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EDRアラート時の封じ込め判断基準|ContainmentとQuarantineの違いと「隔離ルールブック」作成ガイド

更新日:2026年01月19日

ITキャリア

1分でわかるこの記事の要約 ✓ EDRアラート時の封じ込めは、業務停止と被害拡大防止のバランスが重要です。 ✓ Containmentは広範な戦略、Quarantineは具体的な端末隔離を指します。 ✓ 深刻度、端末重要 […]

1分でわかるこの記事の要約
  • EDRアラート時の封じ込めは、業務停止と被害拡大防止のバランスが重要です。
  • Containmentは広範な戦略、Quarantineは具体的な端末隔離を指します。
  • 深刻度、端末重要度、横展開リスク、ユーザー、業務影響の5点で判断します。
  • 事前にルールブックを作成し、定期的な見直しと訓練が不可欠となります。
  • 自動化は迅速化に貢献するが、誤検知による業務停止リスクに注意が必要です。
サイバー攻撃のアラートをEDR(Endpoint Detection and Response)が検知した際、「どの端末を、どこまで封じ込めるべきか?」と判断に迷った経験はありませんか。迅速なインシデント対応が求められる一方で、判断を誤れば大規模な業務停止につながるリスクも存在します。 本記事では、EDRにおける封じ込めの明確な判断基準を確立するため、業務影響を最小化するルール策定のポイントを網羅的に解説します。

この記事でわかること

  • インシデント対応における「封じ込め」の重要性
  • 「Containment」と「Quarantine」の明確な違い
  • 封じ込めを判断するための具体的な5つのチェックポイント
  • 業務影響を最小化する「封じ込めルールブック」の作成手順
  • 封じ込め後の「修復(Remediation)」や「自動化」のポイント

サイバー攻撃のアラートをEDR(Endpoint Detection and Response)が検知した際、「どの端末を、どこまで封じ込めるべきか?」と判断に迷った経験はありませんか。迅速なインシデント対応が求められる一方で、判断を誤れば大規模な業務停止につながるリスクも存在します。

本記事では、EDRにおける封じ込めの明確な判断基準を確立するため、業務影響を最小化するルール策定のポイントを網羅的に解説します。

そもそも「封じ込め」とは?インシデントレスポンスにおける重要性

サイバーセキュリティにおけるインシデントレスポンスは、NIST(米国国立標準技術研究所)が提唱する「検知・分析」「封じ込め・根絶・復旧」「事後対応」のフレームワークに沿って進められます。中でも「封じ込め(Containment)」は、攻撃を検知した後の初動対応として極めて重要な位置を占めます。

封じ込めの目的は大きく2つあります。

  • 被害拡大の阻止 マルウェアに感染した端末がネットワークに接続されたままだと、他のサーバーやPCへ感染を広げ(横展開)、組織全体に致命的なダメージを与える可能性があります。ランサムウェア攻撃を想像すると、その重要性がよくわかるでしょう。端末を迅速にネットワークから隔離することで、被害を最小限に食い止めます。
  • 証拠保全 攻撃者は自身の痕跡を消そうとします。端末を隔離して現状を維持することで、その後の原因調査(フォレンジック)に必要なログやファイルなどのデジタル証拠を保全しやすくなります。この証拠が、攻撃手法の解明や再発防止策の策定に不可欠です。

封じ込めの具体的な手法としては、EDR製品が提供する「ネットワーク隔離(対象端末の通信を遮断)」が代表的です。その他、疑わしいプロセスの強制停止や不正なファイルの隔離といった措置も含まれ、状況に応じて的確に使い分けることが効果的なインシデントレスポンスの第一歩となります。


「Containment」と「Quarantine」の明確な違いとは?

インシデント対応では、「Containment」と「Quarantine」という2つの用語が頻繁に登場します。これらは似ていますが厳密にはスコープが異なり、この違いの理解はEDRを正しく活用する上で非常に重要です。

Containment(封じ込め)

  • 概念: より広範・戦略的な概念。被害拡大防止のためのあらゆる措置を指します。
  • 範囲: 端末隔離だけでなく、特定ネットワークセグメントの遮断、攻撃者が悪用するアカウントの無効化、ファイアウォールでのポート閉鎖なども含まれます。
  • 目的: インシデントという「事象」全体を封じ込める活動です。

Quarantine(隔離)

  • 概念: Containmentを実現するための具体的・戦術的な手法の一つ。
  • 範囲: マルウェアに感染した特定の端末やファイルを、ネットワークから論理的に切り離すことを指します。
  • 例: 多くのEDR製品が持つ「端末隔離」や「ネットワーク隔離」機能。

結論として、インシデント対応全体の戦略が「Containment」であり、その中の具体的なアクションの一つが「Quarantine」と整理すると良いでしょう。組織のルールを策定する際は、この2つの言葉の定義を明確にすることで、関係者間の認識の齟齬を防げます。


