【完全版】端末管理 設計書テンプレート|IT資産のライフサイクルを一元管理
1分でわかるこの記事の要約 端末管理の属人化や非効率は、情報漏洩などの重大なセキュリティリスクに繋がります。 デバイスの...
更新日:2026年02月13日
1分でわかるこの記事の要約 企業のAppleデバイス増加に伴いABM/ADE運用は重要ですが、購入経路の複雑化がガバナンス上の課題です。 本記事では、複数の購入経路を持つ企業が統制の取れたガバナンスを確立するためのモデル […]
目次
企業のDX推進に伴い、業務で利用するiPhoneやiPad、MacといったAppleデバイスは増加の一途をたどっています。Apple Business Manager (ABM) や Automated Device Enrollment (ADE) は、これらのデバイスを効率的に導入・展開するための強力なプログラムです。しかし、部門ごとに購入経路が異なっていたり、申請フローが統一されていなかったりすると、せっかくの仕組みも効果を半減させてしまいます。
本記事では、複数の購入経路を持つ企業がABM/ADEを効果的に活用し、デバイス管理のガバナンスを確立するための具体的な統制モデルとベストプラクティスを徹底的に解説します。
まず、なぜ今、企業においてデバイス管理のガバナンス、すなわち「統制」が重要視されているのか、その背景と課題を整理します。
現代のビジネス環境は、デバイス管理における厳格なガバナンスを不可欠なものにしています。その最大の理由は、リモートワークやハイブリッドワークの常態化です。オフィス外で業務を行う従業員が増えたことで、企業が管理すべきデバイスは社内ネットワークの壁を越えて分散しました。これにより、情報漏洩やマルウェア感染といったセキュリティリスクが飛躍的に増大しています。
また、個人情報保護法やGDPRなど、国内外の法規制は年々厳格化しており、企業には高度なコンプライアンス遵守が求められます。万が一、管理不備のデバイスから情報漏洩が発生した場合、企業は法的な罰則だけでなく、社会的な信用の失墜という重大なリスクを負うことになります。適切なデバイス管理ポリシーを策定し、それを徹底させる統制モデルは、こうしたリスクから企業を守るための生命線と言えるでしょう。
多くの企業、特に規模の大きい組織では、デバイスの購入経路が複数存在することが少なくありません。「本社IT部門が一括購入する」「各事業部が個別に予算を組んで購入する」「プロジェクト単位で特定の販売代理店から調達する」といったケースが混在し、管理の複雑化を招いています。
このような状況は、ガバナンスにおいて深刻な課題を生み出します。まず、IT部門が全社のデバイスを正確に把握できなくなり、「資産インベントリ」に漏れが生じます。誰が、いつ、どこで、どのデバイスを利用しているか可視化できなければ、適切な資産管理は不可能です。
さらに、購入経路が異なると、デバイスの初期設定やセキュリティ構成もバラバラになりがちです。**MDM(モバイルデバイス管理)**へのエンロールメントが徹底されず、企業のセキュリティポリシーが適用されていない「野良デバイス」が生まれる温床となります。これは、企業のセキュリティ体制における重大な穴となり、サイバー攻撃の格好の標的になりかねません。購入経路の標準化は、ガバナンス確立の第一歩なのです。
それでは、複数の購入経路という現実的な課題を抱える企業は、どのようにして統制の取れたガバナンスモデルを構築すればよいのでしょうか。ここでは、4つのステップに分けて具体的な構築プロセスを解説します。
ガバナンスモデル構築の最初のステップは、現状を正確に把握することです。まず、社内に存在するすべての購入経路を洗い出します。IT部門、総務部門、各事業部など、どこが、どのようなフローで、どのベンダーからデバイスを調達しているのかを徹底的に調査し、リストアップします。
次に、現在利用されているすべての企業所有デバイスについて、正確な「資産インベントリ」を作成します。機種名、シリアル番号、使用者、所属部署、利用開始日、そしてどの購入経路で調達されたかといった情報を一元的に管理する台帳です。この作業は手作業では限界があるため、MDMやUEM(統合エンドポイント管理)ソリューションを導入し、ネットワークに接続されたデバイス情報を自動的に収集・可視化することが極めて有効です。この可視化によって、管理下にないデバイスや、把握できていなかった購入経路が明らかになり、統制を効かせるべき範囲が明確になります。
現状把握ができたら、次に行うのは全社統一の「デバイス管理ポリシー」の策定です。これは、デバイスのライフサイクル全般にわたるルールを明文化したものであり、ガバナンスの根幹をなすものです。ポリシーには、少なくとも以下の項目を盛り込むべきです。
デバイス管理ポリシーに盛り込むべき項目
このポリシーを策定する際には、IT部門だけでなく、法務、人事、そして各事業部門の代表者も交え、実務に即した実効性のある内容にすることが重要です。
