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NACだけでは不十分?IoT/BYOD時代のセキュリティ対策とゼロトラスト実現への道

更新日:2026年02月18日

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1分でわかるこの記事の要約 ✓ IoT/BYODの普及により、従来のNACだけではセキュリティ対策が不十分であり、新たな脅威への対応が求められている。 ✓ ゼロトラストの考え方とマイクロセグメンテーションを組み合わせるこ […]

1分でわかるこの記事の要約
  • IoT/BYODの普及により、従来のNACだけではセキュリティ対策が不十分であり、新たな脅威への対応が求められている。
  • ゼロトラストの考え方とマイクロセグメンテーションを組み合わせることで、管理できない多様なデバイスも安全にネットワークへ接続可能となる。
  • NACを基盤としてデバイスの可視化・分類を行い、最小権限の原則に基づいた厳格なアクセス制御を動的に適用することが重要である。
  • 製造業や医療機関における具体的な導入事例を通じて、セキュリティ強化と業務利便性の両立が実現できる。
  • スモールスタートで段階的に導入し、継続的なポリシーの見直しと監視体制の確立が成功の鍵となる。
「工場に導入したIoTセンサーが既存のNAC(ネットワークアクセス制御)で認証できず、接続できない」「従業員の私物スマホ(BYOD)を業務活用したいが、情報漏洩が怖い」。このような課題に頭を悩ませる情報システム担当者は少なくありません。従来のNACによる対策だけでは、多様化するデバイスがもたらす新たな脅威に対応しきれないのが現状です。本記事では、NACを基盤としつつ、ゼロトラストの考え方とマイクロセグメンテーションを組み合わせることで、管理できない端末を安全にネットワークへ参加させるための具体的な方法を解説します。

なぜ従来のNACではIoT/BYOD端末の管理が難しいのか?

ネットワークに接続するデバイスを認証・認可し、セキュリティポリシーに準拠しない端末を排除するNACは、エンドポイントセキュリティの要として多くの企業で導入されてきました。しかし、IoT機器やBYOD端末が爆発的に増加する現代において、従来型のNAC運用だけでは限界が見え始めています。その背景には、大きく分けて3つの課題が存在します。

【課題1】多様なデバイスと認証方式のミスマッチ

従来のNACで主流だった認証方式は、IEEE 802.1Xです。これは、ユーザー名/パスワードや電子証明書で端末と利用者を厳密に認証する強固な仕組みですが、すべてのデバイスが対応しているわけではありません。特に、ネットワークカメラ、産業用ロボット、環境センサーといったIoT機器の多くは、802.1X認証に必要なサプリカント機能を持っていません

結果として、これらのデバイスにはMACアドレス認証という代替手段に頼らざるを得なくなります。しかし、MACアドレスは容易に偽装が可能であり、なりすましのリスクが常に付きまといます

一方、BYOD端末は従業員の私物であるため、セキュリティエージェントのインストールを強制することが困難です。これにより、企業側は端末の健全性(OSバージョン、パッチ適用状況など)を正確に把握できず、脆弱性を抱えたデバイスが社内ネットワークに接続されるリスクが生じます。

【課題2】「社内は安全」という境界型防御の限界

従来のネットワークセキュリティは、「境界型防御」という考え方が基本でした。これは、ファイアウォールなどで社内と社外の境界を固め、「一度中に入れば安全」とみなすモデルです。NACも、この入口対策の一環として機能してきました。

しかし、このモデルには大きな落とし穴があります。一度認証をパスして社内ネットワークへの侵入を許すと、そのデバイスは内部の重要サーバーや他のPCへ比較的自由にアクセスできてしまう可能性があるのです。

万が一、マルウェアに感染したIoT機器やBYOD端末が接続された場合、それを踏み台として内部で感染を拡大させる「ラテラルムーブメント(水平移動)」の脅威に晒されます。また、従業員が許可なく私物のツールを利用する「シャドーIT」も、BYOD端末が起点となることが多く、IT資産の正確な管理を妨げ、深刻なリスクとなります。

【課題3】運用負荷の増大と複雑化するポリシー管理

管理すべきデバイスの種類が増えれば増えるほど、アクセスポリシーの管理は複雑化します。正社員のPC、派遣社員のノートPC、ゲスト用のスマホ、工場のセンサーなど、デバイスの役割や利用者の属性に応じて、アクセス範囲を細かく制御する必要があります。

これらのポリシーを手動で設定・更新し続けるのは、情報システム部門にとって膨大な運用負荷となります。また、正当なデバイスが接続できないといったトラブル発生時の調査も、ポリシーが複雑であるほど時間を要し、業務への影響も大きくなってしまいます。


NACを拡張する「ゼロトラスト」という考え方

従来の境界型防御モデルの限界が明らかになる中で、新たなセキュリティの指針として注目されているのが「ゼロトラスト」です。これは、IoTやBYOD端末がもたらす課題に対する有効なアプローチとなり得ます。

