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TLSインスペクションでアプリが動かない原因は?証明書ピニング・DoH競合まで4ステップで切り分け解決

更新日:2026年02月24日

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1分でわかるこの記事の要約 TLSインスペクションでアプリが動かない主な原因は、証明書ピニング、クライアント証明書、特殊プロトコル、Secure DNSとの競合です。 問題の特定には、影響範囲の特定、ルート証明書の確認、 […]

1分でわかるこの記事の要約
  • TLSインスペクションでアプリが動かない主な原因は、証明書ピニングクライアント証明書、特殊プロトコル、Secure DNSとの競合です。
  • 問題の特定には、影響範囲の特定、ルート証明書の確認、一時的なTLSインスペクション除外、ログ・パケットキャプチャの4ステップ切り分け手順が有効です。
  • 解決策として、多くの場合、該当する通信をTLSインスペクションの対象から除外することが現実的です。
  • ただし、除外はセキュリティリスクを伴うため、信頼できる宛先に限定し、必要最小限に留めるべきです。
  • ZscalerやPalo Alto Networksなどの主要製品では、柔軟な除外ポリシー設定やログ分析機能が提供されています。
TLSインスペクションでアプリが動かない?原因究明のトラブルシューティングと切り分け手順を徹底解説
企業ネットワークのセキュリティを強化するために導入したTLSインスペクション。しかし、その影響で「特定のアプリだけ通信できない」「今まで使えていたツールが動かなくなった」といった問題に直面していませんか?これは、暗号化通信を可視化する上で多くの管理者が経験する典型的な課題です。原因は一つではなく、証明書の問題やアプリの仕様、DNS設定などが複雑に絡み合っているため、解決が難しいと感じるかもしれません。 本記事では、TLSインスペクション環境でアプリが動作しない際の原因を特定するための、体系的なトラブルシューティングと切り分け手順を徹底的に解説します。この手順に沿って確認することで、問題の根本原因を突き止め、適切な解決策を導き出すことができるでしょう。

なぜ?TLSインスペクションでアプリが動かなくなる4つの主な原因

トラブルシューティングを始める前に、なぜTLSインスペクションがアプリケーションの動作に影響を与えるのか、その背景にある主な原因を理解しておくことが重要です。問題の多くは、セキュリティを強化するための仕組み同士が意図せず競合してしまうことによって発生します。

原因1:証明書ピニング(Certificate Pinning)

証明書ピニングは、アプリケーションが特定のサーバー証明書のみを信頼するセキュリティ機能です。アプリ内に正当な証明書の情報を埋め込んでおき、通信時にサーバーから提示された証明書がその情報と一致するかを検証します。これにより、中間者攻撃(MitM攻撃)による通信の盗聴や改ざんを防ぎます。

しかし、TLSインスペクション自体が一種の中間者攻撃と同様の仕組みで動作するため、証明書ピニングを実装しているアプリとは非常に相性が悪くなります。

TLSインスペクションでは、Proxyやファイアウォールが本来のサーバー証明書を自身の証明書で置き換えてクライアントに提示します。アプリ側は、この置き換えられた証明書を「不正な証明書」と判断し、通信を自ら切断してしまうのです。これが、ブラウザでは問題ないサイトが、特定のアプリではエラーになる典型的な原因です。

原因2:クライアント証明書認証の利用

企業ネットワークでは、セキュリティ強化のためにデバイス認証としてクライアント証明書を利用するケースがあります。クライアントはサーバーにアクセスする際、自身の身分を証明するためにクライアント証明書を提示します。

TLSインスペクションのプロセスにおいて、通信が一度復号され、再度暗号化される過程で、このクライアント証明書の情報が正しくサーバーに伝わらないことがあります。製品によっては、認証に必要なヘッダーが欠落したり、証明書そのものがサーバーに渡されなかったりして認証に失敗し、結果としてアプリが正常に動作しなくなります。

原因3:特殊なプロトコルや古いTLSバージョンの利用

Web通信の標準はHTTP/2やTLS 1.2/1.3ですが、すべてのアプリがこれに準拠しているわけではありません。

  • WebSocketのようなリアルタイム通信プロトコル
  • 古いシステムと連携するための独自プロトコル
  • 非推奨の古いTLSバージョン(TLS 1.0, 1.1)やSSL 3.0

最新のセキュリティアプライアンスは、これらの特殊なプロトコルや脆弱な暗号化通信の復号に対応していなかったり、ポリシーによって意図的にブロックしたりすることがあります。その結果、該当アプリの通信が確立できず、動作不良を引き起こします。

原因4:Secure DNS (DoH/DoT) との競合

Secure DNSは、DNSの名前解決を暗号化する技術(DNS over HTTPS/TLS)です。ユーザーのプライバシーを保護しますが、この仕組みが従来のネットワークセキュリティ機器と競合する場合があります。

多くのファイアウォールやProxyは、宛先のドメイン名(FQDN)に基づいて通信を制御します。この情報は、通常、平文のDNS(UDP/53)クエリを監視して取得しています。DoHが有効になると、DNSクエリ自体がHTTPSで暗号化されるため、セキュリティ機器は宛先ドメインを特定できなくなります。

