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共有フォルダ・クラウドストレージのデータ棚卸し完全ガイド:Data-at-Rest対策で情報漏洩リスクを最小化する

更新日:2026年02月20日

ITキャリア

1分でわかるこの記事の要約 データ保管が増加し、アクセス管理が不明瞭な状況は情報漏洩リスクを高めます。 保管中のデータ(Data-at-Rest)のセキュリティ対策として、データ棚卸しが不可欠です。 データ棚卸しは計画か […]

1分でわかるこの記事の要約
  • データ保管が増加し、アクセス管理が不明瞭な状況は情報漏洩リスクを高めます。
  • 保管中のデータ(Data-at-Rest)のセキュリティ対策として、データ棚卸しが不可欠です。
  • データ棚卸しは計画から廃棄まで5ステップで実施し、DLPやCASBで効率化できます。
  • 棚卸しはセキュリティ強化、コスト削減、コンプライアンス遵守に大きく貢献します。
  • 経営層の理解と継続的な運用体制の構築が成功の鍵となります。
共有フォルダやクラウドストレージに保管されたデータが年々増え続け、「誰が、どの情報にアクセスできるのか」を正確に把握できていない状況に、漠然とした不安を感じていませんか。管理が行き届かないデータは、情報漏洩や内部不正の温床となり、企業の信頼を揺るがす重大なセキュリティインシデントに繋がりかねません。
このような保管中のデータ、すなわち「Data-at-Rest」に対するセキュリティ対策は、現代の企業にとって喫緊の課題です。本記事では、この課題を解決するため、実務担当者向けに共有フォルダとクラウドストレージのデータ棚卸し手順を具体的かつ体系的に解説します。DLPやCASBといったソリューションの活用法にも触れながら、貴社のデータ保護体制を一段階引き上げるための実践的なノウハウを提供します。

なぜ今、Data-at-Rest対策とデータ棚卸しが重要なのか?

企業のデジタル資産がファイルサーバーやクラウド上に集約される今、Data-at-Rest対策の重要性はかつてなく高まっています。まずは、その基本的な概念と、なぜデータ棚卸しが不可欠なのかを理解しましょう。


「Data-at-Rest」とは?保管中のデータのセキュリティリスクを理解する

データは、その状態によって大きく3つに分類されます。

  • Data-in-Transit(移動中のデータ):ネットワークを介して転送中のデータ
  • Data-in-Use(使用中のデータ):アプリケーションで処理中のデータ
  • Data-at-Rest(保管中のデータ):サーバーやストレージに保管されているデータ

サイバー攻撃者は、通信を盗聴するよりも、セキュリティ対策が手薄になりがちな保管データを直接狙う方が効率的だと考える傾向があります。Data-at-Restは、企業の機密情報や個人情報が大量かつ長期間にわたって蓄積されているため、攻撃者にとって非常に魅力的なターゲットとなるのです。

したがって、この保管中のデータをいかに保護するかが、情報セキュリティ戦略の根幹を成します。暗号化はもちろんのこと、そもそも誰がそのデータに触れるべきなのかというアクセス制御の最適化が極めて重要になります。

共有フォルダ・クラウドストレージが抱える具体的なリスク

日々の業務で利用される共有フォルダやクラウドストレージ(Microsoft 365, Google Workspaceなど)は、利便性が高い一方で、多くのセキュリティリスクを内包しています。

  • 全社員がアクセスできるフォルダに機密情報が放置されている
  • 退職した従業員のアカウントが削除されず、アクセス権限が残ったままになっている
  • 従業員が会社の許可なく利用する「シャドーIT」に業務データが保存されている

これらの管理不備は、外部からの不正アクセスだけでなく、悪意のある、あるいは過失による内部不正対策の観点からも大きな脆弱性となります。適切なリスク管理とデータガバナンス体制を構築するためには、まず現状を正確に把握する「棚卸し」が第一歩となるのです。

データ棚卸しがもたらす3つのメリット

データ棚卸しの3つのメリット

  • セキュリティ強化:どこに、どのような重要情報(機密情報、個人情報)が存在するのかを可視化し、的を絞ったデータ保護施策を講じることが可能になります。
  • コスト削減:不要なデータを適切に廃棄することで、攻撃対象領域を縮小し、ストレージコストの削減にも繋がります。
  • コンプライアンス遵守:GDPRや個人情報保護法、ISMS (ISO 27001) などで求められる組織的な情報管理体制を構築し、監査に備える上で不可欠なプロセスです。