EDRにおける封じ込めの判断基準 – 5つのチェックポイント

EDRがアラートを発した際、即座に端末を隔離すべきか否か。この判断を的確に行うための5つのチェックポイントを解説します。これらの基準を事前に定義しておくことで、インシデント発生時に冷静かつ迅速な対応が可能になります。

  1. アラートの深刻度と信頼性 まず、EDRが発したアラートの深刻度(Severity)を確認します。多くのEDR製品では「High」「Medium」「Low」などでレベル分けされており、一般的に「High」は即時対応の優先度が高くなります。 しかし、深刻度だけで判断するのは危険です。誤検知の可能性も常に考慮し、過去の事例や脅威インテリジェンスと照らし合わせ、検知された挙動が本当に悪意のあるものかを見極める必要があります。
  2. 感染が疑われる端末の重要度 次に、アラートが発生した端末のビジネス上の重要度を評価します。基幹システムが稼働するサーバーや個人情報を保持するデータベースサーバーであれば、被害が甚大になるリスクが高いため、即時隔離が妥当です。 事前に資産台帳を整備し、各端末の重要度(機密性・完全性・可用性の観点)をランク付けしておくことが、迅速な判断に繋がります。
  3. 影響範囲(横展開の可能性) 検知された脅威が、他の端末へ感染を広げる能力(横展開)を持つかも重要な判断基準です。特にランサムウェアやワームのように自己増殖するマルウェアは、発見次第、即座に隔離しなければ被害が爆発的に拡大します。 EDRのログから、不審なプロセスが他の端末への通信を試みていないか、管理者権限を奪取しようとしていないかなどを確認し、横展開のリスクが高い場合は迷わず隔離を実行すべきです。
  4. ユーザーの役職と業務内容 端末を利用しているユーザーの属性も考慮すべき要素です。例えば、経営層や特権ID(管理者アカウント)を持つユーザーの端末でアラートが上がった場合、アカウント乗っ取りによる被害が甚大になるため、慎重かつ迅速な対応が求められます。 ただし、役員端末を安易に隔離すると経営判断の遅延などビジネスへの影響が大きいため、後述する例外運用のルールが不可欠です。
  5. 業務への影響度 最後に、端末を隔離した場合にどのような業務がどれくらいの期間停止するのか、その影響度を評価します。工場の生産ライン制御端末を止めれば生産が、コールセンターのPCを止めれば顧客対応が停止します。 隔離による業務影響と、放置した場合のセキュリティリスクを天秤にかけ、どちらが組織にとってより大きな損害となるかを冷静に判断する必要があります。業務時間外の夜間や休日であれば、影響を小さく抑えつつ隔離できる場合もあります。

業務影響を最小化するための「封じ込めルールブック」作成ガイド

前述の5つの判断基準をインシデント発生時にゼロから考えていては、対応が後手に回ります。迅速かつ的確な対応を実現するため、判断基準を明文化した「封じ込めルールブック」を事前に作成しておくことが極めて重要です。ここでは、その作成手順を5ステップで解説します。

  1. ステップ1: 対象資産の棚卸しと重要度分類 まず、組織内のIT資産(サーバー、PC等)をすべて洗い出し、台帳を作成します。その上で、各資産の役割や取り扱う情報に基づき、重要度を3~5段階でランク付けします(例:Sランク:事業継続に致命的な影響、Aランク:重要業務システム、Bランク:一般社員PCなど)。
  2. ステップ2: 脅威シナリオごとの対応フロー策定 次に、「ランサムウェア感染の疑い」「標的型攻撃の兆候」といった脅威シナリオごとに、具体的な対応フローを定義します。「誰が」「何を」「どのタイミングで」「どこまで」封じ込めるのかを明確にします。 例:「Sランクサーバーで深刻度Highのアラートを検知した場合、即時自動でネットワーク隔離を実行する」
  3. ステップ3: 権限とエスカレーションプロセスの明確化 誰に端末の隔離を実行する権限があるのかを明確に定めます。例えば、一次対応のSOCアナリストには限定的な権限のみを与え、サーバーの隔離などは情報システム部の承認を必須とする、といったルールです。判断に迷った場合の報告・指示系統(エスカレーションプロセス)も定めておき、混乱を防ぎます。
  4. ステップ4: 例外運用のルール化(役員端末など) ビジネスインパクトの観点から、一律のルールを適用できない資産(役員端末など)に対する例外運用を定めます。一般的に役員端末は「原則として自動隔離は行わない」とし、その代わりに「アラート検知時は最高優先度で担当者に通知し、本人へ直接連絡する」「代替PCを即座に準備する」といった代替措置を明記します。
  5. ステップ5: 定期的な見直しと訓練 ルールブックは一度作成したら終わりではありません。組織のシステム構成やビジネス環境の変化に合わせ、定期的に内容を見直す必要があります。また、年に数回、サイバー攻撃を想定したインシデント対応訓練を実施し、ルールブックが実際に機能するかを検証・改善していくプロセスが最も重要です。

封じ込めの先にある「Remediation(修復)」とは?