結果として、正しいセキュリティポリシー(TLSインスペクションの対象/除外など)を適用できず、通信がブロックされる問題が発生します。


【実践】TLSインスペクションのトラブルシューティング:4ステップ切り分け手順

問題の原因となりうる要素を理解した上で、実際にトラブルシューティングを進めていきましょう。以下のステップに沿って調査することで、効率的に原因を特定できます。

ステップ1:問題の範囲を特定する

最初に行うべきは、問題の影響範囲を正確に把握することです。これにより、原因が個別のクライアントにあるのか、ネットワーク全体にあるのかを切り分けられます。

  • 特定のユーザーやデバイスか? → デバイスのOS、アプリバージョン、証明書ストアを調査
  • 特定のアプリケーションか? → アプリの証明書ピニングの可能性を疑う
  • 特定の宛先サーバー(ドメイン)か? → 宛先サーバーに対するセキュリティポリシーを調査
  • 特定のネットワーク環境(社内LAN、VPNなど)か? → 経路上の特定の機器(FW/Proxy)を調査

ステップ2:クライアントのルート証明書を確認する

TLSインスペクションを機能させる大前提は、クライアントデバイスがセキュリティ製品(Proxy/FW)のルート証明書を信頼していることです。

問題が発生しているデバイスの証明書ストアを確認し、組織で配布しているルート証明書が「信頼されたルート証明機関」として正しくインストールされているかを確認しましょう。

  • Windows: certmgr.mscを実行
  • macOS: 「キーチェーンアクセス」アプリ

証明書が存在しない、または信頼されていない場合は、まずこれを正しくインストールします。MDMなどで一括配布している場合は、配布ポリシーがそのデバイスに正しく適用されているかも確認が必要です。

ステップ3:一時的なTLSインスペクション除外で切り分ける

原因がTLSインスペクションそのものにあるのかを確定させる、最も効果的で確実な方法が「一時的な除外」です。

ファイアウォールやProxyのポリシー設定で、問題のアプリの通信(宛先ドメインやIPアドレス)を、一時的にTLSインスペクション(SSL復号)の対象から除外します。

  • 除外後に正常動作する場合 → 原因はTLSインスペクションとアプリの非互換性(証明書ピニング等)で確定
  • 除外しても動作しない場合 → 原因はTLSインスペクション以外(ネットワーク経路、DNS、サーバー側の問題等)

この切り分けは、その後の調査の方向性を決める上で極めて重要です。

ステップ4:ログの確認とパケットキャプチャ

原因がTLSインスペクションにあると特定できたら、セキュリティ製品のログで詳細を調査します。

ファイアウォールやProxyの管理画面で、対象クライアントからの通信ログを確認します。特に「ブロック」「拒否」「ドロップ」といったアクションや、SSL/TLSハンドシェイクに関するエラーログ(例:「Unsupported Cipher Suite」)を探します。

ログだけでは情報が不十分な場合は、パケットキャプチャを行います。クライアント側(Wireshark等)とセキュリティ製品側で同時にキャプチャし、TLSハンドシェイクのどのメッセージで通信が切断されているかを確認することで、原因の特定に大きく近づけます。


【原因別】具体的な4つの解決策

切り分けによって特定された原因に応じて、適切な解決策を講じます。多くの場合、セキュリティと利便性のバランスを考慮した設定変更が必要になります。

解決策1:証明書ピニングが原因の場合(TLSインスペクションから除外)

証明書ピニングが原因の場合、セキュリティ製品側での根本解決は困難です。現実的な対応策は、そのアプリケーションの通信をTLSインスペクションの対象から除外することです。

ZscalerやPalo Alto Networksなどの主要製品では、宛先ドメイン名、IPアドレスなどで柔軟に除外ポリシーを設定できます。アプリ提供元が公開している通信要件(ホワイトリスト)を参考に、必要最小限の範囲で除外設定を行いましょう。Microsoft 365やGoogle Workspaceなど、多くのベンダーが除外推奨ドメインリストを公開しています。

ただし、除外設定を行うと、その通信経路におけるセキュリティ機器によるマルウェア検知や情報漏洩対策が機能しなくなるため、リスク評価を行い、妥当性を判断してください。

解決策2:クライアント証明書認証が原因の場合(TLSインスペクションから除外)

クライアント証明書認証が原因の場合も、TLSインスペクションからの除外が最もシンプルで確実な解決策となります。認証が必要なサーバーへの通信を復号対象から外すことで、クライアントとサーバー間の直接的な証明書のやり取りを妨げないようにします。

製品によっては、クライアント証明書認証の通信をパススルーする高度な設定も可能ですが、まずは除外設定での対応を検討しましょう。

解決策3:Secure DNS (DoH) が原因の場合(ポリシーで制御)

