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IOB検知とは?IOCとの違いからTTP分析・導入ステップまで徹底解説

更新日:2026年02月26日

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1分でわかるこの記事の要約 IOB検知は、既知の脅威を対象とするIOC検知に対し、攻撃者の「振る舞い」に着目し未知の脅威を検出します。 IOCでは対処できない巧妙な攻撃が増加しており、誤検知削減やゼロトラストセキュリティ […]

1分でわかるこの記事の要約
  • IOB検知は、既知の脅威を対象とするIOC検知に対し、攻撃者の「振る舞い」に着目し未知の脅威を検出します。
  • IOCでは対処できない巧妙な攻撃が増加しており、誤検知削減やゼロトラストセキュリティとの連携がIOB導入の背景です。
  • IOB検知の核となるのは、攻撃者の「戦術・技術・手順(TTP)」を分析するMITRE ATT&CKフレームワークです。
  • IOB導入には、Telemetryデータ収集、ベースライン確立、TTP分析、シナリオ型ルール作成、チューニングの5ステップが必要です。
  • EDR/XDR、SIEM/SOARなどのテクノロジーと、高度なスキルを持つSOCチームがIOB検知の運用を支えます。
巧妙化の一途をたどるサイバー攻撃。IPアドレスやハッシュ値といった既知の脅威情報(IOC)に基づく従来型の対策だけでは、未知のマルウェアやファイルレス攻撃から組織を守ることは困難です。今、求められているのは、攻撃者の「振る舞い」そのものに着目する次世代の脅威検知アプローチ、IOB(Indicator of Behavior)検知です。 本記事では、IOB検知の基本から、攻撃者の行動パターン(TTP)を分析・テンプレート化し、セキュリティ運用を高度化するための具体的な手法までを徹底解説します。

IOB検知とは?IOC検知との違いをわかりやすく解説

サイバーセキュリティにおいて、脅威検知の指標にはIOCIOBの2つが存在します。両者は似ていますが、アプローチが根本的に異なります。効果的なセキュリティ対策のためには、まずこの違いを正確に理解することが不可欠です。

IOC (侵害指標) :「点」で捉える既知の脅威

IOC (Indicator of Compromise) は「侵害の痕跡」や「侵害指標」と訳され、過去のサイバー攻撃で使われた具体的な証拠(アーティファクト)を指します。

IOCの具体例

  • 攻撃者が使用したサーバー: IPアドレス、ドメイン名
  • マルウェア: ファイルハッシュ値 (MD5, SHA256など)
  • 不正なメール: 件名

IOCベースの検知は、これらのブラックリストとシステム情報を照合して脅威を発見します。既知の脅威に対しては高速かつシンプルに検知できる反面、「過去に観測されたもの」しか検知できないという大きな弱点を抱えています。攻撃者がIPアドレスやファイル内容を少し変更するだけで、亜種のマルウェアや未知の攻撃には全く対応できません。

IOB (振る舞い指標) :「線」で捉える未知の脅威

一方、IOB (Indicator of Behavior) は「振る舞いの痕跡」と訳され、攻撃者が目的を達成するために行う一連の行動パターンそのものに着目します。特定のファイルやIPではなく、「何が行われたか」という文脈(コンテキスト)を重視するアプローチです。

例えば、「Wordファイル開封後、PowerShellが起動し、外部の不審なIPへ暗号化通信を開始した」という一連の振る舞いは、典型的なファイルレス攻撃のIOBです。個々のイベントは正常に見えても、それらが特定の順序・組み合わせで発生した場合に「悪意のある行動」として検知します。

この振る舞い分析により、IOCベースでは見逃す未知の脅威や、正規ツールを悪用する「Living Off The Land (LotL)」攻撃にも対応可能になります。IOB検知は、攻撃の「点」ではなく「線」で捉えることで、より高度な脅威検知を実現します。


なぜIOCでは不十分?IOBが求められる3つの理由

現代のセキュリティ対策において、従来のIOCからIOBへの移行が急務とされる背景には、主に3つの理由があります。

IOBが求められる主な理由

  • 攻撃の高度化・巧妙化: ファイルレス攻撃やOS標準機能の悪用が増え、IOCでは検知が困難に。
  • セキュリティ運用(SOC)の負荷増大: IOB検知は文脈に基づく高確度なアラートを生成し、誤検知を削減し、インシデント対応の効率化に貢献。
  • ゼロトラストセキュリティとの親和性: 内部の振る舞いを監視するIOBのアプローチは、ゼロトラストの理念実現に不可欠。

