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知っておきたいオンブズマン制度の問題点|日本と世界での例

更新日:2024年11月10日

社会人常識

日本ではあまり聞くことのない「オンブズマン制度」ですが、欧米では早い段階から取り入れられています。意外にも私たちの生活や社会でも活躍されており、いまや実生活で欠かせない存在となりつつあります。これを機にオンブズマン制度について知ってみてはいかがでしょうか。

オンブズマン制度の意味とは?

そもそも「オンブズマン制度」とは何なのでしょうか? オンブズマン制度とは1809年よりスウェーデンで始まり、国民の権利や利益を不当に侵害されないために、中立の立場より市民の代表が外部より行政の監視を行う制度です。国によって監視の対象となる行政の立場は公務員や裁判所など違い、保有する権限や職務も違います。ちなみにオンブズマン制度の「オンブズマン」はスウェーデン語で「代議士」の事であり、国民の代理人として行政を監視し告発する人々の事を言い「オンブズマン制度」として普及していったという背景があります。

オンブズマン制度のメリットは?

それではオンブズマン制度には我々市民にどのようなメリットをもたらすのでしょうか? まず一つは行政の働きを監視することで、行政による国民の権利や利益を侵害するような不当な行動を防ぐことができます。また、オンブズマンの役割として市民の苦情や不満を処理する役割もあり、市民の声が行政に届きやすいというメリットがあります。もう一つは行政機関の透明性が増すことです。オンブズマン制度のような監視制度があれば、これまで明るみに出さないでいたような問題や、対処されるに至らなかった細かな問題までも告発の対象となる場合があり、行政がより市民を意識した責任を持った運営を行う期待があります。最後は、市民が行政機関の運営に対して意識的になる可能性が高くなることです。これまであまり行政に対して関心をもっていなかった人々もオンブズマン制度のような行政の監視を行う制度があれば行政に向ける意識も個人レベルで高くなっていくでしょう。

オンブズマン制度の問題点と弊害

オンブズマン制度は行政の監視という、市民にとっては有益な存在だと考えられますが、では逆にオンブズマン制度に至るまでの弊害、そして実際にオンブズマン制度にした際の問題点とは具体的に何が考えられるのでしょうか?

弊害

オンブズマン制度は日本でもロッキード事件以降に取り入れる議論が活発化しました。しかし、現在存在する制度や機関などを活用していけばわざわざオンブズマン制度を採り入れなくていいという乗り気では意見が存在しており、その後議論はうやむやの方向に向かっていきました。ちなみに日本では行政相談委員制度が置かれており、これを日本型のオンブズマン制度と主張する声もありますが、機能を一部有しているだけでオンブズマン制度とは言い難いという声もあり、どちらにしても行政の動き方次第、または概存する制度に阻まれて制度が成り立たないという背景が挙げられます。

問題点

では仮にオンブズマン制度を取り入れた際、起こりうる問題としてどのようなことが挙げられるのでしょうか?まず一つは、本来は中立でなくてはいけないオンブズマンが政党や団体関係者の手によって動かされる危険があります。これでは一部政党の支持機関となってしまう恐れがあり、また団体の関係者なら団体の意向に沿う行動をするなどの懸念が生じます。次に、市民の利益を守るために挙げた重要な政策や条例もオンブズマンが原因で遂行できない、思うように円滑な政治を運営することが出来ないなどといったことが想定がされます。

オンブズマン制度とオンブズパーソン制度の違い

オンブズマン制度と似たような用語に「オンブズパーソン制度」というものがあります。違いがよく分からない人からすると、言葉が違うので全く違う制度のように思われるかもしれませんが、意味はほとんど同じです。「オンブズパーソン」とはアメリカで「オンブズマン」が女性差別に当たると考えられ、代わりにmanのところをpersonに置き換えたことにより「オンブズパーソン」という言葉が生まれました。なので活動内容もオンブズマンと同じになります。日本では一般的にはオンブズマンですが、極たまにオンブズパーソンとするところもあるので覚えておくといいでしょう。

日本でのオンブズマン制度は?

日本で先にも述べたように、しっかりとしたオンブズマン制度は取り入れられていません。ただ、総務省の一部機関が国際オンブズマン協会の正会員となっており、総務省を中心とした複合的な組織がオンブズマンの制度を担っているとされていますが、公的なオンブズマンとされるかはどうも曖昧です。しかし、一部自治体では公的なオンブズマン制度を取り入れているところがあります。ここではオンブズマン制度を取り入れた自治体をピックアップしてみました。

川崎市

川崎市は日本で唯一、最初にオンブズマン制度を自治体の条例として取り入れた自治体です。では何故、川崎市がオンブズマン制度を導入するに至ったかというと、今でも有名なリクルート事件が川崎市と関わっていたことによる不信感からオンブズマン制度の導入へ至りました。川崎市のオンブズマン制度の基本的な内容は他のオンブズマン制度と変わらず、役職についている人には元市長や弁護士がいます。

札幌市

札幌市のオンブズマン制度は平成12年12月12日に条約が制定され、翌年の3月に設置されました。行政の運営の信頼性を高めることを目的として活動されており、すでに道路幅や証明に関する手数料について勧告を行っている実績があります。また札幌市のオンブズマンには大学教授や弁護士が役職に就き活動しています。

明石市

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初回公開日:2017年02月15日

記載されている内容は2017年02月15日時点のものです。現在の情報と異なる可能性がありますので、ご了承ください。
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