ネットワーク内のクライアントがDoHを使い、ポリシー制御に問題が生じている場合、組織としてDoHの利用を制御する必要があります。

  • 方法1:クライアントのDoHを無効化 グループポリシー(GPO)やMDMを利用して、OSやブラウザのDoH設定を無効化します。これにより、クライアントは従来のDNSを利用するようになり、FWは宛先を正常に認識できます。
  • 方法2:DoHサーバーへの通信をブロック ファイアウォール側で既知のDoHサーバー(例: 1.1.1.1, 8.8.8.8)へのHTTPS通信をブロックします。これにより、クライアントは代替手段として従来のDNSにフォールバックします。

解決策4:ルート証明書の配布・更新が原因の場合(配布プロセスの見直し)

ルート証明書のインストール漏れが原因だった場合は、組織内のすべての対象デバイスに証明書を配布するプロセスを見直しましょう。MDMやActive Directoryのグループポリシーを活用し、自動配布の仕組みを確立することが望ましいです。

また、ルート証明書には有効期限があります。期限切れが近づいたら、新しい証明書を作成し、事前にクライアントへ再配布する計画を立てておくことが不可欠です。


主要製品におけるTLSインスペクション設定のポイント

ここでは、代表的なSASE/NGFW製品であるZscalerとPalo Alto Networksを例に、設定のポイントを紹介します。

Zscaler (ZIA) の場合

クラウド型セキュアWebゲートウェイのZscalerでは、管理コンソールの「Web Insights」でリアルタイムに近いログを確認でき、ブロック理由や適用ポリシーが一目でわかります。

除外設定は「SSLインスペクションポリシー」で行います。Microsoft 365の「One Click設定」のように、主要SaaSアプリの除外設定を簡単に適用できる機能も便利です。証明書ピニングが疑われるアプリは、このポリシーでインスペクションから除外します。

Palo Alto Networks (NGFW) の場合

Palo Altoの次世代ファイアウォールでは、「復号ポリシー」でTLSインスペクションを制御します。トラフィックログや復号ログで、復号の失敗原因を調査できます。

Palo Altoの強みは、アプリケーションを識別する「App-ID」との連携です。特定のアプリ(例:LINE)を指定して「復号しない(no-decrypt)」というポリシーを柔軟に作成できます。証明書ピニングが原因の場合は、該当のApp-IDに対して復号除外ポリシーを作成するのが一般的な対処法です。


FAQ – TLSインスペクションのトラブルでよくある質問

Q1: なぜブラウザでは問題ないのに、特定のアプリだけ動かなくなるのですか?

  • 主な原因は、アプリが独自の証明書検証ロジック(証明書ピニング)を持っているためです。ブラウザはOSの証明書ストアを信頼しますが、証明書ピニングを実装したアプリは、あらかじめ決められた特定の証明書以外を拒否します。そのため、インスペクションによって置き換えられた証明書を受け入れず、通信を失敗させます。

Q2: TLSインスペクションを除外するとセキュリティリスクは上がりますか?

  • はい、リスクは上がります。 除外された通信は暗号化されたままFWを通過するため、マルウェアの検知や情報漏洩の防御ができません。そのため、除外設定は信頼できる宛先(Microsoft公式サービスなど)に限定し、必要最小限に留めることがベストプラクティスです。必ずリスク評価を行い、妥当性を判断してください。

Q3: Secure DNSを無効化するデメリットはありますか?

  • プライバシー保護の観点ではデメリットと言えます。しかし、企業環境においては、セキュリティポリシーの適用や脅威検知がプライバシー保護よりも優先されることが一般的です。企業ネットワーク管理者がDNSクエリを監視・制御することは、セキュリティを維持するために必要な措置となります。

まとめ

TLSインスペクション環境でアプリが動かなくなる問題は、セキュリティ強化の過程で避けては通れない課題です。その原因は、証明書ピニングやクライアント証明書、Secure DNSとの競合など多岐にわたります。

効果的なトラブルシューティングの鍵は、体系的な切り分けです。

  • 問題範囲の特定
  • ルート証明書の確認
  • 一時的な除外設定による原因の切り分け
  • ログとパケットの分析

このフローを実践することで、根本原因にたどり着くことができます。特定された原因に対しては、多くの場合、対象の通信をインスペクションから「除外設定」することが現実的な解決策となります。ただし、セキュリティと利便性はトレードオフの関係にあるため、除外は必要最小限の範囲に留めることが重要です。

ゼロトラストセキュリティの実現に向けて通信の可視化がますます重要になる中、本記事で紹介した切り分け手順を参考に、問題解決の第一歩を踏み出してみてください。

この記事のまとめ
  • TLSインスペクションによるアプリ動作不良は、証明書、プロトコル、DNS設定が絡む複雑な問題です。
  • トラブルシューティングは、問題範囲の特定からログ分析までの4ステップで体系的に進めることが推奨されます。
  • 主な解決策は、該当するアプリやドメインの通信をTLSインスペクションの対象から除外することです。
  • 除外設定は利便性を向上させる一方で、セキュリティリスクを高めるため、信頼できる通信に限定し、慎重なリスク評価が必要です。
  • この記事の手順を活用し、TLSインスペクション環境でのアプリ問題を効率的に解決し、セキュリティ強化と業務継続の両立を目指しましょう。

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初回公開日:2026年02月24日

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