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グローバルUEMポリシーを日本拠点に最適化する方法|ベースライン+オーバーレイ設計とIntune実装ガイド

更新日:2026年02月24日

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1分でわかるこの記事の要約 グローバル企業のUEMポリシーは、日本の法規制や商習慣に対応させるため、そのまま適用すると課題が生じます。 各国・地域の法規制、商習慣、セキュリティ脅威の違いから、グローバルと日本でポリシーを […]

1分でわかるこの記事の要約
  • グローバル企業のUEMポリシーは、日本の法規制や商習慣に対応させるため、そのまま適用すると課題が生じます。
  • 各国・地域の法規制、商習慣、セキュリティ脅威の違いから、グローバルと日本でポリシーを分ける必要性があります。
  • UEMポリシーはグローバル共通のベースラインと日本拠点独自のオーバーレイで階層化し、柔軟性と統制を両立させます。
  • Microsoft Intuneなどを活用し、グループ分けや構成プロファイル、コンプライアンスポリシーで具体的な設定が可能です。
  • 役割分担の明確化と定期的な見直しにより、継続的な運用体制を構築することがUEM成功の鍵となります。
グローバルに事業展開する企業において、UEM(Unified Endpoint Management)による統一されたデバイス管理は、セキュリティガバナンス強化と運用効率化に不可欠です。しかし、海外本社が策定したグローバル標準ポリシーを日本拠点にそのまま適用しようとすると、「日本の法規制に準拠できない」「現場の業務実態に合わない」といった課題に直面しがちです。 本記事では、グローバルガバナンスを維持しつつ、日本拠点に最適化されたUEMポリシーを設計・運用するための具体的な方法と、明日から使える実践的なポイントを詳しく解説します。

なぜUEMポリシーをグローバルと日本拠点で分ける必要があるのか?

グローバルで統一されたポリシーは一見効率的に思えますが、各拠点の特性を無視すると、かえってセキュリティリスクを高めビジネスの足かせになる可能性があります。ここでは、ポリシーを分けるべき主な理由を3つの観点から解説します。

理由1:法規制とコンプライアンス要件の違い

最も重要な理由が、国や地域によって異なる法規制への対応です。特にデータ保護に関する規制は厳格で、違反すれば企業に多大な損害をもたらしかねません。

例えば、欧州のGDPR(一般データ保護規則)日本の個人情報保護法では、保護対象となるデータの範囲や、データの取得・利用・移転に関する要件が異なります。グローバルポリシーがGDPR準拠でも、日本の個人情報保護法が求める「利用目的の通知・公表」や「第三者提供の記録」といった詳細要件を満たしていないケースは少なくありません。

UEMはデバイスから位置情報や利用アプリといった機微な情報を収集する可能性があるため、情報取得が日本の法律に照らして適切かを慎重に判断し、ポリシーに反映させる必要があります。コンプライアンス遵守は企業の信頼性を担保する上で、リスク管理と内部統制の観点からも不可欠です。

理由2:商習慣と働き方の地域特性

ビジネスの進め方や働き方は、国や文化によって大きく異なります。

  • 業務プロセス: 日本では特定の業務で紙媒体やハンコ文化が根強く、関連アプリの利用許可が必要な場合があります。
  • セキュリティ文化: グローバル標準の「性悪説」に基づく厳しい制限が、日本の「性善説」をベースとした協力的なカルチャーに馴染まず、生産性を阻害する可能性も考えられます。
  • デバイス利用: リモートワークの普及度や、従業員が利用するデバイス(PC、スマホ、タブレット)の使われ方も地域によって差があります。

日本市場向けの営業活動で特定のアプリが必須であるなど、地域特性に応じた柔軟なアプリケーション管理(MAM)が求められます。現場の声を無視したポリシーは形骸化し、シャドーITを助長する原因にもなるため、業務効率と従業員満足度を考慮したポリシー設計が重要です。

理由3:セキュリティ脅威の傾向と対策の違い

サイバー攻撃の手法は巧妙化しており、脅威の傾向は地域によって異なります。日本を標的とした特定のマルウェアやフィッシング詐欺に対し、グローバルで一律のセキュリティ対策だけでは不十分な場合があります。

例えば、日本語のビジネスメールを装った標的型攻撃への対策として、特定の添付ファイル形式のブロックや、日本語環境に特化したEDR(Endpoint Detection and Response)との連携が必要になるかもしれません。

