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職務分掌の規定の事例・内部統制の方法・職務分掌表の書き方

更新日:2024年10月22日

書類の書き方

企業などにおいて、部門ごとや役職ごと、または特定の担当者などについて、それぞれの業務の「内容」や「権限」「責任の範囲」などについての分担の取り決めのことを「職務分掌]といいます。これは「職務分掌規程」として定められたり、「職務分掌表」としてまとめて利用します。

職務分掌とは何か

企業などにおいて、部門ごとや役職ごと、または特定の担当者などについて、それぞれの業務の「内容」や「権限」「責任の範囲」などについての分担の取り決めのことを「職務分掌]といいます。多くは「職務分掌規程」という、就業規則などと同列の社内規程の1つとして定められています。 その冒頭には普通、「この規程は、会社の組織規程第○条に基づき、業務分掌を明確にすることにより、責任の所在を明らかにして円滑な業務運営を図ることを目的とする。」などと記載されています。

職務分掌の目的

会社などの組織が大きくなるほど、あるいは事業が複雑になるほど、各部門間で業務や権限のコンフリクトが起きたり、指揮命令系統が混乱したりして、調整や折衝などに余分な手間がかかることになります。こうした事態をできるだけ避けて、組織運営を円滑化するためには、あらかじめ、それぞれの部門・個人が担当する業務の内容と権限を明確化しておくことが必要になります。

職務分掌の定め方

業務には、簡単には文書化できない、実務上の細かい都合があったり、突発的なトラブルへの対応が必要であったりします。職務分掌をうまく決めるには、現場の当事者と、納得のいくまですり合わせを行うことが必要です。 ただしこの職務分掌には、弊害もあります。組織運営を円滑化するためにせっかく職務分掌が定められていても、今度は「それは私の仕事ではない」という言い訳のために使われて、責任のなすりつけ合いが日常茶飯事になっていしまうことも少なくありません。こうならないように、ルールを決める必要があります。

職務分掌とリスクマネジメント

職務分掌は、内部統制やリスクマネジメントにおいても注目を集めています。業務に対する責任の所在や範囲があいまいだったり、特定の担当者に権限が集中したりするとトラブルが生じるリスクがあるのです。簡単な例を挙げてみましょう。 たとえば会計部門において、「振込依頼書の作成」と「銀行印の押印」という2つの仕事を同一人物が担当すれば、「着服や横領」といった不正のリスクが高まるので、担当を分離しておいた方がいいのは明らかです。あるいは情報部門において、「セキュリティの設計および実装」の担当者と、「セキュリティのチェック」の担当者は別人でなければなりません。職務分掌とは、このように特定の職務権限を異なる担当者に分離することで、過失や不正行為のリスクを未然に回避、低減させる、とても重要な手段でもあるわけです。

職務分掌規程について

規程と規定

これはよく間違われて使われますが、実はまったくの別物です。「規定」は1つの決まりであり、それが集まったものが「規程」です。したがって、「職務分掌規定」は誤りです。

規程と規則

会社の規程には、就業規則の他に給与規程や組織規程など様々な規程があり、職務分掌規程はその1つに位置づけられます。実はこれらの規程は就業規則の一部をなすものであって、すべてを就業規則の中に書くと就業規則が大きくなりすぎるので、別に規程として定められています。 法律においては、「法(国会)>政令(内閣)>省令・庁令(省庁)>規則(省庁)、カッコ内は制定者」の順番であり、規則は最下層に当たるのですが、「就業規則」は労働基準法を定める際に、当時の担当者が「就業規程」よりは「就業規則」の方が「馴染む」と考えたのでしょう。

職務分掌規程と職務権限規程

「職務分掌規程」は、例えば「人事部は社員の採用、評価、昇進、昇格に関する事務・手続きを行う」というように、会社の組織ごとの職務の分担を定めたものであるのに対し、「職務権限規定」は、「人事課長はアルバイトの採用に権限があり、人事部長は新入社員の採用に権限がある」というように、役職ごとの権限を定めたものです。

