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UEM移行が失敗する本当の理由:揉める論点を潰して“組織変革”として成功させる4ステップ

更新日:2026年02月13日

ITキャリア

1分でわかるこの記事の要約 UEM移行は単なるツール刷新ではなく、企業の生産性とセキュリティを両立させる「デジタル変革」プロジェクトです。 失敗の主な原因は、目的の不明確化、関係者巻き込み不足、既存MDMからの移行計画不 […]

1分でわかるこの記事の要約
  • UEM移行は単なるツール刷新ではなく、企業の生産性とセキュリティを両立させる「デジタル変革」プロジェクトです。
  • 失敗の主な原因は、目的の不明確化、関係者巻き込み不足、既存MDMからの移行計画不備、過剰な機能要求、セキュリティと利便性のバランス欠如です。
  • プロジェクトでは、管理対象デバイス、運用責任、ポリシー制限、ROI評価、製品選定で意見が対立しがちですが、これらには明確な解決策が存在します。
  • 成功には、現状把握、関係者を巻き込んだ明確なゴール設定、PoCによるスモールスタート、信頼できるパートナー選定の4ステップが不可欠です。
  • 焦らず計画的に進め、組織的な課題を克服すればUEM移行は必ず成功し、最適なエンドポイント管理を実現できます。

リモートワークや多様な働き方が定着し、企業が管理すべきデバイスはPCだけでなく、スマートフォンやタブレットなど多岐にわたっています。既存のMDM(モバイルデバイス管理)やEMM(エンタープライズモビリティ管理)では、増え続けるエンドポイントの管理が追いつかず、セキュリティリスクや運用負荷の増大といった課題に直面しているIT部門も多いのではないでしょうか。

その解決策として注目されるのが、UEM(Unified Endpoint Management:統合エンドポイント管理)です。しかし、UEMへの移行は単なるツール刷新ではなく、計画を誤るとプロジェクトが頓挫したり、導入後に新たな問題が発生したりするケースも少なくありません。

本記事では、MDM/EMMからUEMへの移行プロジェクトについて、以下の点を詳しく解説します。

  • UEM移行が失敗する典型的な条件
  • プロジェクト進行中に社内で揉めがちな論点と解決策
  • 移行を成功に導くための具体的な4ステップ

そもそもUEMとは?MDM/EMMとの違いを再確認

UEM移行の議論を始める前に、まずはUEM、EMM、MDMのそれぞれの役割と関係性を正確に理解しておくことが重要です。これらのツールは、企業のデバイス管理の歴史と共に進化してきました。

MDM(Mobile Device Management)

  • 概要: スマートフォンやタブレットなどモバイルデバイスの管理に特化したソリューションです。
  • 主な機能: デバイスの紛失・盗難対策として、リモートロックやデータ消去(リモートワイプ)、パスコードポリシーの強制といった機能を提供します。
  • 目的: iOSやAndroidといったモバイルOSの基本的なセキュリティ設定を遠隔から制御することが主な目的でした。

EMM(Enterprise Mobility Management)

  • 概要: MDMの機能に加え、MAM(モバイルアプリケーション管理)やMCM(モバイルコンテンツ管理)の機能が統合されたものです。
  • 特徴: デバイス単位だけでなく、業務アプリの配布や設定、セキュアなコンテナでのデータ保護など、より詳細な管理が可能になりました。
  • 背景: BYOD(私物端末の業務利用)の普及に伴い、個人のデータ領域と会社のデータ領域を分離して管理する必要性が高まったことが、EMMの発展を後押ししました。

UEM(Unified Endpoint Management)

  • 概要: EMMの機能をさらに拡張し、モバイルデバイス(iOS, Android)に加えて、PC(Windows, Mac)やIoTデバイスまで、社内のあらゆるエンドポイントを単一のコンソールから一元管理することを目指すソリューションです。
  • 目的: リモートワーク環境下でOSを問わず統一されたセキュリティポリシーを適用し、効率的な運用を実現するためにUEMの必要性が高まっています。
  • 代表製品: Microsoft IntuneWorkspace ONEJamfといった製品が代表的です。

