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相関ルールが当たらない原因はデータ品質|SIEM/XDRの設計ミス5パターンと改善策、Telemetry活用まで解説

更新日:2026年01月19日

ITキャリア

1分でわかるこの記事の要約 SIEM/XDRの相関ルールが機能しない主な原因は、データ品質やシステム連携の「設計ミス」にあります。 ログ欠損、正規化不足、時間同期ズレ、重複イベント、コンテキスト不足という5つの典型的な失 […]

1分でわかるこの記事の要約
  • SIEM/XDRの相関ルールが機能しない主な原因は、データ品質やシステム連携の「設計ミス」にあります。
  • ログ欠損、正規化不足、時間同期ズレ、重複イベント、コンテキスト不足という5つの典型的な失敗パターンが存在します。
  • これらの問題は検知漏れや誤検知につながり、セキュリティ運用の精度を著しく低下させる可能性があります。
  • 解決策として、運用プロセスの見直しに加え、XDRとTelemetryを活用した次世代のアプローチが有効です。
  • データ品質の設計と継続的な改善こそが、高度な脅威検知体制を構築するための鍵となります。
SIEMXDRを導入し、高度な脅威検知を目指して相関ルール(Correlation Rule)を設定したにもかかわらず、「期待したほど脅威が検知できない」「誤検知アラートの対応に追われている」といった課題に直面していませんか。 実は、こうした問題の多くは、ルールのロジックそのものではなく、その土台となるデータ品質やシステム連携の「設計ミス」に起因しています。本記事では、相関ルールが当たらない典型的な失敗パターンを5つに分類し、その原因と具体的な改善策、そしてXDRとTelemetry(テレメトリ)を活用した次世代のアプローチまでを徹底解説します。

相関ルール(Correlation Rule)が期待通りに機能しない根本原因

SIEM(Security Information and Event Management)XDR(Extended Detection and Response)における相関分析は、セキュリティ運用の心臓部です。ファイアウォール、プロキシ、エンドポイントなど、多種多様なセキュリティ製品から集められた膨大なイベントログを横断的に分析し、単一のログだけでは見つけられない巧妙なサイバー攻撃の兆候を捉えることを目的としています。この中核を担うのが「相関ルール」です。

相関ルールが可視化する攻撃シナリオの例

  • 外部から内部への不審なポートスキャンが検知される
  • その数分以内に、スキャンされたサーバーから外部のC2サーバーへの不審な通信が発生する
  • さらにその直後、該当サーバーで特権ユーザーアカウントが作成される

しかし、この強力なはずの仕組みが、多くの組織で期待通りに機能していないのが実情です。その結果、大量の誤検知アラートが発生し、SOCアナリストが本当に重要なアラートを見逃してしまう「アラート疲れ」を引き起こしたり、逆に検知すべき脅威を見逃す「検知漏れ」という深刻なリスクを生み出したりしています。この問題の根源は、ルールのチューニング不足だけでなく、より本質的な「設計ミス」に潜んでいるケースがほとんどなのです。

失敗パターン1:ログ欠損|分析に必要なデータがない

ログ欠損が引き起こす深刻な問題

相関分析をジグソーパズルに例えるなら、イベントログは一つひとつのピースです。もし重要なピースが欠けていたら、パズルの全体像、つまり攻撃シナリオを完成させることはできません。ログ欠損は、相関分析において最も致命的な設計ミスの一つであり、脅威検知の精度を根本から揺るがします。

例えば、「侵入の痕跡」を示すログはあっても、その後の「内部活動」を示すログがなければ、攻撃がどこまで進行したのか把握できません。これにより、検知漏れという最悪の事態につながるリスクが飛躍的に高まります。また、インシデント発生時には原因究明や影響範囲の特定に必要な証跡(フォレンジックデータ)が不足するため、迅速な対応が困難になります。ログ欠損は、監視の「死角」を生み出す深刻な課題なのです

なぜログ欠損は発生するのか?

ログ欠損は、様々な原因で発生します。

  • 監視対象の管理漏れ:新規サーバーやクラウドサービスが、ログ収集対象としてSIEM/XDRに正しく登録されていない。
  • ネットワークインフラの問題:ログ転送時のパケットロスやネットワーク帯域の不足により、ログが途中で消失する。
  • エージェントやストレージの問題:ログ収集エージェントの不具合や設定ミス、ストレージ容量不足による古いログの自動削除。

