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インシデント対応の是正措置(Remediation)とは?揉めない進め方と再発防止策を解説

更新日:2026年01月20日

ITキャリア

1分でわかるこの記事の要約 インシデント対応の是正措置(Remediation)は、技術と業務の二軸で整理し、混乱を防ぐことが重要です。 フォレンジック調査とTTPs分析で原因を究明し、恒久・暫定・教育の各対策を計画的に […]

1分でわかるこの記事の要約
  • インシデント対応の是正措置(Remediation)は、技術と業務の二軸で整理し、混乱を防ぐことが重要です。
  • フォレンジック調査とTTPs分析で原因を究明し、恒久・暫定・教育の各対策を計画的に実行します。
  • 「対策盛り」を避け、MDRサービス活用や組織横断的な連携で効果的な再発防止体制を構築します。
  • 本記事の戦略的なアプローチは、部門間の対立を解消し、真に効果的なセキュリティ改善計画を立てるために役立ちます。
サイバーセキュリティインシデント発生後、対応で最も困難かつ重要なフェーズが「是正措置(Remediation)」と「再発防止策」の策定です。しかし、この段階で「対策会議で意見がまとまらない」「技術部門と業務部門が対立する」「過剰な対策、いわゆる”対策盛り”になる」といった課題に多くの組織が直面します。 インシデント対応の混乱から抜け出し、真に効果的な改善計画を立てるには、戦略的なアプローチが不可欠です。本記事では、インシデント後の是正措置で揉める原因を解消し、Remediationを「技術」と「業務」に切り分け、恒久対策・暫定対策・教育を整理して進めるための具体的な方法論をプロの視点から解説します。

なぜインシデント後の是正措置は「揉める」のか?

セキュリティインシデント発生後の対策会議は、本来、組織が一体となって脅威に立ち向かうべき場です。しかし実際には、部門間の利害対立視点の違いから議論が紛糾しがちです。主な原因は以下の3つです。

  • 各部門の「視点」と「責任範囲」の違い 情報システム部門やセキュリティ担当者は、技術的な観点から脆弱性を完全に塞ぐ対策を最優先します。一方、事業部門は業務への影響やコスト、利便性を重視します。例えば、複雑な認証プロセスを導入する際、技術部門は「安全性が高まる」と主張し、業務部門は「生産性が著しく低下する」と反発する、といった構図です。
  • 「根本原因」の捉え方が一致しない フォレンジック調査で技術的な原因(例:特定の脆弱性)が判明しても、それが「なぜ」悪用されたのかという組織的な背景(例:パッチ管理プロセスの不備、従業員のセキュリティ意識の低さ)まで踏み込まなければ、真の再発防止には至りません。技術的な問題に終始すると、業務プロセスに潜む本質的な課題が見過ごされ、表面的な対策に留まってしまいます。
  • 「完璧な対策」を目指す心理的プレッシャー 経営層への報告を意識し、インシデントの再発を恐れるあまり、考えられるすべての対策を盛り込もうとする「対策盛り」の状態に陥りがちです。これにより予算が膨れ上がり、実現可能性が低い計画になったり、本来優先すべき対策が後回しになったりするリスクが生じます。

これらの問題を解決する鍵が、Remediationを体系的に整理するアプローチにあります。


是正措置(Remediation)とは?「技術」と「業務」に分ける重要性

インシデント対応におけるRemediation(是正措置)とは、単に攻撃の痕跡を消すだけでなく、侵害された状態を正常に戻し、再び同様の攻撃を受けないように環境を改善する一連の活動を指します。このRemediationを「技術的Remediation」と「業務的Remediation」の2軸で切り分けて考えることが、混乱を収束させる第一歩です。

技術的Remediation

システムやネットワーク、アプリケーションといったITインフラに直接施す技術的な処置です。具体的には、マルウェアの駆除、不正アカウントの削除、脆弱性へのパッチ適用、ファイアウォール設定の見直し、侵害されたサーバーの再構築などが含まれます。主に情報システム部門やCSIRTが主導し、迅速な封じ込め・排除・復旧を目指します。

業務的Remediation

人やプロセス、ルールといった組織的な側面に対する改善策です。例えば、パスワードポリシーの厳格化、情報資産の取り扱いルールの見直し、外部委託先の管理体制強化、インシデント報告フローの明確化、従業員へのセキュリティ教育などが該当します。人事、総務、法務、各事業部門を巻き込み、組織横断で進める必要があります。

この2つを明確に分けることで、責任範囲と役割分担がクリアになります。技術部門はシステムの健全化に集中でき、業務部門は業務プロセスの中で何を改善すべきかを具体的に検討できます。これにより、「技術の話」と「業務の話」が混ざって議論が発散することを防ぎ、現実的な改善計画を立てることが可能になるのです。