IOB検知の鍵「TTP」とは?攻撃者の思考を読み解く

IOB検知を実践する上で中心的な概念となるのが「TTP」です。TTPを理解することは、断片的なイベント情報から攻撃者の意図を読み解き、効果的な検知ルールを構築するための羅針盤となります。

TTPの構成要素:戦術・技術・手順

TTP (Tactics, Techniques, and Procedures) は、攻撃者がどのような目的(戦術)で、どのような手法(技術)を、どのような手順で実行するのかをモデル化したものです。

TTPの要素と定義

  • 戦術 (Tactics): 攻撃の最終目的や中間目標。「なぜそれを行うのか?」。例:「初期アクセス」「権限昇格」「情報窃取」
  • 技術 (Techniques): 戦術を達成するための具体的な手段。「どのように行うのか?」。例:「スピアフィッシングメール」「脆弱性の悪用」
  • 手順 (Procedures): 特定の攻撃者グループが技術をどう実装・組み合わせるかという行動シーケンス。「誰がどのように行うのか?」。例:Aツールで偵察後、Bの手法で権限昇格し、Cツールでデータを圧縮・送信する。

TTPを分析することで、攻撃者の意図や攻撃フェーズを把握でき、プロアクティブな脅威分析や迅速なインシデント対応が可能になります。

TTP分析の羅針盤「MITRE ATT&CK」フレームワークとは

TTPの理解に欠かせないのが、米国の非営利団体MITRE社が開発した「MITRE ATT&CK」フレームワークです。これは、世界中のサイバー攻撃TTPを網羅的に収集・体系化した巨大なナレッジベースです。

ATT&CKは、攻撃フェーズを14の戦術に分類し、紐づく技術・手順をマトリックス形式で整理しています。ATT&CKを活用するメリットは以下の通りです。

MITRE ATT&CK活用メリット

  • 共通言語の獲得: 組織や業界内で脅威について議論する共通言語となる。
  • 脅威分析の深化: 不審なイベントをATT&CKにマッピングし、攻撃の全体像や次の狙いを予測できる。
  • 防御態勢の評価: 自社のセキュリティ対策がどのTTPに対応できるかを可視化し、対策の穴(ギャップ)を特定できる。
  • 検知ルールの開発: 特定の攻撃者が多用するTTPに基づき、優先度の高い検知ルールを開発できる。

ATT&CKは、TTPベースの脅威検知、すなわちIOB検知を実践するための具体的な設計図として世界中で活用されています。


【実践ガイド】IOB検知を導入する5つのステップ

ここからは、IOB検知の考え方に基づき、攻撃者の行動パターンを分析し、検知ルールとしてテンプレート化していく具体的な5つのステップを解説します。

ステップ1:Telemetryデータを収集し、分析基盤を構築する

振る舞い分析の基盤は、豊富で詳細なデータです。まずは、PCやサーバーから詳細な操作ログ「Telemetry(テレメトリ)データ」を収集します。

  • 主要なデータソース: EDR (Endpoint Detection and Response), XDR (Extended Detection and Response)
  • 収集するデータ例: プロセス実行、ファイル操作、ネットワーク通信、レジストリ変更、APIコール
  • 集約先: SIEM (Security Information and Event Management) にファイアウォールや各種サーバーログと共に集約し、相関分析の対象とする。

ステップ2:正常な状態(ベースライン)を確立し、異常を検知する

次に、収集したデータをもとに、平時の正常な状態、すなわち「ベースライン」を確立します。 例:「経理部のPCは通常、会計ソフトとOfficeしか使わない」「Webサーバーは外部の443ポートからの通信のみ受け付ける」

このベースラインから逸脱する振る舞いを「異常」として検知します。例えば、経理部のPCで突然PowerShellが実行されれば、それはベースラインから外れた異常な振る舞いです。これが異常検知の第一歩となります。

ステップ3:MITRE ATT&CKでTTPを分析・マッピングする

検知した異常な振る舞いが、どのような攻撃活動の一部なのかをMITRE ATT&CKフレームワークを用いて分析します。

例えば、「PowerShellによる不審なスクリプト実行」という異常は、ATT&CKマトリックスの「実行 (Execution)」戦術における「T1059.001: PowerShell」にマッピングできます。これにより、断片的なアラートが意味を持つストーリーとなり、攻撃の全体像と深刻度を正確に把握できます。