なぜUEM移行は失敗するのか?ありがちな5つの失敗条件

UEMは多くのメリットをもたらしますが、移行プロジェクトは必ずしも成功するとは限りません。ここでは、MDM/EMMからの統合プロジェクトが失敗に陥る典型的な条件を5つ紹介します。

失敗条件1:目的の不明確化とゴール設定の曖昧さ

UEM移行が失敗する最大の原因は、「何のためにUEMを導入するのか」という目的が明確でないことです。「他社が導入しているから」といった理由で開始すると、具体的なゴールが設定できず、関係者の足並みが揃いません。

「運用を効率化したい」という課題に対し、「どの程度効率化するのか」「効率化で生まれた時間を何に使うのか」といった具体的な目標(KPI)がなければ、導入効果を測定できず、経営層から「コストをかけた意味があったのか?」と追及されることになります。生産性向上、セキュリティ強化、運用コスト削減など、自社の課題に即した明確なゴール設定が不可欠です。

失敗条件2:IT部門の独断専行と現場部門の巻き込み不足

UEMの導入は、全従業員の働き方に影響を与えます。にもかかわらず、IT部門だけでプロジェクトを進めてしまうと、現場の反発を招きがちです。

例えば、セキュリティを重視するあまり、アプリの利用を過度に制限したり、プライバシーに配慮しない厳しいポリシーを設定したりすると、従業員の生産性は著しく低下します。特にBYODではプライバシーへの配慮が極めて重要です。

プロジェクトの初期段階から、人事・総務部門や現場部門の代表者を巻き込み、ユーザーの利便性を無視しないシステムを構築するプロセスが欠かせません。さもなければ、抜け道であるシャドーITを探される原因となります。

失敗条件3:既存MDMからの移行計画の不備

現在利用しているMDM/EMMから新しいUEMツールへ切り替えるプロセスは、想像以上に複雑です。既存のデバイス情報、ポリシー、アプリといったデータを、いかにスムーズに新環境へ移行させるか、周到な計画が求められます

特に、管理対象が数千台規模の大企業では、一斉移行は現実的ではありません。「どの部署から移行するか」「どのOSを優先するか」といった段階的な移行シナリオを策定し、十分なテスト期間を設ける必要があります。ユーザーへの周知やトレーニングが不十分だと、ヘルプデスクがパンクする事態にもなりかねません。

失敗条件4:過剰な機能要求とコストの見積もりミス

UEM製品は多機能ですが、すべての機能を使いこなせる企業は稀です。製品選定時に各部門からの要望をすべて鵜呑みにすると、高機能で高価なライセンスを購入してしまう「オーバースペック」状態に陥ります。

これにより、初期導入コストだけでなく、運用負荷も増大し、TCO(総所有コスト)が想定を上回ることがあります。「あったら便利」ではなく「なくてはならない」必須機能を明確に定義し、自社の規模やスキルに見合った製品を選定する視点が重要です。スモールスタートも検討しましょう。

失敗条件5:セキュリティと利便性のバランスの欠如

UEM導入の大きな目的はセキュリティ強化ですが、そのバランスを見誤ると失敗に繋がります。近年注目される「ゼロトラスト」の考え方に基づき、性悪説でアクセスを厳格に制限しすぎると、ユーザーは大きなストレスを感じます。

結果として、利便性の高い非公式ツールを勝手に利用する「シャドーIT」が横行し、かえって情報漏洩リスクを高める本末転倒な事態を招きかねません。企業のコンプライアンス要件を満たしつつも、従業員の生産性を損なわない現実的な落としどころを探る必要があります。


UEM統合プロジェクトで揉めがちな5つの論点と解決策

UEM移行プロジェクトでは、技術的な問題だけでなく、組織内の立場の違いから意見が対立し、議論が紛糾することがよくあります。ここでは、特に揉めがちな論点と解決の方向性を示します。