インシデント是正措置の具体的フロー|3つのステップ

Remediationを「技術」と「業務」に分けて進めるための具体的な対応フローは、以下の3ステップで構成されます。このフローに沿うことで、場当たり的でない、論理的で網羅的な是正措置を実現できます。

ステップ1:フォレンジック調査とTTPs分析による原因究明

是正措置の出発点は、何が起こったのかを正確に把握することです。そのために「フォレンジック調査」が不可欠です。サーバーや端末のログ、ディスクイメージなどを詳細に分析し、侵入経路、被害範囲、情報漏洩の有無などを特定します。客観的な事実に基づいて対策を議論することが極めて重要です。

さらに、攻撃者の「TTPs(Tactics, Techniques, and Procedures:戦術・技術・手順)」を分析します。単に「脆弱性を突かれた」だけでなく、攻撃者がどのように偵察・侵入し、内部活動を広げ、何を目的としていたのかを理解します。この分析には、MITRE ATT&CKのようなフレームワークが役立ちます。TTPsを理解することで、攻撃者の行動パターンに沿った効果的な防御策や検知ルールを策定できます。自社での分析が難しい場合は、MDRサービスや専門の調査会社といった外部の活用も有効です。

ステップ2:技術的Remediationの計画と実行

調査結果に基づき、具体的な技術的Remediationの計画を立てます。計画には以下の要素を含めるべきです。

  • 作業のリストアップ:「封じ込め」「排除」「復旧」の各フェーズで実施すべき作業を洗い出します。
    • 封じ込め: 影響範囲を特定し、ネットワークから隔離する。
    • 排除: マルウェアやバックドアを完全に除去し、不正アカウントを無効化する。
    • 復旧: クリーンな状態からシステムを再構築し、データをリストアする。
  • 優先順位の決定:事業継続への影響、再侵害リスク、コストを考慮し、最も緊急性の高いものから着手します。例えば、外部通信を継続するバックドアの排除は、内部ネットワークの設定見直しより優先度が高くなります。
  • 手順の文書化と担当者の割当:誰が、いつ、何を、どのように実施するのかを定義し、作業漏れや手戻りを防ぎます。可能であればSOARなどを活用し、一部の作業を自動化することで迅速性と正確性を高めます。

ステップ3:業務的Remediationによるプロセスの見直し

技術的な対処と並行して、業務的Remediationを進めます。根本原因分析の結果、インシデントの背景に組織的な課題が見つかった場合、ここでの対応が再発防止の鍵を握ります。

  • プロセスやルールの見直し:「特権IDの貸し借りが黙認されていた」「退職者のアカウントが削除されずに残っていた」といった問題があれば、ID管理規程の改訂や承認フローの厳格化といった改善計画を立てます。
  • 教育プログラムの計画:従業員の行動に起因する問題であれば、教育を計画します。特定の部署でフィッシングメールの開封率が高ければ標的型メール訓練を、インシデント報告が遅れたなら全従業員向けに報告手順の研修会を開催します。
  • 運用体制の構築:新しいルールが形骸化しないよう、定期的な監査や遵守状況のモニタリング体制を構築します。このプロセスには、人事部や内部監査室など、組織横断での連携が不可欠です。

再発防止策を「対策盛り」にしないための3つの分類

技術的・業務的Remediationで出てきた多様な対策案は、そのまま実行すると「対策盛り」に陥ります。そこで、対策案を「恒久対策」「暫定対策」「教育」の3つに分類し、優先順位付けを行うアプローチが有効です。

恒久対策:根本原因を断つための長期的視点

インシデントの根本原因を完全に取り除き、再発を不可能にする本質的な対策です。システムアーキテクチャの変更などを伴うため、時間とコストがかかります。例えば、古い認証システムが原因であれば、クラウドベースのID管理基盤(IDaaS)へ移行する、といった対策です。経営層の承認を得て、中長期的なプロジェクトとして計画的に進める必要があります。

暫定対策:緊急度と実現性を両立させる短期施策

恒久対策が完了するまでの間、リスクを許容可能なレベルまで低減させるための一時的な措置です。迅速に実施できることが特徴です。例えば、ソフトウェアの脆弱性対応に時間がかかる場合、暫定対策としてIPS(不正侵入防止システム)で悪用通信をブロックする、といった手段が考えられます。あくまで「つなぎ」の措置であり、恒久対策への移行計画とセットで導入することが重要です。

教育プログラム:”人”の脆弱性を補う継続的アプローチ

技術やプロセスがいかに優れていても、それを使う「人」の意識や行動が伴わなければセキュリティは担保できません。教育は人的な側面を強化する継続的な取り組みです。eラーニングやフィッシング訓練などを通じて、セキュリティ意識の向上を図ります。教育は一度で終わらせず、定期的に内容を更新し、継続することで組織文化として根付かせます