近年注目されるゼロトラストの考え方においても、アクセス判断のコンテキスト(状況)として地域性は重要な要素です。日本拠点のネットワーク環境や利用クラウドサービスに合わせてアクセス制御ポリシーを最適化することで、より実効性の高いセキュリティを実現できます。


UEM運用設計のベストプラクティス:グローバルと日本の両立

グローバルポリシーと日本拠点向けポリシーを両立させるには、戦略的なアプローチが必要です。ここでは、具体的な運用設計の4ステップを解説します。

ステップ1:現状分析と要件定義

まず、現状を正確に把握し、日本拠点で満たすべき要件を明確にします。

  1. 管理対象の棚卸し: PC、スマートフォン、タブレットなど、管理対象となる全エンドポイントのOS(Windows, macOS, iOS, Android)とバージョンをリストアップし、管理範囲を明確化します。
  2. ギャップ分析: 本社から展開されているグローバルポリシーを精査し、日本の法規制、商習慣、セキュリティ要件と照らし合わせてギャップを分析します。
  3. 要件のヒアリングと定義: 情報システム部門だけでなく、法務、コンプライアンス、人事、事業部門を巻き込みます。「データ保護に必要なデバイス制御は?」「業務効率を落とさないために許可すべきアプリは?」といった具体的な要件を洗い出し、定義します。

この要件定義が、後のポリシー設計の強固な土台となります。

ステップ2:ポリシーの階層化とベースラインの策定

すべてのポリシーを日本独自で作成するのは非効率です。そこで、「ポリシーの階層化」という考え方が極めて有効になります。

  • グローバル共通ポリシー(ベースライン): 企業のセキュリティガバナンスの根幹であり、全拠点で遵守すべき必須ポリシーです。パスワードの複雑性、デバイス暗号化、マルウェア対策ソフトの導入義務など、基本的な項目が含まれます。これはグローバルIT部門が主体で管理します。
  • 日本拠点独自ポリシー(オーバーレイ): ベースラインを基礎としつつ、日本特有の要件を追加・変更するポリシーです。「個人情報保護法に対応するDLP設定」「日本国内でのみ利用許可された業務アプリの配信」「国内オフィスでのみ接続を許可するWi-Fiプロファイル」などが該当します。これは日本拠点のIT部門が主体で管理します。

この階層化アプローチにより、グローバルでの統制と各拠点の柔軟性を両立できます。

ステップ3:UEMツールを活用した具体的なポリシー設定

定義したポリシーをUEMツールに実装します。ここでは、導入企業が多いMicrosoft Intuneを例に解説します。

  1. グループの作成 (Azure AD): Azure Active Directory(Azure AD)で、ユーザーやデバイスを所属拠点や部署ごとにグループ分けします。「JP-AllUsers(日本の全ユーザー)」や「JP-Corporate-iOS(日本の会社所有iOSデバイス)」などです。動的グループ機能を活用すれば、ユーザー属性(例:所属国が”Japan”)に基づき自動でメンバーシップを更新でき、管理が効率化します。
  2. 構成プロファイルとコンプライアンスポリシーの適用 (Intune): 構成プロファイル: Wi-Fi設定、VPN設定、機能制限などを構成します。日本拠点向けのプロファイルを作成し、先ほどの日本拠点グループに割り当てます。 コンプライアンスポリシー: デバイスがセキュリティ基準(OSは最新か、パスワードは設定されているか等)を満たしているか評価します。これも日本独自の要件があれば別途作成し、日本のグループに割り当てます。準拠していないデバイスは「条件付きアクセス」で社内リソースへのアクセスを制限し、セキュリティを強化します。
  3. アプリケーション管理 (MAM): MAMポリシーを使えば、個人所有デバイス(BYOD)上の業務アプリとデータを保護できます。「業務アプリ内のデータを個人アプリへコピー&ペースト禁止」といった設定を、日本のユーザーグループにのみ適用可能です。