論点1:「どのデバイスまで管理対象とするか?」

UEMはPCからモバイルまで統合管理できるのが強みですが、これが逆に組織内の対立を生むことがあります。従来、クライアントPCは情シス部、スマホは総務部など、管轄部署が分かれている企業では、管理主体の一本化に抵抗が生まれるケースがあります。

また、BYODデバイスをどこまで管理対象とするかも大きな論点です。「業務データ領域のみ管理する」「紛失時のデータ消去権限のみ許可する」など、従業員のプライバシーに配慮した合意形成が必要です。

解決策: UEM導入を機に全社的なデバイス管理ポリシーを再定義し、各部署の役割を明確に分担することが重要です。

論点2:「誰が運用責任を負うのか?」

IT部門内でも、従来の縦割り構造が統合運用を妨げる要因になります。サーバー担当、ネットワーク担当など、専門領域が異なる担当者にとって、OSを横断して管理するUEMの運用は、新たなスキル習得が必要となり、責任の押し付け合いに繋がることがあります。

解決策: プロジェクト開始時にUEM運用のための専門チームを組成するか、明確な役割分担(RACI図など)を定義することが有効です。ベンダーが提供する運用トレーニングの活用も欠かせません。

論点3:「どこまでポリシーで制限すべきか?」

セキュリティ部門は情報漏洩リスクを最小化するため、可能な限り厳しい制限をかけようとします。一方、現場部門は業務効率を重視するため、柔軟な利用を求めます。

解決策: リスクベースのアプローチが有効です。すべてのユーザーに一律の厳しいポリシーを適用するのではなく、役職や業務内容に応じて権限レベルを変える、重要なデータを扱う場合にのみ多要素認証を要求するなど、リスクの高い箇所に重点を置いて対策を講じ、セキュリティと利便性の両立を目指します。

論点4:「移行コストとROIをどう評価するか?」

IT部門はセキュリティ強化や運用効率化といった定性的な効果を主張しますが、経営層は「具体的にいくらコスト削減に繋がるのか?」といった定量的な投資対効果(ROI)を求めます。

解決策: 「デバイスのキッティング作業時間〇〇%削減により、人件費換算で年間〇〇万円のコスト削減」「ヘルプデスクへの問い合わせ件数〇〇%削減」など、具体的な数値目標を提示することが重要です。既存MDMの更新コストと比較し、UEMのTCOの優位性を示すことも有効です。

論点5:「どのUEM製品が最適か?」

市場には様々なUEM製品が存在します。Microsoft 365利用企業ならMicrosoft Intune、Apple製品中心ならJamfなど、支持する製品が分かれ、ベンダー選定が難航することがあります。

解決策: 事前に評価基準を明確に定めておくことが重要です。「マルチOS対応」「既存システムとの連携性」「サポート体制」「導入実績」といった客観的な評価項目リストを作成し、各製品をスコアリングして比較検討することで、論理的な意思決定が可能になります。


失敗を回避しUEM移行を成功に導く4つのステップ

これまで見てきた失敗条件や論点を乗り越え、UEM移行を成功させるためには、計画的かつ段階的なアプローチが不可欠です。

ステップ1:現状把握と課題の可視化(As-Is分析)

まず、自社が現在管理しているエンドポイントの現状(デバイスの種類、OS、アプリ、管理方法)を正確に把握し、台帳にまとめます。同時に、「キッティングに時間がかかる」「OSアップデート適用率が低い」など、現在のデバイス管理における課題を関係者からヒアリングし、UEMで何を解決すべきかを可視化します。

ステップ2:関係者を巻き込んだ明確なゴール設定(To-Be設計)

次に、UEM導入によって実現したい理想の姿(To-Be)を定義します。このプロセスには、IT部門だけでなく、セキュリティ、人事、総務、事業部門の代表者を必ず参加させてください。「3年後には、全社員がどんなデバイスからでも安全に業務ができる環境を構築する」「デバイス管理の運用工数を50%削減する」といった、全員が共感できるビジョンと具体的な目標を設定します。

