うことはできません。 ここでは、謙譲語「存じ上げる」を使います。 <ケース2> 取引先に電話をした際に、担当が不在で代理のものではどうかとたずねられ、自分たち(及び案件)を知っている人ならば代わってほしいと伝える場合 <誤>「私どものことを、よく存じ上げる方をお願いできるでしょうか」 <正>「私どものことを、よくご存じの方をお願いできるでしょうか」 ここでの「知っている」は相手側の行為ですから、相手の行為に対して謙譲語「存じ上げる」は使いません。 ここでは、尊敬語「ご存じ」を使います。

相手に知っているかどうかをたずねる & 既に知っていることを伝える敬語表現

実は、ビジネスの場で「知っている」ということは、大きなアドバンテージを持ちます。しかし、その「知っている」ことを伝えるには、また、「知っている」かどうかをたずねるには、どのように使い分ければよいのでしょうか。 ここでは、シーン別にみていきますので、参考にしてください。

ケーススタディ

<ケース3> A:「この度、弊社では〇〇に移転することになりましたが、ご存じでしたか。」 B:「はい、存じております。弊社宛にも社屋移転のご挨拶状をいただいております。」 相手が「知っている」かどうかをたずねるには、尊敬語の「ご存じ」を使います。 主語となる社屋移転は物ですから、「知っている」ことを伝えるには「存じる」を使いましょう。

<ケース4> A:「すでにお聞き及びかもしれませんが、この度、弊社では事業部制を採ることになりました。」 B:「はい、存じ上げております。」 A:「それに伴い、〇〇が事業部長として指揮をとることになりました。」 B:「それは存じ上げませんでした。」 自分(人)が「知っている」ことを伝えるには、謙譲語の「存じ上げる」を使います。 知らない場合には、「存じ上げない」を使いましょう。

なお、敬語の使い方には関係ありませんが、ビジネスの場では知っていても知らないふりをした方が良い場合があります。人事異動については特にそうでしょう。情報はすでに知っていたとしても、相手から聞く話に対して初めて聞いたという立場をとっておいた方が賢明です。逆に、当然知っておくべきことは、「存じ上げておりました」と使えるようになりましょう。そうでないと、相手から「こんなことも知らなかったのか」と思われかねません。「はい、存じ上げておりました。」この一言で、話がはずみ商談がうまくいく場合もあるかもしれません。ただし知ったかぶりはいけません。なかなか難しいですね。

メールや文書で使える、知っていることを伝える敬語表現例文

・相手が知っているか確認をとるとき 「〇〇の件について、ご存じでしょうか。」 「〇〇の件について、お聞き及びでしょうか。」 ・相手が知っていることを前提に、話をすすめるとき 「〇〇については、すでにご存じとは思いますが」 「〇〇については、すでにお聞き及びとは存じますが」(「存じる」は「思う」の謙譲語でもあります) ・こちらが知っていることを伝えるとき 「〇〇の件については、存じておりました。」 「〇〇様のことは、かねてより存じ上げておりました。」 ・こちらが知らないことを伝えるとき 「〇〇については、存じ上げませんでした。」 「〇〇の件については、伺っておりませんでした」(相手から聞いていなくて知らないときに「聞く」の謙譲語「伺う」を用いて) いかがですか?こんな感じで、さらさらと敬語がでてくるとよいですね。

敬語の間違いを恐れない

時代とともに変わる敬語

さて、これまで「知っている」についてなるべく原則がわかるようなかたちでまとめてきたのですが、いかがだったでしょうか。実をいうと、そもそも敬語には基本的な文法はありません。ですから、中学で習った口語文法や高校で習った古語文法のようには割り切れないというのが実情なのですね。相手を上位・下位・同等にわけてそれに応じた敬語の決まりをつくる、中国語にもないこんな複雑な語法を私たちの祖先は生み出してきたのだと思うと、不思議な気がします。 また、ことば、特に敬語は時代とともに変わってきています。ですから文化庁が出しているのも、あくまでも「敬語の指針」であり「敬語文法」ではないのです。その証拠に近代日本文学をみてみると、えっと思う例は数々あります。 例えば、

では、母が自分自身のことをいうのに敬語を使っています。 しかしこれはこれでとても美しい感じがしませんか。 敬語というと、難しい・面倒くさい、とまず思ってしまいますね。しかし、使ってみないとシーンごとに正しいかどうかは誰にも説明できないものです。特に若いうちならば多少の間違いは目を瞑ってもらえるもの。自分が使った敬語を振り返り、正しい敬語を勉強して場数を踏みながら、臨機応変に敬語を正しく使いこなせるようになりましょう。

「知っている」の尊敬語は「ご存じ」、謙譲語は「存じる」「存じ上げる」

まずはこれだけでもおさえておきましょう。敬語の間違いをしても、敬語を使おうとした意思は伝わります。しかし、間違いを恐れて敬語を使わないことは、人間関係に支障をきたすということを押さえておきましょう。ビジネスシーンでは避けて通れない敬語、まずは使ってみることで相手に敬意を表してみましょう。

留意しなければならないのは,敬語を用いれば,話し手が意図するか否かにかかわらず,その敬語の表現する人間関係が表現されることになり,逆に,敬語を用いなければ,用いたときとは異なる人間関係が表現されることになるということである。敬語をどのように用いるとどのような人間関係が表現されるかについて留意することはもとより必要であるが,それと同時に,敬語を用いない場合にはどのような人間関係が表現されるかについても十分に留意することが必要である。

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初回公開日:2017年04月13日

記載されている内容は2017年04月13日時点のものです。現在の情報と異なる可能性がありますので、ご了承ください。
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