ステップ4:運用体制の構築

優れた設計も、それを支える体制がなければ形骸化します。継続的なUEM運用のための体制を構築しましょう。

  • 役割分担の明確化: RACIチャートなどを用いて、本社と日本拠点の責任範囲を文書化します(誰が承認(Accountable)し、誰が実行(Responsible)するのか等)。明確な役割分担が、迅速な意思決定とスムーズな連携を可能にします。
  • 定期的なポリシーの見直し: 最低でも年一度は関係者でポリシーの有効性をレビューします。ヘルプデスクへの問い合わせやユーザーのフィードバックを分析し、「アプリが使えず業務に支障が出ている」といった声が多ければ、リスク評価の上で緩和を検討するなど、継続的な改善サイクル(PDCA)を回すことが成功の鍵です。
  • 運用効率化のためのテンプレート活用: 「日本拠点向けWindows PC標準構成」のようなポリシー設定のテンプレートを作成・保存しておきましょう。デバイスのキッティング作業が大幅に効率化され、管理の一貫性を保ちながら運用コストを削減できます。

主要UEMソリューションの地域別ポリシー管理機能

UEMソリューション選定時には、グローバルとローカルのポリシーを柔軟に管理できるかが重要です。

Microsoft Intune (Endpoint Manager)

  • 特長: Microsoft 365との親和性が高く、Azure ADと連携した動的グループによる柔軟なポリシー割り当てが最大の特長。クラウドベースで世界中から一元管理でき、ゼロトラストを実現する「条件付きアクセス」との連携もスムーズです。

VMware Workspace ONE

  • 特長: MDM/MAMからVDI、ID管理までを統合したプラットフォーム。「Smart Group」機能により、地理的な場所など複数の条件を組み合わせた高度なターゲティングが可能です。多様なOSを単一コンソールで管理できる点も強みです。

その他のソリューション (Ivanti, Jamfなど)

  • 概要: Ivantiはオンプレミス環境との連携に強み。JamfはAppleデバイス管理に特化。自社のデバイス構成やIT環境を考慮し、最適なソリューションを選定しましょう。

まとめ:UEMの成功はグローバルとローカルの最適なバランスから

UEMの運用設計において、グローバルでの統一ガバナンスと、日本拠点の実情に合わせた柔軟性を両立させることは、簡単ではありません。しかし、法規制の遵守、セキュリティの確保、従業員の生産性向上を実現するためには、このバランスの追求が不可欠です。

重要なのは、グローバル標準を一方的に押し付けるのではなく、日本の特性を深く理解し、それをポリシーに反映させること。本記事で紹介した「ポリシーの階層化」や具体的なツール設定、継続的な運用体制の構築を実践し、効果的で持続可能なエンドポイント管理を実現してください。


よくある質問(FAQ)

よくある質問(FAQ)

  • Q1: グローバルポリシーと日本拠点の要望、どちらを優先すべきですか? A1: 一概にどちらかを優先するのではなく、「階層化」の考え方でバランスを取ることが重要です。企業の根幹となるセキュリティベースライン(暗号化、パスワードポリシー等)はグローバルポリシーを遵守します。その上で、日本の法規制対応や業務効率に関わる部分は、リスク評価を行いながら日本拠点の要望を反映させましょう。両IT部門が相互理解と合意形成を図るプロセスが不可欠です。
  • Q2: ポリシーを分けると管理が複雑になりませんか? A2: 確かにポリシー数は増えますが、Microsoft Intuneの動的グループなど、UEMツールの機能を活用すれば複雑さは抑制できます。ユーザー属性に基づき自動で正しいポリシーが割り当てられるため、手動管理は最小限になります。「日本拠点向けテンプレート」の作成など、運用を標準化・効率化する工夫も有効です。
  • Q3: 日本の個人情報保護法で特に注意すべきUEMの設定項目は? A3: 従業員のプライバシーに関わる情報収集に特に注意が必要です。GPS位置情報、Web閲覧履歴、アプリ一覧などを収集する場合、目的を明確に通知し、同意を得るプロセスが求められる場合があります。また、BYODでは、MAMポリシーで業務データのみを遠隔消去できるようにし、個人データを保護する設定が推奨されます。必ず法務部門や専門家のアドバイスを求めてください。
この記事のまとめ
  • UEM運用では、グローバルなガバナンスと日本拠点の柔軟性を両立させることが成功の鍵です。
  • 法規制、商習慣、セキュリティ脅威の違いを理解し、グローバルポリシーを日本向けに最適化することが不可欠です。
  • ポリシーの階層化、UEMツールでの具体的な設定、そして継続的な運用体制の構築を実践しましょう。
  • Microsoft IntuneなどのUEMソリューションは、動的グループ機能で地域別ポリシー管理を効率化できます。
  • 法務部門との連携を密にし、従業員のプライバシー保護を考慮した情報収集とBYODポリシーを設定しましょう。

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初回公開日:2026年02月24日

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