ステップ3:PoC(概念実証)によるスモールスタート

いきなり全社展開するのではなく、まずは特定の部署や少人数のグループを対象にPoC(Proof of Concept:概念実証)を実施します。PoCを通じて、選定したUEM製品が技術要件を満たすか、実際の運用フローに問題はないか、ユーザーの使い勝手はどうか、といった点を検証します。ここで問題点を洗い出し改善することで、本格展開後の手戻りを防げます

ステップ4:信頼できるベンダー・パートナーの選定

UEMの導入・運用には高度な専門知識が要求されるため、自社だけで完結させるのは困難な場合が多いです。製品の機能比較だけでなく、自社の業界での導入実績が豊富か、移行計画の策定から運用後のサポートまで一貫して支援してくれるか、といった観点で信頼できるパートナーを選定することが成功の確率を大きく高めます。


よくある質問(FAQ)

Q1: 既存のMDMを残したままUEMを追加導入することは可能ですか?

  • A1: 技術的には可能ですが、推奨されません。1台のデバイスに複数の管理プロファイルが存在すると、ポリシーの競合や意図しない動作を引き起こす可能性があります。UEMのメリットである「統合管理」を実現するためにも、最終的には既存のMDMから完全に移行し、管理ツールを一本化することを目指すべきです

Q2: UEM移行にかかる期間の目安はどれくらいですか?

  • A2: 企業の規模やデバイスの台数によって大きく異なります。一般的に、中小企業(数十〜数百台)で3ヶ月〜6ヶ月程度、大企業(数千台以上)では計画から完了まで1年以上かかることも珍しくありません。重要なのは、焦らずに各ステップを確実に実行することです。

Q3: 中小企業でもUEMを導入するメリットはありますか?

  • A3: はい、あります。中小企業はIT担当者が少ないケースが多く、一人で多様なデバイスを管理していることも少なくありません。UEMを導入することで、デバイス管理業務を大幅に効率化し、担当者がより戦略的な業務に時間を使えるようになります。クラウドベースのUEM製品なら初期投資を抑えて導入できます。

まとめ:UEM移行は単なるツール刷新ではなく「組織変革」プロジェクト

MDM/EMMからUEMへの移行は、単なる管理ツールの入れ替え作業ではありません。それは、多様化するワークスタイルに対応し、企業の生産性とセキュリティを両立させるための「デジタル変革」プロジェクトそのものです。

移行が失敗する条件の多くは、技術的な問題よりも、目的の曖昧さ、関係者の巻き込み不足といった組織的な課題に起因します。逆に言えば、プロジェクト初期に明確なビジョンを共有し、各部門と丁寧に合意形成を行い、周到な計画を実行すれば、UEM移行は必ず成功します。

本記事で解説した「失敗する条件」や「揉めがちな論点」を参考に、まずは自社のデバイス管理の現状を洗い出し、どこに課題があるのかを可視化することから始めてみてはいかがでしょうか。その上で、信頼できるパートナーに相談し、自社にとって最適なエンドポイント管理の実現を目指してください。

この記事のまとめ
  • UEM移行は、多種多様なデバイスを統合管理し、企業のセキュリティ強化と運用効率化を実現する「組織変革」プロジェクトです。
  • 失敗の主な原因は、技術面よりも目的の不明確さや関係者間の合意形成不足といった組織的な課題に起因します。
  • プロジェクト成功のためには、現状把握、明確なゴール設定、PoCによる検証、信頼できるパートナー選定の4ステップが重要です。
  • 本記事で示した失敗条件や論点を参考に、自社の課題を明確にし、計画的にUEM移行を進めることで成功確率は高まります。
  • UEM導入を通じて、変化するビジネス環境に対応できる柔軟かつ安全なITインフラを構築し、企業の競争力向上を目指しましょう。

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初回公開日:2026年02月13日

記載されている内容は2026年02月13日時点のものです。現在の情報と異なる可能性がありますので、ご了承ください。また、記事に記載されている情報は自己責任でご活用いただき、本記事の内容に関する事項については、専門家等に相談するようにしてください。

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