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モラルジレンマとは?道徳・指導案の題材としての事例

ビジネスマナー

モラルジレンマとは、背反する二つの命題において究極の選択肢を迫られるときに発生する葛藤のことです。今回は、モラルジレンマの道徳学習における狙いについて考えながら、自分がもし難しい局面に立たされたらどうするか、一緒に考えていきましょう。

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モラルジレンマとは

突然ですが、みなさんは「モラルジレンマ」という言葉を聞いたことがあるでしょうか? モラルジレンマと聞くと、いくつかの逸話を思い浮かべる人もいるでしょう。あるいはマイケル・サンデルを連想する人も多いと思います。今回は、具体的なモラルジレンマの事例を挙げながら、あなたがもし難しい局面に立たされた時どうするか、よく考えていきたいと思います。

モラルジレンマって?

モラルジレンマとは、ある究極の二択を迫られた時、そもそもその二つの選択肢はどちらか一方を選んだり一方を捨てたりすることができないものなので、どちらかを選ぶということがそもそも間違っているというシチュエーションのもとで心に起こる葛藤を指します。これは具体例を見たほうがわかりやすいでしょう。よく、道徳教育の中であげられる具体例を見ていきます。

マイケル・サンデルの『これからの正義の話をしよう』

『これからの正義の話をしよう』は、ハーバード大学の教授、マイケル・サンデルが著した有名な書籍です。マイケル・サンデルは西洋哲学を学び、コミュニタリアニズム(共同体主義)の第一人者として活躍する倫理学者で、いまはハーバード大学で教授をしています。彼は、授業の中で様々なモラルジレンマを例に挙げて、生徒たちに道徳について考えさせています。そんなサンデル教授の挙げたモラルジレンマの例を見ていきましょう。

ハインツのジレンマ

ヨーロッパで一人の婦人がたいへん重い病気のために死にかけていました。その病気は特殊な病気でしたが、彼女が助かるかもしれないある薬があり、それはおなじ町の薬屋が最近発見したラジウムの一種でした。その薬の製造費は高かったのですが、薬屋はその薬を製造するのに要した費用の10倍の値段とつけていました。薬屋はラジウムに200ドル払い、わずか一服分の薬に2000ドルの値段をつけたのです。 病気の婦人の夫であるハインツはあらゆる知人にお金を借りに行きましたが、薬の値の半分の1000ドルしかお金を集めることができませんでした。かれは薬屋に妻が死にかけていることを話し、薬をもっと安くしてくれるか、でなければ後払いにしてくれるよう頼みました。しかし薬屋は「だめだ、私がその薬を発見したんだし、それで金儲けをするつもりだからね」と言うのです。ハインツは思いつめ、妻のために薬を盗みに薬局に押し入りました。

トロッコ問題

線路を走っていたトロッコの制御が不能になってしまいました。このままでは前方で線路工事の作業中だった作業員5人が猛スピードのトロッコに避ける間もなく轢き殺されてしまいます。あなたは、線路の分岐器のすぐ側にいます。あなたがトロッコの進路を切り替えれば5人は確実に助かります。しかし、あなたが分岐器を切り替えたなら、別路線で作業している別の作業員1人がトロッコに轢かれて確実に死ぬことになります。あなたは分岐器を操作するべきでしょうか? ただし5人の作業員はこの手段以外では助けることができないものとします。また法的な責任は問われません。さて、このような行為は道徳的にみて許されるのでしょうかね?

もしも、直接人を殺すのなら…

この問題には派生問題があります。以下の通りです。 あなたは前回と同様に5人の作業員が暴走したトロッコの進行方向にいてこのままでは作業員5人がひき殺されてしまうことを知っています。今回は線路は一本で、分岐させることはできません。あなたは線路の上にある橋に立っており、横に体格の良い男性がいるものとします。男性はかなり体重があり、もし彼を線路上につき落として障害物にすればトロッコは確実に止まり5人は助かります。しかし、男性を突き落とした場合、男性がトロッコに轢かれて死ぬのは確実です。さあ、あなたは男性を突き落としますか? これも前述の問題と同様、あなたにはつき落とすかつき落とさないかの選択肢以外は無いものとしますし、もちろん罪には問われません。 さて、この行為は道徳的にみて許されるでしょうか?