MDRサービスを活用した高度なインシデント対応とRemediation

自社だけで高度なフォレンジック調査や効果的なRemediation計画の策定を行うことには限界があります。専門人材の不足や24時間365日の監視体制の構築が困難な場合、MDR(Managed Detection and Response)サービスは非常に強力なパートナーとなります。

MDRサービスは、専門アナリストが顧客環境を常時監視し、脅威の検知から分析、封じ込め、是正措置の支援までを一貫して提供します。インシデント発生時には、専門家が迅速にログ分析やマルウェア解析を行い、正確な被害状況と根本原因を特定します

Remediationのフェーズにおいても、MDRサービスは大きな価値を発揮します。具体的な是正措置の推奨(例:「このレジストリキーを削除」「このサーバーにパッチXXを適用」)を提示したり、リモートから直接、脅威の排除や隔離といった緊急対応を実施したりするサービスもあります。MDRの活用は、インシデント対応全体の質と速度を向上させ、是正措置の精度を高める上で極めて有効な戦略です。


成功に導く体制構築と経営層への報告

効果的な是正措置と再発防止には、それを支える組織体制が不可欠です。CSIRT(Computer Security Incident Response Team)の役割と責任を明確にし、インシデント発生時に迅速に機能する体制を整えましょう。

最も重要なのが、組織横断での連携です。Remediationはセキュリティ部門だけでは完結しません。各部門から担当者を集めたタスクフォースを組成し、定期的な進捗会議で課題を共有し、協力して改善を進める文化を醸成することが成功の鍵です。

最後に、経営層への報告も重要なプロセスです。インシデントの概要、原因、そして対策について、専門用語を避け、ビジネスへの影響という観点から分かりやすく説明します。「技術的/業務的Remediation」や「恒久/暫定対策」の分類を用いると、対策の全体像と優先順位が伝わりやすくなります。これにより、経営層の理解と協力を得て、必要なリソースを確保し、全社的な取り組みとして改善を推進できます。


まとめ

サイバーセキュリティインシデント後の混乱や対立は、是正措置(Remediation)を「技術」と「業務」の2軸で切り分け、体系的に整理することで乗り越えられます。

  1. 原因究明: フォレンジック調査とTTPs分析で客観的な事実と根本原因を特定する。
  2. 計画立案: 技術的・業務的双方の改善計画を立てる。
  3. 分類・実行: 対策案を「恒久対策」「暫定対策」「教育」に分類し、優先順位を付けて実行する。

このアプローチは、”対策盛り”を避け、部門間の円滑な連携を促し、経営層への説明責任を果たす上でも役立ちます。インシデントを単なる「事故」で終わらせず、組織のセキュリティ体制を一段階引き上げるための「学び」の機会と捉え、戦略的にRemediationを進めていきましょう。


よくある質問(FAQ)

Q1: 技術的Remediationと業務的Remediationは、どちらを優先すべきですか?

A1: 一概には言えませんが、多くの場合、並行して進める必要があります。例えば、マルウェアの駆除(技術的)と同時に、感染原因となったフィッシングメールへの注意喚起(業務的)を行うのが効果的です。ただし、被害拡大を防ぐ「封じ込め」や「排除」といった緊急対応は、技術的Remediationが先行することが一般的です。重要なのは、両方の視点で改善計画全体のバランスを取ることです。

Q2: 恒久対策の予算が確保できません。どうすればよいですか?

A2: 恒久対策がすぐに実行できない場合、まずはリスクを低減する「暫定対策」を徹底することが重要です。その上で、なぜ恒久対策が必要なのかをビジネスリスクの観点から経営層に粘り強く説明します。「この脆弱性を放置した場合、年間XX円の損害が発生する可能性があります。恒久対策にはYY円かかりますが、これによりリスクを根絶できます」のように、費用対効果を具体的に示すことが承認を得るための鍵となります。

Q3: インシデント対応をMDRサービスに任せている場合、社内の担当者は何をすればよいですか?

A3: MDRサービスは強力な支援者ですが、社内担当者が不要になるわけではありません。MDRベンダーからの報告や推奨事項を理解し、自社のビジネス環境に合わせて最終的な意思決定を下すのは社内担当者の役割です。また、MDRベンダーが実施できない業務プロセスの見直しや従業員教育(業務的Remediation)は、社内担当者が主導して進める必要があります。MDRベンダーを「パートナー」として位置づけ、緊密に連携することが成功のポイントです。

この記事のまとめ
  • 是正措置は「技術的Remediation」と「業務的Remediation」に分け、原因究明から計画、実行まで体系的に進めることが成功の鍵です。
  • 対策案を「恒久対策」「暫定対策」「教育」に分類し、優先順位をつけて「対策盛り」を回避し、実効性を高めましょう。
  • MDRサービスの活用や組織横断的な連携を強化し、経営層への適切な報告を通じて全社的なセキュリティ体制を向上させましょう。

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初回公開日:2026年01月20日

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