ステップ4:シナリオベースの検知ルールを作成・テンプレート化する

TTPの分析結果に基づき、再利用可能な検知ルールを作成します。これは単一のイベントではなく、複数の条件を組み合わせたシナリオベースのルールです。

例:「WINWORD.EXEからpowershell.exeが特定の引数(-enc)で起動され、かつ外部の特定国へ通信を開始した」

この検知ルールが、特定のTTPを捉える「テンプレート」となります。このテンプレートをSIEMやEDRに実装し、自動検知の仕組みを構築します。

ステップ5:テストとチューニングで誤検知を削減する

作成した検知ルールが、正常な業務活動を誤って検知しないか、十分にテストします。

  • テスト環境での検証
  • 本番環境では監視モード(アラートなし)でログ収集から開始
  • インシデント対応チームからのフィードバックに基づき、ルールを改善(チューニング)

この継続的な改善サイクルこそが、高精度なIOB検知を実現する鍵です。


IOB検知を実現する主要テクノロジーとSOCの役割

IOB検知は、それを支えるテクノロジーと運用体制があって初めて機能します。

EDR/XDR:振る舞い監視の中核

EDR/XDRは、PCやサーバーなどのエンドポイントにおける振る舞いを詳細に監視・記録し、脅威を検知・対応するソリューションです。IOB検知に不可欠なTelemetryデータを収集する中核技術であり、TTPに基づいた脅威分析を強力に支援します。

SIEM/SOAR:相関分析と対応の自動化

SIEMは、EDR/XDRやファイアウォールなど多様なソースからログを集約・相関分析し、巧妙な攻撃の兆候を発見します。SOAR (Security Orchestration, Automation and Response) と組み合わせることで、アラート検知後の初動対応(IPブロック、端末隔離など)を自動化し、インシデント対応を迅速化します。

SOCの役割と求められるスキルセット

IOB検知の導入は、SOC (Security Operation Center) のアナリストに新たなスキルセットを要求します。

SOCアナリストに求められるスキル

  • MITRE ATT&CKへの深い理解
  • 未知の脅威を探すプロアクティブな「脅威ハンティング」能力
  • インシデントの原因を調査するデジタルフォレンジックの知識

組織的なリスクマネジメントの一環として、高度なスキルを持つ人材の育成や、外部専門サービス(MDRなど)の活用も有効です。


まとめ:IOB検知への移行でプロアクティブなセキュリティを実現

従来のIOCベースの検知は、巧妙化する現代のサイバー攻撃の前では限界を迎えています。これからのセキュリティ対策の主役は、攻撃者の「振る舞い」に着目するIOB検知です。

本記事では、IOBの基本から、TTP分析、そして具体的な導入5ステップまでを解説しました。

  1. Telemetryデータの収集
  2. ベースラインの確立と異常検知
  3. TTPの分析とマッピング
  4. 検知ルールの作成とテンプレート化
  5. テストとチューニング

IOB検知への移行は、単なるツール導入ではなく、セキュリティ運用の哲学を変革する取り組みです。攻撃者の一歩先を行くプロアクティブなセキュリティ体制を構築するために、今こそIOB検知へのシフトをご検討ください。


よくある質問(FAQ)

Q. IOB検知と振る舞い検知は同じものですか?

A. ほぼ同義と捉えて問題ありません。振る舞い検知は、システムやユーザーの行動パターンを監視し異常を検知する技術の総称です。IOBは、その中でも特に「悪意のある攻撃者の振る舞い」を示す指標やパターンを指す用語として使われることが多いです。

Q. 中小企業でもIOB検知は導入できますか?

A. 可能です。現在では多くのEDR/XDR製品やマネージドサービス(MDR)が、クラウドベースで比較的手頃な価格で提供されています。自社に専門のSOCチームを構築するのが難しい場合でも、これらのサービスを活用することで高度なIOB検知の恩恵を受けられます。

Q. IOB検知を導入すれば、アンチウイルスソフトは不要になりますか?

A. いいえ、不要にはなりません。アンチウイルスソフト(NGAV含む)とIOB検知は、互いに補完し合う関係です。アンチウイルスは既知の脅威をブロックする最前線の「防御層」、IOB検知はそれをすり抜けた未知の脅威を発見する深層の「検知・対応層」として機能します。多層防御の観点から、両方の組み合わせが最も効果的です。
この記事のまとめ
  • IOB検知は、攻撃者の具体的な「振る舞い」から脅威を検出する次世代のセキュリティアプローチです。
  • IOC検知の弱点を補完し、ファイルレス攻撃や未知のマルウェアといった高度な脅威に対応します。
  • TTP(戦術・技術・手順)の理解とMITRE ATT&CKフレームワークの活用が、IOB検知の要となります。
  • Telemetryデータ収集から検知ルール作成、継続的なチューニングまで、5つのステップで導入を進めます。
  • EDR/XDRやSIEM/SOARといったテクノロジー、そして専門知識を持つSOCがプロアクティブなセキュリティを実現します。

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初回公開日:2026年02月26日

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