ゼロトラストとは?「何も信用しない」を前提としたセキュリティモデル

ゼロトラストは、その名の通り「決して信頼せず、常に検証する(Never Trust, Always Verify)」という原則に基づいたセキュリティの概念です。従来の「社内は安全、外部は危険」という考え方を根本から覆し、社内ネットワークの内外を問わず、すべてのアクセス要求を信用せずに検証します。

ゼロトラストの核となる原則は主に3つです。

  • 明示的な検証(Verify Explicitly):すべてのアクセス要求について、ユーザーID、デバイスの状態、場所、アクセス先のデータなどを多要素で常に検証します。
  • 最小権限の原則(Use Least Privilege Access):ユーザーやデバイスには、業務上必要最小限のアクセス権限のみを付与します。
  • 侵害を前提とする(Assume Breach):攻撃者の侵入は起こり得るものと想定し、万が一侵入されても被害を最小限に食い止める対策(ネットワークのセグメンテーションなど)を講じます。

クラウドやリモートワークの普及により、守るべきデータや働く場所が多様化しました。このような現代のIT環境において、境界型防御はもはや機能不全に陥っており、ゼロトラストへの移行が不可欠とされています。

NACとゼロトラストの関係性

では、ゼロトラストを導入するとNACは不要になるのでしょうか?答えは「いいえ」です。むしろ、NACはゼロトラストアーキテクチャを実現するための重要な構成要素の一つと位置づけられます。

NACの主な役割は、デバイスとユーザーを「認証」し、ポリシーに基づいて接続を「認可」することです。これは、ゼロトラストの第一原則である「明示的な検証」の入り口部分を担います。どのデバイスが、いつ、どこから接続しようとしているのかを識別・可視化するNACの能力は、ゼロトラスト実現の第一歩です。

ただし、「NAC=ゼロトラスト」ではありません。ゼロトラストを実現するには、NACを基盤としつつ、ID管理システム(IdP)、EDR/XDR、SIEM、SASEといった多様なソリューションと連携させ、多層的な防御と継続的な監視を行うアーキテクチャを構築する必要があります。


IoT/BYOD対策の切り札「マイクロセグメンテーション」

ゼロトラストの理念をネットワークレベルで具現化し、特にIoTやBYOD端末のリスクへの有効な対策となるのが「マイクロセグメンテーション」という技術です。

マイクロセグメンテーションとは?ネットワークを細かく分離する技術

マイクロセグメンテーションとは、社内ネットワークを論理的に多数の小さなセグメントに分割し、それぞれのセグメント間の通信を厳格に制御するセキュリティ手法です。

従来もVLANでネットワークを分離する手法はありましたが、設定が煩雑で柔軟性に欠けるという課題がありました。一方、マイクロセグメンテーションは、ソフトウェアベースでより細かな単位(サーバー1台ごと、アプリごとなど)でセグメントを作成し、動的なポリシーを適用できるのが特徴です。これにより、万が一あるセグメントが侵害されても、被害をそのセグメント内に封じ込め、ラテラルムーブメントを効果的に阻止できます。

NACとマイクロセグメンテーションの連携による実践的な対策

NACマイクロセグメンテーションを連携させることで、管理が難しいIoT/BYOD端末に、具体的かつ効果的なセキュリティ対策を講じることが可能になります。導入は、以下の3ステップで進めるのが一般的です。

Step1. デバイスの可視化と分類

まず、自社のネットワークに接続されている全デバイスを正確に把握します。多くのNACソリューションは、通信を監視し、接続デバイスを自動で検出・可視化する機能を備えています。検出されたデバイスを、MACアドレス情報やOSの種類などから自動で識別(プロファイリング)し、「社用PC」「BYOD」「IoT-カメラ」といったグループに分類します。

Step2. 最小権限に基づくセグメント設計

次に、分類したデバイスグループごとに、マイクロセグメンテーションで論理的な「制限ネットワーク」を設計します。ここでのポイントは、業務上必要最小限の通信のみを許可する「最小権限の原則」を適用することです。

ポリシー設計の例

  • IoT機器用セグメント: 特定の監視サーバーへの通信のみを許可。インターネットや他の社内セグメントへの通信はすべて禁止する。
  • BYOD端末用セグメント: 社内ファイルサーバーへのアクセスはブロック。業務で利用する特定のクラウドサービスと、一般的なインターネットアクセスは許可する。

このように、デバイスの特性とリスクに応じてアクセス範囲を厳密に制限し、情報漏洩などのリスクを大幅に低減できます。

Step3. ポリシーの動的な適用と自動化

最後に、NACがデバイスを識別した際に、設計したポリシーに基づいて自動的に適切なセグメントへ割り当てる仕組みを構築します。例えば、従業員の私物スマホが社内Wi-Fiに接続されると、NACがそれを「BYOD」と識別し、自動的に「BYOD端末用セグメント」のポリシーを適用します。この動的な制御により、管理者の運用負荷を大幅に削減できます。