これらの問題は、日々の運用の中で意識的に監視・管理しなければ、気づかぬうちに深刻化していきます。

ログ欠損への具体的な改善策

ログ欠損を防ぐためには、体系的なアプローチが必要です。

  • IT資産の棚卸し:IT資産管理台帳とSIEMのログソースリストを定期的に突合し、監視対象の漏れをなくします。「野良サーバー」などを確実に収集対象に含めましょう。
  • ログ転送状況の監視強化:エージェントの死活監視に加え、ログ転送量を可視化し、急激な減少がないかリアルタイムでチェックします。異常検知時に自動でアラートを発報する仕組みが有効です。
  • キャパシティプランニング:ログ管理基盤(サーバー、ストレージ)のキャパシティを定期的に評価し、将来のログ増加量を見越した増強計画を立てます。

失敗パターン2:正規化不足|データの「方言」が分析を妨げる

正規化不足がもたらす相関分析の壁

異なるベンダーのセキュリティ製品から収集されるログは、それぞれ独自のフォーマットやフィールド名を持っています。この多種多様なデータの「方言」を、「送信元IPアドレス」「ユーザー名」といった共通の言語(スキーマ)に翻訳するプロセスが「正規化」です。

この正規化が不十分だと、相関分析は正しく機能しません。例えば、ある製品の送信元IPアドレスが「src_ip」、別の製品では「SourceAddress」と記録されている場合、SIEMはこれらを別物と認識し、関連付けられません。結果として、複数のイベントを横断して脅威を検知する相関ルールが機能せず、検知精度が著しく低下するのです。

正規化不足の一般的な原因

正規化不足の主な原因は、SIEMがログ形式を解釈するための定義ファイル(パーサー)の不備にあります。特に、自社開発のカスタムアプリや新しいクラウドサービスなど、SIEMが標準でパーサーを提供していない場合に問題が発生しがちです。

また、既存のパーサーがあっても、製品のバージョンアップでログフォーマットが変更されたことに気づかず、古いパーサーを使い続けているケースも少なくありません。これにより、データが欠落したり誤った値で取り込まれたりし、相関分析の失敗につながります。

ログ正規化を成功させるためのポイント

ログ正規化の課題を克服するには、以下のポイントが重要です。

  • 初期設計の徹底:データ連携の初期段階で、どのログの、どのフィールドをキーとして正規化するかを丁寧に設計し、実データでテストするプロセスを設けます。
  • 正規化状況の可視化:SIEMのダッシュボードで「正規化成功率」や「未識別のログ数」を常に監視し、問題を早期に発見します。
  • 専門家によるチューニング:重要なログソースやカスタムアプリについては、専門知識を持つエンジニアにパーサーの作成やチューニングを依頼することも有効な投資です。

失敗パターン3:時間同期ズレ|イベントの順序が狂う

タイムスタンプのズレが相関分析を破壊する

相関分析は、「イベントAの直後にイベントBが発生した」というような、イベント間の時間的な前後関係に大きく依存します。攻撃シナリオは、ミリ秒単位の正確なタイムスタンプがあって初めて正確に再構築できます。しかし、各サーバーや機器の時刻が同期されていなければ、この前提が崩壊します。

例えば、実際には「①多要素認証の失敗」→「②VPNログイン成功」の順で発生しても、時刻のズレでSIEM上では順序が逆転して記録されると、ブルートフォース攻撃の兆候を見抜く相関ルールは機能しません。時間同期のズレは、イベントの因果関係を破壊し、相関分析を根本から無意味にしてしまうリスクを孕んでいます。

時間同期ズレの原因と対策

時間同期ズレの主な原因は、NTP(Network Time Protocol)の設定不備です。組織内で基準となるNTPサーバーが未定義だったり、各システムがバラバラのNTPサーバーを参照したりすると、時刻のズレが生じます。

この設計ミスへの改善策は、信頼できる単一のNTPサーバーを時刻の基準点として定め、全てのシステムがそのマスターに同期するよう構成を徹底することです。そして、構成が正しく維持されているかを定期的に監査・監視する仕組みを構築します。SIEM側で、収集ログとSIEMサーバーの時刻に一定以上の乖離がある場合にアラートを出す監視ルールも有効です。

失敗パターン4:重複イベント|ノイズがシグナルをかき消す

重複イベントが引き起こすアラートの洪水

重複イベントとは、本来1回しか発生していないはずの同じイベントが、複数回SIEMに送信されてしまう現象です。ログ転送経路上の機器の再送設定や、エージェントの設定ミスなどが原因で発生します。

この重複イベントは、セキュリティ運用に深刻な影響を与えます。1件のインシデントが10件のアラートとして表示されれば、SOCアナリストは不要な調査に時間を費やし疲弊します。これが「誤検知」の温床となり、本当に重要なアラートへの対応を遅らせる原因となります。