【実践編】共有フォルダ・クラウドストレージの棚卸し 具体的な5ステップ

それでは、実際にデータ棚卸しを進めるための具体的な手順を5つのステップに分けて解説します。このプロセスを体系的に実行することで、抜け漏れなく効率的に作業を進めることができます。


ステップ1:計画策定と体制構築

何事も最初が肝心です。まずは棚卸しの目的(情報漏洩対策、監査対応など)を明確にし、全社的な協力体制を整えましょう。

次に、棚卸しの対象範囲(特定のファイルサーバー、全社のMicrosoft 365など)を決定します。範囲によって必要なリソースや期間が大きく変わるためです。範囲が決定したら、情報システム部門、各事業部門、法務・コンプライアンス部門などからメンバーを選出し、プロジェクトの責任者と実務担当者をアサインします。具体的な作業項目を洗い出し、現実的なスケジュールを策定することが、プロジェクトを成功に導く鍵となります。

ステップ2:データの可視化と現状把握

計画が固まったら、対象範囲のデータを徹底的に可視化します。手作業での確認は非現実的なため、専用ツールの活用が推奨されます。収集すべき情報は多岐にわたります。

  • 基本情報:フォルダ階層、ファイル数、総容量、ファイル種類、最終更新日、最終アクセス日
  • アクセス権限:どのユーザー/グループが、どのフォルダ/ファイルに、どのような権限(フルコントロール、変更、読み取り等)を持っているか

この段階で、長期間アクセスされていない「死蔵データ」や、不適切に広い権限(例:「Everyone」グループへの許可)が浮き彫りになるはずですログ管理も並行して行い、誰がいつデータにアクセスしたかの実績を把握することも有効です。

ステップ3:データ分類ルールの策定と適用

データの現状が可視化できたら、次はその価値に応じて分類するための「物差し」を作ります。これがデータ分類です。

一般的には、情報の機密性に応じて「極秘」「」「社外秘」「公開」といったレベルを定義します。さらに、個人情報、財務情報、技術情報など、情報の種類に応じたタグ付けルールも策定します。

また、データのライフサイクル管理の観点も取り入れ、保管期間と廃棄ポリシーを明確にします。この分類ルールを既存データに適用する際、手作業では膨大な工数がかかるため、ファイル内容をスキャンしてキーワードを検出し、自動で分類を行うDLP(Data Loss Prevention)のようなソリューションの活用が非常に効果的です。

ステップ4:アクセス権限の見直しと最適化

データ分類が完了したら、その分類レベルに基づいてアクセス権限を最適化します。ここでの基本原則は「最小権限の原則」です。つまり、従業員には業務遂行に必要な最低限の権限のみを付与します。

ステップ2で可視化したアクセス権限リストを元に、過剰な権限や不要な権限を一つひとつ見直します。特に、部署異動後や退職者のアカウントに残っている権限は、セキュリティホールとなりやすいため、確実に削除または修正するプロセスを確立しましょう。アクセス権限の変更は業務に影響するため、現場部門と連携しながら慎重に進めることが求められます。多要素認証(MFA)の導入などを組み合わせることで、より堅牢な体制を築けます。

ステップ5:不要データの整理とデータ廃棄

棚卸しの最終ステップは、不要なデータの整理と安全な廃棄です。長期間アクセスされておらず、かつ法的・業務的な保管義務もないデータは、情報漏洩のリスクを減らし、ストレージコストを削減するために積極的に削除すべきです。

データ廃棄にあたっては、単にファイルを削除するだけでなく、復元不可能な形で完全に消去するプロセスが重要です。また、日常的に取得しているバックアップデータも棚卸しの対象です。バックアップデータ内にも機密情報が含まれているため、その保管期間やアクセス管理も本番データと同様に厳格に行う必要があります。

データ棚卸しを効率化・自動化するソリューション

ここまで解説した棚卸しプロセスは、特にデータ量が多い企業にとっては手作業での実施に限界があります。ここでは、棚卸し作業を効率化し、継続的なデータ保護を実現するための代表的なソリューションを紹介します。


DLP (Data Loss Prevention) の活用法

DLPは、日本語では「情報漏洩対策」と訳され、機密情報が組織の外部へ不正に送信・コピーされることを防ぐソリューションです。ファイルサーバーやクラウドストレージ内のデータをスキャンし、「個人番号」や「クレジットカード番号」といった特定のパターンやキーワードが含まれるファイルを自動的に特定・分類できます。これにより、棚卸しのステップ3(データ分類)を大幅に自動化し、情報漏洩を未然に防ぐことが可能です。

