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ゲーテのファウストの名言「時よ止まれ、お前は美しい」の意味

更新日:2024年06月28日

社会人常識

ドイツの文豪ゲーテの「ファウスト」は、「時よ止まれ、お前は美しい」の名言で知られた作品です。「時よ止まれ」は、流れてゆく時間のある瞬間に向かって、人に呼びかけるように口にした台詞です。「時よ止まれ」の意味や物語のあらすじなどをご紹介させていただきます。

ファウストの子を産んだグレートヘンは、精神状態がおかしくなり、赤ん坊に手をかけてしまいます。自分の子を殺した罪で牢獄に入れられ、死刑に処されます。 その頃魔女の祭典「ワルプルギスの夜」がひらかれていて、ファウストは、祭りの夜にすっかり我を忘れていい気分に浸っていました。この時彼は、グレートヘンの母親と兄を死なせてしまったのは自分で、殺したも同然だという自覚はなかったでしょう。 「時よ止まれ」と思わず口にしてしまいそうになるくらい妖しい夜に陶酔していたのでしょう。この時グレートヘンの苦しむ幻影を見て、ようやく我に返ります。

グレートヘンの死

メフィストフェレスの魔の力で、牢屋に入れられたグレートヘンを救い出そうとしますが、彼女は悪魔を従えているファウストを拒否し、死んでしまいます。彼女と出会って初めて恋する喜びを知り、自ら招いたこととはいえ、絶望の淵に突き落とされました。 メフィストフェレスは、ファウストを連れていずこへか消えてしまいました。この時は悪魔メフィストフェレスの失敗で、まだファウストに「時よ止まれ」と言わせることにほど遠いので、魂を手に入れられません。

第二部

愛する人を喪失したファウストは、眠っていたアルプスの山中で生きる活力を得ます。ファウストは神聖ローマ皇帝に会い、魔力で昔の人を生き返らせます。ローマ皇帝の命令で、神々の存在したギリシャ世界へ向かい、美女ヘレネーの美貌に捉われたファウストは、彼女を生き返らせて妻にし、息子も授かって幸福な時をむかえました。 「時よとまれ」といえる最高の瞬間と思いきや、息子が死に幸せは壊れます。その後ローマ皇帝に手を貸し、魔力を使って戦勝し、奨励として領地を譲り受けます。ファウストは土地の開拓に取り掛かりますが、退去させようとした老夫婦を殺害してしまいました。

最期の時

ファウストは、因果応報として「憂い」の霊力で光を奪われ、めくらになってしまいます。そしてファウストは、いよいよ死を目前にして、悪魔メフィストフェレスが自分の墓の穴を掘る音を、開拓工事をする音と誤解して、美しい領地とそこに暮らす人々を目に浮かべ、人のために尽くしたと喜びます。 このとき、最上の幸福と喜びのあまり口にしました。「時よ止まれ、お前は美しい」、そして絶命します。悪魔メフィストフェレスは望みどおり、ファウストの魂を手中に入れようとします。しかし天使たちが立ちはだかり、ファウストの魂は天上へ上ってゆきます。悪魔メフィストフェレスは、天使たちに下品な悪罵を浴びせて去ります。 「時よ止まれ」とファウストは口にしたのに、彼の魂は救われ、悪魔メフィストフェレスにしてみれば契約を破られたようなもので、腹立たしいことだったでしょう。

「時よ止まれお前は美しい」の時が指すものは?

「時よ止まれ、お前は美しい」の時とは、人生の最上の一瞬を指します。ファウストは、自らの命のともしびが消えようとしている時に、思い違いとはいえ、墓を作る音を、自分が着手した国家建設の音と信じます。 人々の力になれた嬉しさと満足感から、これほど素晴らしいことはない、こんなに幸せなことはない、どうかこの素晴らしい時の一瞬よ止まれ、永遠に留まり続けてくれとの想いから「時よ止まれ、お前は美しい」と言葉にしてしまいました。 ファウストはこれまで何度か「時よ止まれ」と口にしてもいいような状況になりますが、結果として自らの欲望のために悲劇を招き、罪を重ねてしまいます。

「時よ止まれお前は美しい」のお前が指すものは?

「時よ止まれ、お前は美しい」のお前というのは、人生の最上と感じた時の一瞬を、まるで人間に語りかけるように言っています。これは人間以外のものを、人にたとえて表現する擬人法です。 「時よ止まれ、お前は美しい」の「お前は美しい」は、人生でもっとも幸福な時、あるいは歓喜で心が満たされたこの刹那、なんて素晴らしいのだという意味です。 「ファウスト」は、「時よ止まれ」などのセリフもそうですが、悪魔メフィストフェレスとファウストの会話など、人生の教訓的台詞が多い作品となります。

「時よ止まれお前は美しい」の「お前」「汝」「そなた」などの正しい表現は?

「時よ止まれ、お前は美しい」の「お前」は、「おおまえ(大前)」が年月、時代の移り変わりにより縮まり、「お前」に変化した、二人称の人代名詞です。神道の神や仏教の釈迦や貴人の前を敬って、おんまえ、おそば近く、みまえなどの言葉を使用し、転じて人物、天子や君主などの貴人の敬称となりました。 近世末頃から男性が妻や友人、同僚などの立場が同じ相手を呼ぶ時や、男性や女性が自分の子や孫、甥、姪などの立場が明らかに下の身内、親戚を呼ぶ場合などに使います。立場が自分より上の相手、仕事上の上司や先輩、親、祖父母などには使いません。 「汝」は、古い文献に使用されて、現代では広く一般に用いられなくなった古語に属し、聖書などの、古語の二人称代名詞thouは「汝」に訳されています。またそなた(其方)も古語で、現代では通用しなくなった二人称の人代名詞です。

ゲーテの「ファウスト」を読んでみましょう

ゲーテの「ファウスト」の名言とされる「時よ止まれ、お前は美しい」の意味や、物語の内容など見てきましたが、最期にファウストはなぜ救われたのかなど、現代でも色々な解釈が論じられていて、作品が描かれた時代のドイツなどのヨーロッパの背景、またキリスト教宗教の歴史などよく理解していないと難しいといえます。 それでも善と悪、罪と報い、道徳観など人間ドラマとしての面白さや、魔法で若返ったり、魔術を使う悪魔や妖精、不思議な力を持つ霊、「時よ止まれ」などの格言的台詞など、物語としての面白い要素がたくさんあるので、ぜひ「ファウスト」やその関連の書籍など手にとってみてはいかがでしょうか。

初回公開日:2018年01月06日

記載されている内容は2018年01月06日時点のものです。現在の情報と異なる可能性がありますので、ご了承ください。
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