インシデント対応は、脅威を封じ込めて完了ではありません。封じ込めは応急処置であり、次には根本原因を取り除く「根絶(Eradication)」と、システムを正常な状態に戻す「復旧(Recovery)」が続きます。このプロセスの中核をなすのが「Remediation(修復)」です。

Remediationとは、マルウェアの駆除、不正なファイルや設定の削除、脆弱性へのパッチ適用など、システムを攻撃前のクリーンな状態に戻すための具体的な作業全般を指します。封じ込めた端末を再度ネットワークに接続する前に、このRemediationを確実に行うことが脅威の再発防止に不可欠です。

多くのEDR製品は、管理コンソールからリモートでマルウェアを削除するなど、このRemediationプロセスを支援する機能を備えています。


封じ込め運用の高度化:自動化のメリットと注意点

SOC運用を効率化する有力な選択肢が、封じ込めプロセスの「自動化」です。SOARツールとEDRを連携させ、特定条件のアラートに対し、人手を介さずに自動で端末を隔離するといった対応が可能になります。

  • 自動化のメリット 対応の迅速化が最大のメリットです。深夜や休日でも24時間365日、脅威を検知した瞬間に封じ込めを実行でき、被害拡大を効果的に防ぎます。また、アナリストはより高度な分析業務に集中でき、人的ミスも防げます。
  • 自動化の注意点 誤検知による過剰な封じ込めが最大のリスクです。基幹サーバーを自動隔離してしまえば、全社的な業務停止を引き起こしかねません。自動化システムはビジネスインパクトを考慮できないため、ルールの設計を慎重に行う必要があります。

したがって、自動化を導入する際は、段階的なアプローチが推奨されます。まずは脅威度が高く誤検知の可能性が極めて低い攻撃パターンに限定したり、影響範囲が限定的なPCのみを対象としたりするなど、徐々に適用範囲を広げていく慎重な姿勢が成功の鍵となります。


よくある質問(FAQ)

Q1: EDRで隔離した端末は、どうすれば元に戻せますか?

A1: EDRの管理コンソールから隔離を解除します。ただし、解除前には原因調査とRemediation(修復)作業を完了させ、脅威が完全に除去されていることを必ず確認してください。安全が確認できないまま解除すると、脅威が再活性化する危険性があります。

Q2: 誤検知で重要なサーバーを隔離してしまいました。どうすれば防げますか?

A2: 事前のルール作りが最も重要です。「封じ込めルールブック」で重要サーバーを自動隔離の「対象外」と明確に定義します。また、EDRのチューニング(ホワイトリスト登録など)で誤検知自体を減らす努力も必要です。万一に備え、緊急時の隔離解除手順と連絡フローも整備しておきましょう。

Q3: 「封じ込め」と「根絶」の違いは何ですか?

A3: 「封じ込め(Containment)」は、被害拡大を防ぐための「応急処置」で、脅威を一時的に閉じ込めます。一方、「根絶(Eradication)」は、マルウェア本体の削除や脆弱性の修正など、攻撃の根本原因をシステムから完全に「取り除く」プロセスです。インシデント対応では、「封じ込め」の後に「根絶」のステップに進みます。


まとめ

EDRを活用したセキュリティ対策において、封じ込めは被害拡大を食い止める重要な初動対応です。しかし、その判断は常に業務影響とのトレードオフになります。成功の鍵は、自社のビジネス環境やリスク許容度に合わせた明確な「判断基準」と「ルール」を事前に整備しておくことです。

業務影響を最小化し、迅速かつ的確なインシデント対応を実現するために、まずは自社のIT資産の棚卸しと重要度のランク付けから始め、本記事で紹介したステップに沿って「封じ込めルールブック」の策定に着手してみてはいかがでしょうか。この記事が、貴社のセキュリティ運用体制を一層強固なものにするための一助となれば幸いです。

この記事のまとめ
  • EDR封じ込めは被害拡大防止の重要な初動対応ですが、業務影響とのバランスが不可欠です。
  • 自社のビジネス環境とリスク許容度に合わせた明確な「判断基準」と「ルール」の整備が成功の鍵となります。
  • IT資産の棚卸しと重要度分類から始め、「封じ込めルールブック」の策定に着手することが推奨されます。
  • 自動化は迅速な対応に寄与しますが、誤検知による業務停止リスクを考慮し慎重な導入が必要です。
  • 定期的な見直しとインシデント対応訓練を通じて、セキュリティ運用体制を継続的に強化しましょう。

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初回公開日:2026年01月19日

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