職務分掌規程の例

本来この規程は長いので、本部機能に関する部分だけをここに示します。 業務分掌規程 第1章 総則 第1条(目的) この規程は、会社の組織規程第9条に基づき、業務分掌を明確にすることにより、責任の所在を明らかにして円滑な業務運営を図ることを目的とする。 第2章 各組織共通の業務 第2条(共通業務) 社内の各組織は、それぞれの組織に属する社員およびそれぞれの組織に対応する業務範囲を対象として、共通に次の業務を分掌する。 (1) 社規の遵守および人事管理に関わる事項 (2) 予算の立案、実行、管理および予算実績比較に関わる事項 (3) スケジュール調整および管理に関する事項 (4) 原価対象部門における工数集計および原価計算に関する事項 (5) 職務権限規程に基づく受発注先の選定および与信管理規程に基づく受発注先に対する与信の管理に関する事項 (6) 外注・購買管理規程に基づく資材の手配・購買、納期管理ならびにその受入・検収に関する事項 (7) 職務権限規程に基づく買掛金および売掛金の管理に関する事項 第3章 業務分掌と組織 第3条(社長室) 社長室は、以下の業務を分掌する。 (1) 社長特命事項 (2) 広報宣伝に関する事項 (3) 役員秘書業務 (4) 株主等に対する情報公開に関する事項 (5) 内部監査に関する事項 第4条(経営企画室) 経営企画室は、以下の業務を分掌する。 (1) 中長期経営計画の立案および推進に関する事項 (2) 経営計画に基づく年度予算の編成および統制に関する事項 (3) 予算と実績の差異分析に関する事項 第5条(総務部) 1. 総務部に、総務課、人事課およびシステム管理課を置く。 2. 総務部総務課は、以下の業務を分掌する。 (1) 株式事務に関する事項 (2) 文書管理に関する事項 (3) 稟議制度に関する事項 (4) 社印の管理に関する事項 (5) 与信管理に関する事項 (6) 管轄の一般管理費予算に関わる外注・購買に関する事項 (7) 固定資産、リース資産、その他什器備品および消耗品の管理に関する事項 (8) コンピュータ・ソフトウェアのライセンス管理に関する事項 (9) 福利厚生に関する事項 3.総務部人事課は、以下の業務を分掌する。 (1) 人員の配置および異動に関する事項 (2) 従業員の募集および採用に関する事項 (3) 人事考課に関する事項 (4) 退職に関する事項 (5) 教育および訓練に関する事項 (6) 給与、賞与および退職金に関する事項 (7) 福利厚生に関する事項 (8) 社会保険に関する事項 4. 総務部法務課は、以下の業務を分掌する。 (1) 社内規程等に関する事項 (2) 契約、訴訟等の法務に関する事項 (3) 株主総会および取締役会に関する事項 (4) 著作権、商標等に関する事項 5. 総務部システム管理課は、以下の業務を分掌する。 (1) 社内ネットワークの維持、運営、管理および保全に関する事項 (2) 経営管理システムの構築、維持、運営、管理および保全に関する事項 (3) 会社全体に対する技術的教育および訓練に関する事項 (4) 最新技術の動向調査に関する事項 (5) 社内各部署への技術的サポートに関する事項 第6(経理部) 1. 経理部に、経理課および財務課を置く。 2. 経理部経理課は、以下の業務を分掌する。 (1) 月次、中間および年度の決算に関する事項 (2) 会計方針および会計処理に関する事項 (3) 税務方針および税務処理に関する事項 (4) 会計監査および税務監査の対応に関する事項 (5) 諸法令に基づく経理関係提出書類および税務申告書類の作成に関する事項 (6) 固定資産管理に関する事項 4 経理部財務課は、以下の業務を分掌する。 (1) 資金計画の立案に関する事項 (2) 資金の調達および運用に関する事項 (3) 銀行取引に関する事項 (4) 有価証券の運用および保管に関する事項 (5) 現金預金の出納に関する事項 (6) 原価計算に関する事項

職務分掌表の書き方

職部分掌表の例

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初回公開日:2017年03月27日

記載されている内容は2017年03月27日時点のものです。現在の情報と異なる可能性がありますので、ご了承ください。
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