結局、やってることは変わんないけど…

どうでしょうか?子どもには残酷な話で教育的ではないかもしれませんが考えさせられる問題です。1問目のようにトロッコを分岐させることも、2問目のように一人を突き落として脱線させることも1人を積極的に死に追いやり5人を助けるという点で等しいといえます。しかし多くの人が、1問目では 1人を犠牲にすることは許されると答えるのに対し、2問目では1人を犠牲にすることは許されないと答えます。 モラルジレンマの考え方の違いがはっきりとわかる良問だと思います。マイケルサンデル教授によると、この問題を考える時のポイントは「功利主義」だと言います。5人が死ぬより1人が死ぬ方がマシであるという考え方です。この考え方でいけば、分岐器は操作すべきですし、橋から男性を突き落とす方が道徳的だと言えます。反する考え方は「1人の人間の権利は何人にも奪う権利はない」という考え方です。「基本的人権」の考え方に近いです。義務論ともいうそうです。全体の幸せをとるのか、個人の権利を守るのかがジレンマなのです。

モラルジレンマはいろいろなところに潜んでいる

このような具体例を挙げても、「所詮フィクションでしょ」「実際にそんなシチュエーションにはたたされないでしょ」と思う人も多いと思います。しかし、実際、モラルジレンマはいたるところに潜んでいるのです。例えば、幼い子供がきょうだいとお母さんのお手伝いをしたとしましょう。その時、彼らは異なる仕事をしたとしましょう。例えば、お兄ちゃんが洗濯物をほして、妹が洗濯物を取り込み、弟が洗濯物を畳んだとします。その後、お母さんは三人の子供に、五つのお饅頭を与えて分けるように言いました。 さて、三人の子供はお饅頭をどうやって分けたらいいでしょうか?これは、実際に起こりうるモラルジレンマの一例です。道徳的に考えて、どう分けるのが正解なのかわかりませんよね。

モラルジレンマの取り扱われ方

モラルジレンマは、教育的にみてとても良い道徳教育の教材であるので、小学校低学年から中高生にかけて、道徳の時間などでよく取り扱われます。ネット上を探してみても、道徳の授業の学習指導案にモラルジレンマが取り扱われているのがわかるでしょう。私自身も、マイケル・サンデルの授業での討論の様子を学びましたし、モラルジレンマの具体例については幼いころから耳にしたことがありました。 モラルジレンマの話は、学校教育において不可欠なものである、と私は思います。また、学校教育の場だけでなく、大人の私たちも、次世代を担う子供たちにモラルジレンマについて話さなければなりません。

みんなのことを考える

モラルジレンマの例を挙げたとき、たまに勘違いをしている人がいます。たとえば、ハインツのジレンマのはなしで、ハインツが薬屋を襲撃して薬を奪ったことが、ハインツの自己中心的な考え、自分さえいいという考えにそくしているだけではないのか、ハインツは自分の利益しか考えていなくて、自分勝手なことが肯定された話であるのではないか、ということが議論されることがあります。たしかに、道徳の教科書でこの例を取り上げると、自己主義を推進しているのか?と非難する人が出てもおかしくないのかもしれません。 しかし、モラルジレンマを学ぶ一番の目的は、多様な価値観を学ぶことに他ならないのです。よって、モラルジレンマの議論をしていても、善悪の峻別がつかない、という問題点が上がります。トロッコの例にしても、どちらにせよ人を殺すことはよくないことですからね。でも、そもそも多様な価値観を学ぶことと、善悪について学ぶことを同じテーブルで議論する必要はない、と私は思います。

いかがでしたか。 モラルジレンマは全人類が学んでおくべき道徳項目の一つだと私は思います。 ぜひ多様な価値観を身につけましょう。

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モラルジレンマで道徳の授業を変える (21世紀型授業づくり)
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内容紹介 クラスで一番の人気の授業/モラルジレンマ授業の人気のひみつは?/オープンエンドの授業は心に残る!/ドラえもんとジレンマ授業/モラルジレンマ授業は何故子どもたちに価値ある経験となるか?/道徳性を発達させる授業の基本的な進め方/モラルジレンマ物語りと挿絵/モラルジレンマ「くものすとちょう」ができるまで/モラルジレンマで健康教育を/学校生活の充実とモラルジレンマ授業/子どものこころに「ダイモニオン」の声を/校内研究会を活性化する/道徳性発達理論から「生き方」教育

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