策定したポリシーに基づき、乱立していた購入経路を整理・統合します。理想は、IT部門が指定する承認済みベンダーに購入経路を一本化することです。これにより、購入価格の交渉力が向上し、コスト削減にも繋がります。また、購入時にデバイスのシリアル番号をABMに自動登録してくれるベンダーを選定することが極めて重要です。
このプロセスと連携させ、デバイスのエンロールメント(MDMへの登録)を自動化します。**ADE(Automated Device Enrollment)**を活用すれば、ユーザーがデバイスの電源を入れ、Wi-Fiに接続するだけで、自動的にMDMサーバーに登録され、事前に定義された構成プロファイルやセキュリティポリシー、必須アプリが展開されます。この「ゼロタッチ導入」により、IT部門のキッティング作業負荷が大幅に削減されるだけでなく、すべてのデバイスに漏れなく企業の管理設定を適用できるため、ガバナンスが飛躍的に向上します。手動でのセットアップやエンロールメントプロセスを完全に排除することが、統制を徹底する鍵となります。
強固なガバナンス体制を運用するためには、関係者それぞれの役割と責任を明確にする必要があります。ここで有効なのが「RACIチャート」というフレームワークです。RACIは、実行責任者(Responsible)、説明責任者(Accountable)、協業先(Consulted)、**報告先(Informed)**の頭文字を取ったもので、各タスクに対して誰がどの役割を担うのかを可視化します。
例えば、「デバイス購入申請の承認」というタスクでは、説明責任者(A)はIT部門長、実行責任者(R)は申請者の所属部署長、協業先(C)はIT資産管理担当者、報告先(I)は経理部門、といった具合に定義します。このように、デバイスの調達、設定、運用、廃棄といったライフサイクル全体の各プロセスにおいて、IT部門、事業部門、利用者の役割分担を明確にすることで、責任の所在が曖昧になることを防ぎ、ワークフローが円滑に流れるようになります。
統制モデルとポリシーを策定したら、それを日々の業務に落とし込むための具体的な運用ワークフローを設計します。ここでは、デバイスのライフサイクルに沿って、重要なワークフローを解説します。
標準化されたワークフローは、ガバナンスの基盤です。まず、従業員は社内システムを通じてデバイスの購入申請を行います。申請が所属長およびIT部門によって承認されると、承認済みのベンダーへ自動的に発注が行われます。ベンダーは出荷時にデバイスのシリアル番号を企業のABMに登録。デバイスが利用者に届き、電源を入れると、ADEプログラムが起動し、自動的に企業のMDMサーバーへと接続(エンロールメント)されます。MDMは、そのデバイスに割り当てられた構成プロファイルやポリシー、業務に必要なアプリケーションを自動で展開・設定します。この一連のフローが自動化されることで、人的ミスが介在する余地がなくなり、導入時点から統制の取れた状態を実現できます。
デバイスの導入はゴールではなく、スタートです。運用中の継続的な管理こそがガバナンスの核心部分です。MDM/UEMソリューションは、この運用管理において中心的な役割を果たします。まず、OSのバージョンやインストールされているアプリ、適用されているセキュリティポリシーといったデバイスのインベントリ情報を定期的に収集し、常に最新の状態を可視化します。
ポリシーに違反するデバイス(例:パスコードが設定されていない、禁止アプリがインストールされている)を検知した際には、管理者にアラートを通知したり、ネットワークアクセスを自動的に遮断したりする機能が有効です。また、OSのアップデート管理も重要です。脆弱性を放置しないよう、アップデートを促したり、特定のバージョンへの統一を強制したりすることで、セキュリティレベルを維持します。このように、MDM/UEMを駆使して継続的にデバイスの状態を監視し、コンプライアンスを維持する運用ワークフローを確立することが不可欠です。
デバイスの故障、紛失、盗難は避けられないインシデントです。重要なのは、インシデント発生時に迅速かつ適切に対応するためのワークフローを事前に定義し、周知徹底しておくことです。利用者は、紛失や盗難に気づいたら、直ちに定められた窓口(通常はITヘルプデスク)に報告しなければなりません。報告を受けたIT管理者は、MDMを通じて即座にデバイスをリモートでロックし、第三者による不正操作を防ぎます。状況に応じて、デバイス内部の企業データを遠隔で消去(リモートワイプ)する判断も必要です。この一連の対応フローが標準化されていれば、情報漏洩のリスクを最小限に食い止めることができます。
デバイスのライフサイクル管理は、導入から廃棄まで一貫して行われるべきです。年に1〜2回、定期的な資産棚卸し(監査)を実施し、資産インベントリの情報と実際のデバイスの状況が一致しているかを確認します。この監査を通じて、所在不明のデバイスや、利用実態のない遊休資産を洗い出すことができます。
