データ棚卸しを“本丸データ”から始める方法:Fingerprintingで重要情報を高精度に特定・保護する
1分でわかるこの記事の要約 データ棚卸しは、膨大なデータの中から企業にとって本当に守るべき「本丸データ」を特定し、情報漏...
更新日:2026年02月10日
1分でわかるこの記事の要約 サイバー攻撃対策では証拠保全が不可欠であり、その標準化と手順書整備が重要です。 揮発性のメモリダンプと不揮発性のディスクイメージの適切な取得がインシデント調査の鍵を握ります。 Kill Cha […]
目次
サイバー攻撃の手法が日々巧妙化・複雑化する現代において、企業や組織にとってセキュリティインシデントへの備えは、経営上の最重要課題の一つです。
万が一、不正アクセスやマルウェア感染、情報漏洩などのインシデントが発生した場合、被害を最小限に抑え、原因を究明し、再発防止策を講じるためには、迅速かつ的確なインシデントレスポンスが求められます。その中核を担うのが「デジタルフォレンジック」による調査です。
しかし、いざインシデントに直面すると、何から手をつけるべきか混乱し、重要な証拠を失ってしまうケースが後を絶ちません。この記事では、インシデントレスポンスの要であるフォレンジック調査、特に重要な「証拠保全」に焦点を当て、その手順の標準化について解説します。判断が難しい「メモリダンプ」と「ディスクイメージ」の取得判断基準や具体的な手順を網羅した、実践的なガイドラインを提供します。
デジタルフォレンジックとは、PCやサーバー、スマートフォン、クラウド環境などのデジタルデバイスに残された様々な記録(データ)を収集・分析し、法的な証拠性を明らかにするための一連の科学的調査手法を指します。「鑑識」とも呼ばれ、サイバーセキュリティ分野においては、インシデントの原因究明や被害範囲の特定、攻撃経路の解明、そして将来の対策立案に不可欠なプロセスです。
インシデントレスポンスは、一般的に「検知」「初動対応」「封じ込め」「調査(フォレンジック)」「復旧」「報告・改善」といったフェーズで構成されます。この中でフォレンジック調査は、インシデントの全容を解明するための心臓部と言えるでしょう。
攻撃者がどのような手口で侵入し(攻撃経路)、内部で何を行い(マルウェアの活動、データの窃取など)、どの範囲まで影響が及んでいるのかを、ログやファイルの痕跡といった客観的な証拠データに基づいて明らかにします。この調査結果がなければ、正確な報告書の作成や、実効性のある再発防止策の策定は不可能です。デジタルフォレンジックは、企業がセキュリティインシデントという脅威に対し、科学的根拠をもって立ち向かうための重要な武器なのです。
インシデント対応の成否は、初動における「証拠保全」が適切に行われたかどうかに大きく左右されます。しかし、この証拠保全のプロセスが担当者の経験や勘に依存している「属人化」した状態では、いくつかの重大なリスクが生じます。
これらのリスクを回避し、誰が対応しても一定の品質で、迅速かつ正確に証拠保全を実行できるようにするために、「調査の標準化」と、それを明文化した「手順書」の整備が不可欠なのです。標準化されたガイドラインは、組織全体のインシデント対応能力を底上げし、いざという時の混乱を防ぐための羅針盤となります。
デジタルフォレンジックにおける証拠保全では、データの信頼性を担保するために、国際的に認められている以下の4つの原則を守ることが極めて重要です。
これらの原則は、フォレンジック調査全体の土台です。手順書を作成する際には、すべてのステップがこれらの原則を満たしているかを確認することが重要です。
メモリダンプとは、コンピュータが動作している最中のメインメモリ(RAM)上の全データを、そのままファイルとして保存(ダンプ)したものです。メモリ上のデータは、電源を切ると消えてしまう「揮発性データ」であるため、インシデント発生時には真っ先に取得を検討すべき最重要証拠の一つです。
メモリダンプを解析することで、その瞬間にコンピュータが何をしていたかを詳細に知ることができます。
特に、近年のマルウェアはディスク上にファイルを残さず、メモリ上のみで活動する「ファイルレスマルウェア」が増加しています。このような高度な脅威の調査において、メモリダンプの分析は攻撃の痕跡を掴むための唯一の手がかりとなることも少なくありません。
ディスクイメージとは、ハードディスク(HDD)やSSDといったストレージデバイスの内部にある全データを、セクタ単位で完全に複製したコピーファイルのことです。こちらは電源を切ってもデータが消えない「不揮発性データ」の塊であり、フォレンジック調査における最も基本的な証拠となります。
ディスクイメージは、単なるファイルコピーとは全く異なります。ディスクイメージはファイルシステムの管理領域や未割り当て領域、さらには削除されたファイルの断片まで、ディスク上のすべてのビット情報をそのまま保全します。
ディスクイメージを分析することで、以下のような広範な情報を得ることができます。
ディスクイメージは、時間をかけて多角的な分析を行うための基礎データであり、インシデントの全体像を再構築するために不可欠です。
メモリダンプとディスクイメージは、どちらも重要な証拠ですが、その性質は大きく異なります。インシデントの種類や状況に応じて、どちらを、あるいは両方を、どのタイミングで取得するかを的確に判断する必要があります。
| 項目 | メモリダンプ | ディスクイメージ |
|---|---|---|
| データの種類 | 揮発性データ(RAM上の動的な情報) | 不揮発性データ(ディスク上の静的な情報) |
| 主な分析対象 | 実行中のプロセス、ネットワーク接続、メモリ上のマルウェア | ファイル、ログ、削除データ、レジストリ |
| 取得タイミング | インシデント発生直後(電源OFF前) | メモリダンプ取得後、または状況に応じて |
| 取得時間 | 比較的短い(数分~数十分) | 長い(数十分~数時間以上) |