マイクロセグメンテーション導入の具体的な事例と注意点

NACマイクロセグメンテーションの組み合わせは、様々な業種でセキュリティ課題の解決に貢献しています。

事例1:製造業の工場におけるIoTセキュリティ対策

  • 詳細: ある製造業では、工場内の多数のセンサーや産業用制御システム(OT機器)が抱える脆弱性が課題でした。そこで、NACで全IoT/OT機器を可視化・識別し、マイクロセグメンテーションで事務系ITネットワークから完全に分離した「OT専用セグメント」に隔離。このセグメントからは生産管理サーバーなど必須の通信先以外へのアクセスを遮断し、工場の安定稼働とセキュリティ強化を両立させました。

事例2:医療機関におけるBYODと医療機器(IoMT)の管理

  • 詳細: ある医療機関では、医師のBYODやネットワーク接続された医療機器(IoMT)が混在し、電子カルテシステムへの不正アクセスが懸念されていました。NACとマイクロセグメンテーションを導入し、利用者の役職とデバイスの種類に応じてアクセス権限を動的に制御。「医師がBYODで接続した場合は電子カルテの参照のみ許可」といった細かいポリシーを適用し、厳格なデータ保護と業務の利便性を両立したセキュアな環境を構築しました。

導入・運用を成功させる3つの注意点

  1. スモールスタートの重要性:最初から全社を対象にせず、工場や研究開発部門などリスクの高いエリアや、IoT機器などの特定のデバイス種別に絞って導入し、段階的に範囲を拡大するのが成功の鍵です。
  2. 綿密なポリシー設計:導入前に現状の通信を十分に可視化し、業務に必要な通信を洗い出すことが不可欠です。関連部署と緊密に連携し、業務に影響が出ないよう慎重にポリシーを設計します。
  3. 継続的な監視と見直し:ネットワーク環境の変化に合わせ、アクセスポリシーも継続的に見直す必要があります。定期的な棚卸しと最適化を行う運用体制を確立することが重要です。

まとめ:次世代のネットワークセキュリティへの移行

IoTやBYODの普及は、従来の境界型防御を前提としたセキュリティに深刻な課題を突きつけています。この課題を解決する鍵は、NACをゼロトラスト戦略の中に位置づけ、マイクロセグメンテーションと組み合わせることにあります。

  1. 可視化・分類:NACで全デバイスを把握・グループ分けする
  2. アクセス制御:マイクロセグメンテーションで作成した制限ネットワークに動的に割り当て、最小権限の原則を適用する

このプロセスを通じて、管理外のデバイスであってもリスクを許容可能なレベルにコントロールし、安全にネットワークを利用させることが可能になります。これは、脅威を入口で防ぐだけの時代から、侵入を前提として被害を最小化する、次世代のネットワークセキュリティへの移行を意味します。まずは自社の管理が曖昧になっているIoT/BYOD端末の実態把握から始めてみてはいかがでしょうか。

よくある質問(FAQ)

Q1: ゼロトラストとNACはどちらを先に導入すべきですか?

A: 多くの企業では既にNACやそれに類するアクセス制御が導入されています。そのため、既存のNACを基盤として、ゼロトラストの考え方を取り入れ、マイクロセグメンテーションなどを段階的に導入するのが現実的です。ゼロから始めるなら、まずはネットワーク上のデバイスを把握するための「可視化」から始めることをお勧めします。

Q2: マイクロセグメンテーションは物理的なネットワーク構成の変更が必要ですか?

A: 最新のソリューションの多くは、ソフトウェアベースで論理的にネットワークを分割するため、物理的な配線変更は不要です。既存のスイッチやファイアウォールと連携し、大規模なインフラ刷新なしに導入を進めることが可能です。

Q3: 802.1X認証が使えないIoT機器は、どうやって安全に接続すればよいですか?

A: MACアドレス認証を利用する場合でも、セキュリティは高められます。NACのプロファイリング機能でデバイスを特定し、マイクロセグメンテーションでそのデバイス専用の隔離セグメントへ自動接続させます。通信先を業務必須のサーバーのみに限定する「隔離」と「通信制限」により、万が一デバイスが乗っ取られても被害の拡大を防ぎ、リスクを最小限に抑えられます。

この記事のまとめ
  • IoT/BYODの普及は従来のNACだけでは対応しきれない新たなセキュリティ課題を提起しています。
  • ゼロトラスト」の考え方を基盤とし、すべてのアクセスを検証するセキュリティモデルへの移行が不可欠です。
  • マイクロセグメンテーション」は、ネットワークを細分化し、最小権限で通信を制御することで、内部拡散のリスクを大幅に低減します。
  • NACによるデバイス可視化とマイクロセグメンテーションの連携が、IoT/BYOD時代の効果的なセキュリティ対策の鍵となります。
  • 自社のリスクアセスメントを行い、段階的な導入と継続的な運用改善に取り組むことが、次世代のネットワークセキュリティ実現への道筋です。

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初回公開日:2026年02月18日

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