デバイスが故障やリース期間満了などで廃棄対象となった場合も、厳格なプロセスが必要です。MDMからデバイスの管理情報を削除し、ABMからも登録を解除します。そして、信頼できる専門業者に依頼し、デバイス内のデータを物理的または論理的に完全に消去した上で廃棄します。この廃棄プロセスを徹底することで、廃棄済みデバイスからの情報漏洩というリスクを確実に防ぐことができます。
最後に、構築したガバナンスモデルをさらに強固なものにするためのベストプラクティスと、それを支えるツールの活用について解説します。
今日の企業では、iPhoneやMacだけでなく、Windows PCやAndroid端末など、多様なOSのデバイスが混在しています。MDMは主にモバイルデバイスを対象としますが、UEM(Unified Endpoint Management)は、これらのあらゆるエンドポイントを単一のコンソールから一元的に管理できるソリューションです。UEMを導入することで、OSを問わず統一されたセキュリティポリシーを適用し、資産インベントリを一元化できるため、管理のサイロ化を防ぎ、より包括的で強力なガバナンスを実現できます。
一度策定したポリシーやワークフローも、ビジネス環境やテクノロジーの変化に合わせて見直す必要があります。形骸化させないためには、定期的な内部監査が不可欠です。監査を通じて、ポリシーが遵守されているか、運用ワークフローに問題はないかを確認し、改善点を発見します。例えば、新しい種類のセキュリティ脅威が登場すれば、それに対応するためにポリシーを更新する必要があります。このように、PDCAサイクルを回し続けることで、ガバナンス体制を常に最適化していくことが重要です。
どんなに優れた仕組みやツールを導入しても、それを利用する従業員の理解と協力がなければガバナンスは機能しません。なぜデバイス管理の統制が必要なのか、その目的とメリットを丁寧に説明し、従業員のセキュリティ意識を高めるための定期的な教育やトレーニングを実施することが大切です。ポリシーの変更があった際には速やかに周知し、困ったときに相談できる窓口を明確にしておくなど、継続的なコミュニケーションを通じて、全社的なセキュリティカルチャーを醸成していくことが、真に実効性のあるガバナンスへの道です。
複数の購入経路が存在する企業において、ABM/ADEを活用したデバイス管理のガバナンスを確立することは、もはや避けては通れない経営課題です。本記事で解説したように、まずは現状を可視化し、全社統一のポリシーを策定することから始めます。そして、購入経路とエンロールメントプロセスを標準化・自動化し、デバイスのライフサイクル全体をカバーする具体的な運用ワークフローを設計、定着させることが成功の鍵となります。
このプロセスは一朝一夕に実現できるものではありません。しかし、UEMのような適切なツールを活用し、継続的な見直しを行うことで、セキュリティと効率性を両立した、強固なデバイス管理体制を構築することは十分に可能です。まずは自社のデバイス管理の現状把握から着手し、統制の取れた未来への第一歩を踏み出しましょう。
A1: BYODを許可する場合、ガバナンスはさらに重要になります。MDM/UEMソリューションの中には、デバイス内を「仕事領域」と「プライベート領域」に分離するコンテナ化技術を持つものがあります。これにより、企業は仕事領域内のデータやアプリのみを管理・保護し、従業員のプライバシーを守りながらセキュリティを確保できます。BYODを許可する際は、専用のポリシーを策定し、この技術の利用を必須とすることが推奨されます。
A2: はい、必要です。組織の規模に関わらず、情報漏洩やサイバー攻撃のリスクは存在します。むしろ、専任のIT担当者が少ない小規模な組織ほど、ADEやMDMを活用した自動化・標準化の恩恵は大きいと言えます。本記事で紹介したステップを、自社の規模や実情に合わせて簡略化・最適化して適用することが重要です。
A3: ABMはAppleが提供する、企業がAppleデバイスをまとめて購入し、所有権を管理するためのポータルサイトです。ADEはABMの機能の一部で、デバイスの初期設定時に自動でMDMに登録させる仕組みです。一方、MDM/UEMは、ABM/ADEと連携して、登録されたデバイスに対して具体的な設定の配信、アプリの管理、セキュリティポリシーの適用など、日々の運用管理を行うためのソフトウェア(ソリューション)です。両者は車輪の両輪のような関係で、組み合わせて使うことで真価を発揮します。
記載されている内容は2026年02月13日時点のものです。現在の情報と異なる可能性がありますので、ご了承ください。また、記事に記載されている情報は自己責任でご活用いただき、本記事の内容に関する事項については、専門家等に相談するようにしてください。
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