CASB (Cloud Access Security Broker) の役割

CASBは、従業員とクラウドサービスの間に立ち、利用状況を可視化・制御するセキュリティソリューションです。Microsoft 365やAWSなどを横断的に監視し、一貫したポリシーを適用します。特に、情シスが把握していないサービス、すなわち「シャドーIT」の利用状況を検出し、従業員がどのクラウドにどのようなデータをアップロードしているかを監視・ブロックできます。これにより、クラウドストレージにおけるData-at-Restの保護レベルを飛躍的に向上させます。

ゼロトラストの考え方を取り入れたデータ保護

近年注目されている「ゼロトラスト」は、「何も信頼せず、すべてを検証する」という考え方に基づくセキュリティモデルです。Data-at-Rest対策としてのデータ棚卸しとアクセス権の最適化は、このゼロトラストアーキテクチャを実現するための重要な土台となります。誰が、どのデータにアクセスする資格があるのかを明確に定義しておくことで、ゼロトラストの原則に基づいたきめ細やかなアクセス制御が可能になるのです。

データ棚卸しを成功させるための3つの注意点

技術的なステップだけでなく、組織的な取り組みも成功の鍵を握ります。最後に、データ棚卸しプロジェクトを進める上での注意点を3つ挙げます。


1. 経営層の理解と協力を得る データ棚卸しは、一時的なコストと工数がかかります。なぜ必要なのか、どのようなリスクを回避できるのかを具体的に示し、経営層から予算とリソースの協力を得ることが不可欠です。セキュリティはコストではなく、事業継続のための「投資」であるという認識を共有しましょう。

2. 現場の従業員への周知と教育を行う アクセス権限の変更などは、現場の業務に直接影響します。プロジェクトの目的と重要性を丁寧に説明し、従業員一人ひとりがデータ保護の当事者であるという意識を持ってもらうための継続的な教育やトレーニングが求められます。

3. 一度きりで終わらせず、継続的な運用プロセスを構築する データとアクセス権限の状況は日々変化します。年に一度の定期的な棚卸しを計画に組み込むとともに、日々のログ監視体制を構築し、継続的に改善していくサイクル(ISMSなど)を確立することが理想的です。

まとめ

本記事では、Data-at-Rest対策の要である共有フォルダとクラウドストレージのデータ棚卸しについて、その重要性から具体的な5つのステップ、効率化ソリューションまでを網羅的に解説しました。

計画を立て、データを可視化し、分類ルールを定め、アクセス権限を最適化し、不要なデータを廃棄する。この一連のプロセスは、企業の貴重な情報資産を守るための根幹的な活動です。手作業での管理に限界を感じた際には、DLPやCASBといったテクノロジーの活用も有効です。この記事を参考に、まずは自社のデータ管理状況のチェックから始めてみてはいかがでしょうか。


よくある質問

Q1: データ棚卸しの頻度はどのくらいが適切ですか? A1: 企業の規模やデータの増減速度にもよりますが、一般的には年に1回以上の全体的な棚卸しが推奨されます。特にアクセス権限については、従業員の異動や退職が発生する都度、見直すプロセスを定着させることが理想的です。

Q2: 中小企業でもData-at-Rest対策は必要ですか? A2: はい、必要です。サイバー攻撃は企業の規模を問いません。むしろ、セキュリティ対策が手薄になりがちな中小企業が標的になるケースも増えています。利用しているクラウドサービスの設定見直しや、基本的なアクセス権限の整理からでも始めることができ、対策の第一歩としてデータ棚卸しは非常に有効です。

Q3: DLPとCASBの違いは何ですか?どちらを優先すべきですか? A3: DLPは「データそのもの」に焦点を当て、機密情報の漏洩を防ぎます。一方、CASBは「クラウドサービスの利用」に焦点を当て、シャドーITなどを可視化・制御します。ファイルサーバー内の機密情報管理が主な課題であればDLP、複数のクラウドサービスの利用とシャドーIT対策が急務であればCASBが適しているでしょう。近年では、両方の機能を統合したソリューションも登場しています。

この記事のまとめ
  • Data-at-Rest対策の核となるデータ棚卸しは、情報資産保護の基本です。
  • 計画、可視化、分類、アクセス権最適化、不要データ廃棄の5ステップで進めます。
  • DLPやCASBなどのソリューション活用で、効率的かつ継続的な管理が可能です。
  • 自社のデータ管理状況を定期的にチェックし、セキュリティ強化に繋げましょう。
  • 経営層の理解を得て、セキュリティを事業継続のための投資と捉えることが重要です。

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初回公開日:2026年02月20日

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