| ファイルサイズ | 搭載メモリ容量と同程度 | ディスク/パーティション容量と同程度 |
| 主な目的 | 現在進行形の脅威の特定、即時的な状況把握 | インシデントの全体像解明、根本原因の特定 |
インシデント対応における証拠保全の鉄則は、「消えやすいものから先に保全する」ことです。この原則に基づけば、揮発性データであるメモリダンプを、不揮発性データであるディスクイメージよりも先に取得するのが基本となります。調査対象の端末の電源を落とした瞬間に、メモリ上の貴重な情報はすべて失われてしまうからです。
ただし、インシデントの種類によっては、この原則が絶対ではない場合もあります。
手順書には、まず「原則としてメモリダンプを優先する」と明記した上で、上記のようなシナリオ別の判断基準を記載しておくことが、現場の担当者の迷いをなくし、迅速な意思決定を助けます。
メモリダンプの取得は、調査対象のシステムを稼働させたまま行う必要があります。そのため、システムへの影響を最小限に抑えつつ、慎重に作業を進めなければなりません。
【手順の概要】
【注意点】
ディスクイメージの取得には「Live取得」と「Dead取得」の2つの方法があります。法的証拠能力を最大限に高めるためには、原本への書き込みを完全に防ぐことができる「Dead取得」が推奨されます。
【手順の概要(Dead取得の場合)】
【注意点】
サイバー攻撃は、一連の段階的なプロセスを経て実行されます。この攻撃者の一連の行動をモデル化したフレームワークが「サイバーキルチェーン(Kill Chain)」です。一般的に、以下の7つのフェーズで構成されます。
フォレンジック調査の証拠をこのKill Chainの各フェーズに当てはめることで、攻撃の全体像を体系的に理解し、今後の対策に活かすことができます。
フォレンジック調査で収集・分析するデータは、Kill Chainの各フェーズの痕跡を明らかにするために活用されます。
このように、メモリダンプやディスクイメージから得られる多様なデータを組み合わせ、Kill Chainに沿って分析することで、断片的な痕跡が一連のストーリーとして繋がります。
実用的で効果的なフォレンジック手順書を作成するためには、以下の項目を網羅することが推奨されます。
近年、クラウド環境におけるフォレンジックは特有の難しさを伴います。物理サーバーに直接アクセスできないため、従来のディスクイメージ取得手法が使えないケースが多くあります。
対策として、平時からCSP(クラウドサービスプロバイダー)が提供するログ機能を最大限に活用し、必要なログを収集・保管しておくことが重要です。インシデント発生時には、CSPのサポートと連携し、スナップショット機能などを利用して仮想マシンのディスクイメージを取得する手順を確立しておく必要があります。専門性が高いため、有事の際に協力してくれる専門ベンダーを事前に見つけておくことも有効な対策です。
高度なフォレンジック調査をすべて自社で完結できるわけではありません。以下のようなケースでは、速やかに外部の専門家へ調査を依頼することを検討すべきです。
専門家に依頼することで、最新の脅威情報や高度な分析技術に基づいた、迅速かつ正確な調査が期待できます。誤った自社対応で証拠を失い被害が拡大するリスクを考えれば、結果的にコストを抑えることに繋がる場合も少なくありません。
サイバーセキュリティインシデントは、すべての組織が「いつか必ず起こる」ものとして備えなければならない脅威です。インシデント発生時に、冷静かつ的確な対応ができるかどうかは、平時からの準備にかかっています。
本記事で解説したように、デジタルフォレンジック調査、特に初動である証拠保全のプロセスを「標準化」し、誰でも実行可能な「手順書」として整備しておくことは、組織のセキュリティレジリエンスを向上させる上で極めて重要です。揮発性の高いメモリダンプと、網羅的なディスクイメージの特性を理解し、的確に取得・保全する体制を構築してください。
今回の情報を基に、自社の環境に合わせた手順書を作成し、定期的な訓練を行うことが、未来のインシデント被害を最小限に食い止めるための最も確実な一歩となるでしょう。
記載されている内容は2026年02月10日時点のものです。現在の情報と異なる可能性がありますので、ご了承ください。また、記事に記載されている情報は自己責任でご活用いただき、本記事の内容に関する事項については、専門家等に相談するようにしてください。
1分でわかるこの記事の要約 データ棚卸しは、膨大なデータの中から企業にとって本当に守るべき「本丸データ」を特定し、情報漏...
1分でわかるこの記事の要約 CASB導入は「シャドーITの可視化」で終わらず、「遮断ルール」の設計・運用が不可欠です。 ...
1分でわかるこの記事の要約 XDRはEDR/NDR/クラウドなど多様なセキュリティデータを統合し、サイバー攻撃の全体像を...
1分でわかるこの記事の要約 検知ルールは一度作成したら終わりではなく、環境変化に合わせて継続的に「育てる」運用が重要です...
1分でわかるこの記事の要約 サイバー攻撃発生時の被害拡大を防ぐ初動対応が「封じ込め」であり、その的確な判断が企業の未来を...

履歴書の「趣味特技」欄で採用担当者の心を掴めないかと考えている方もいるのではないでしょうか。ここでは履歴書の人事の...

いまいち難しくてなかなか正しい意味を調べることのない「ご健勝」「ご多幸」という言葉。使いづらそうだと思われがちです...

「ご査収ください/ご査収願いします/ご査収くださいますよう」と、ビジネスで使用される「ご査収」という言葉ですが、何...

選考で要求される履歴書。しかし、どんな風に書いたら良いのか分からない、という方も多いのではないかと思います。そんな...

通勤経路とは何でしょうか。通勤経路の届け出を提出したことがある人は多いと思います。通勤経路の書き方が良く分からない...