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更新日:2024年07月25日
モラルジレンマとは、背反する二つの命題において究極の選択肢を迫られるときに発生する葛藤のことです。今回は、モラルジレンマの道徳学習における狙いについて考えながら、自分がもし難しい局面に立たされたらどうするか、一緒に考えていきましょう。
突然ですが、みなさんは「モラルジレンマ」という言葉を聞いたことがあるでしょうか? モラルジレンマと聞くと、いくつかの逸話を思い浮かべる人もいるでしょう。あるいはマイケル・サンデルを連想する人も多いと思います。今回は、具体的なモラルジレンマの事例を挙げながら、あなたがもし難しい局面に立たされた時どうするか、よく考えていきたいと思います。
モラルジレンマとは、ある究極の二択を迫られた時、そもそもその二つの選択肢はどちらか一方を選んだり一方を捨てたりすることができないものなので、どちらかを選ぶということがそもそも間違っているというシチュエーションのもとで心に起こる葛藤を指します。これは具体例を見たほうがわかりやすいでしょう。よく、道徳教育の中であげられる具体例を見ていきます。
『これからの正義の話をしよう』は、ハーバード大学の教授、マイケル・サンデルが著した有名な書籍です。マイケル・サンデルは西洋哲学を学び、コミュニタリアニズム(共同体主義)の第一人者として活躍する倫理学者で、いまはハーバード大学で教授をしています。彼は、授業の中で様々なモラルジレンマを例に挙げて、生徒たちに道徳について考えさせています。そんなサンデル教授の挙げたモラルジレンマの例を見ていきましょう。
ヨーロッパで一人の婦人がたいへん重い病気のために死にかけていました。その病気は特殊な病気でしたが、彼女が助かるかもしれないある薬があり、それはおなじ町の薬屋が最近発見したラジウムの一種でした。その薬の製造費は高かったのですが、薬屋はその薬を製造するのに要した費用の10倍の値段とつけていました。薬屋はラジウムに200ドル払い、わずか一服分の薬に2000ドルの値段をつけたのです。 病気の婦人の夫であるハインツはあらゆる知人にお金を借りに行きましたが、薬の値の半分の1000ドルしかお金を集めることができませんでした。かれは薬屋に妻が死にかけていることを話し、薬をもっと安くしてくれるか、でなければ後払いにしてくれるよう頼みました。しかし薬屋は「だめだ、私がその薬を発見したんだし、それで金儲けをするつもりだからね」と言うのです。ハインツは思いつめ、妻のために薬を盗みに薬局に押し入りました。
このような具体例を挙げても、「所詮フィクションでしょ」「実際にそんなシチュエーションにはたたされないでしょ」と思う人も多いと思います。しかし、実際、モラルジレンマはいたるところに潜んでいるのです。例えば、幼い子供がきょうだいとお母さんのお手伝いをしたとしましょう。その時、彼らは異なる仕事をしたとしましょう。例えば、お兄ちゃんが洗濯物をほして、妹が洗濯物を取り込み、弟が洗濯物を畳んだとします。その後、お母さんは三人の子供に、五つのお饅頭を与えて分けるように言いました。 さて、三人の子供はお饅頭をどうやって分けたらいいでしょうか?これは、実際に起こりうるモラルジレンマの一例です。道徳的に考えて、どう分けるのが正解なのかわかりませんよね。
モラルジレンマは、教育的にみてとても良い道徳教育の教材であるので、小学校低学年から中高生にかけて、道徳の時間などでよく取り扱われます。ネット上を探してみても、道徳の授業の学習指導案にモラルジレンマが取り扱われているのがわかるでしょう。私自身も、マイケル・サンデルの授業での討論の様子を学びましたし、モラルジレンマの具体例については幼いころから耳にしたことがありました。 モラルジレンマの話は、学校教育において不可欠なものである、と私は思います。また、学校教育の場だけでなく、大人の私たちも、次世代を担う子供たちにモラルジレンマについて話さなければなりません。
モラルジレンマの例を挙げたとき、たまに勘違いをしている人がいます。たとえば、ハインツのジレンマのはなしで、ハインツが薬屋を襲撃して薬を奪ったことが、ハインツの自己中心的な考え、自分さえいいという考えにそくしているだけではないのか、ハインツは自分の利益しか考えていなくて、自分勝手なことが肯定された話であるのではないか、ということが議論されることがあります。たしかに、道徳の教科書でこの例を取り上げると、自己主義を推進しているのか?と非難する人が出てもおかしくないのかもしれません。 しかし、モラルジレンマを学ぶ一番の目的は、多様な価値観を学ぶことに他ならないのです。よって、モラルジレンマの議論をしていても、善悪の峻別がつかない、という問題点が上がります。でも、そもそも多様な価値観を学ぶことと、善悪について学ぶことを同じテーブルで議論する必要はない、と私は思います。
いかがでしたか。 モラルジレンマは全人類が学んでおくべき道徳項目の一つだと私は思います。 ぜひ多様な価値観を身につけましょう。
記載されている内容は2017年03月22日時点のものです。現在の情報と異なる可能性がありますので、ご了承ください。
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