重複イベントを抑制するためのアプローチ

重複イベントへの対策は、複数のレイヤーで考える必要があります。

  • アーキテクチャの見直し:ログ収集の経路全体を可視化し、ログ転送を担うミドルウェア(Fluentdなど)や集約サーバーで、重複イベントを破棄・集約する機能を導入します。
  • SIEM機能の活用:多くのSIEM製品には、短時間のうちに同一内容のイベントが複数届いた場合、それらを1つにまとめる「集約(Aggregation)」機能があります。「10秒以内にハッシュ値が同一のイベントが複数届いたら、最初の1件のみアラート化する」といったチューニングで、分析ノイズを大幅に削減できます。

失敗パターン5:コンテキスト不足|イベントの背景情報が見えない

コンテキスト情報とは何か?

イベントログは「何が起きたか(What)」を記録しますが、リスクを正しく評価するには「誰が(Who)」「どの端末で(Where)」といった背景情報、すなわち「コンテキスト」が不可欠です。

例えば、「深夜3時にドメイン管理者権限アカウントが人事DBから大量のデータをダウンロードした」というイベントを考えます。これが計画されたバッチ処理なら問題ありません。しかし、そのアカウントが普段アクセスしない人物のものであれば、アカウント乗っ取りによる情報漏洩の可能性があります。コンテキストがあって初めて、イベントの真のリスクを判断できるのです。

コンテキスト不足が脅威検知の精度を下げる理由

多くのSIEM運用ではコンテキスト情報が不足しており、アラートの深刻度を正しく判断できず、非効率な調査に陥っています。

コンテキストがなければ、特権ユーザーの挙動や重要資産へのアクセスといったリスクの高いイベントを優先的に監視できません。結果として、相関ルールは脅威の「文脈」を理解できず、誤検知を増やしたり、巧妙な攻撃を見逃したりする原因となります。

コンテキスト情報を豊かにするデータ連携

脅威検知の精度を向上させるには、イベントログにコンテキスト情報を付与(エンリッチ)する仕組みが不可欠です。

コンテキスト情報を豊かにするデータ連携例

  • ID管理システム連携:Active Directoryなどと連携し、ユーザーIDに「部署」「役職」を付与。
  • CMDB連携:構成管理データベースと連携し、IPアドレスに「サーバー管理者」「重要度」を紐付け。
  • 脅威インテリジェンス連携:TIフィードと連携し、通信先が悪性IPアドレスかどうかをリアルタイムで判断。

これらのシステム連携を通じてデータを統合し、可観測性を高めることが、相関分析の質を飛躍的に向上させる鍵となります。

SIEMの課題を乗り越えるXDRとTelemetryの活用

従来のSIEMが抱える限界

ここまで見てきた5つの失敗パターンは、いずれも従来のSIEM運用における根深い課題でした。SIEMはログの「集約」と「長期保管」に優れていますが、高品質な分析データに「統合」するには、専門家による多大な労力と継続的なチューニングが必要でした。この運用負荷の高さが、相関分析が形骸化する一因でした。

XDRが提供する解決策とは?

こうしたSIEMの課題を解決するアプローチがXDR(Extended Detection and Response)です。XDRは、エンドポイント(EDR)、ネットワーク、クラウドなど主要領域から、高品質なデータを収集することを前提として設計されたプラットフォームです。

XDRの最大の利点は、同一ベンダーのセンサー群からデータ(Telemetry)を収集する点にあります。これにより、ログフォーマットの違いやタイムスタンプのズレといった問題が原理的に発生しにくく、正規化の運用コストを大幅に削減できます。また、収集データには豊富なコンテキストが初めから付与されており、導入後すぐに精度の高い脅威検知を実現できます。

Telemetryが実現する高度なデータ分析

XDRが活用するTelemetry(テレメトリ)は、従来のイベントログとは一線を画します。ログが「認証失敗」といった結果を記録するのに対し、テレメトリは「どのプロセスが、どのファイルに、何の操作をしたか」といった、システムの挙動に関する詳細で構造化されたデータです。

この粒度の細かいテレメトリデータを活用することで、ログ欠損のリスクを低減し、攻撃者の微細な活動の兆候まで捉えることが可能になります。XDRプラットフォームは、この豊富なテレメトリをAIや機械学習で分析し、攻撃の文脈(TTPs)を解明。従来の相関ルールでは検知が難しかった未知の脅威にも、高い検知精度を発揮します。

まとめ:相関分析の成功は「データ品質の設計」にあり

相関ルールが当たらない問題の根源は、ルールのロジック自体よりも、その前提となるデータの品質、つまり「設計ミス」にあります。本記事で解説した5つの失敗パターンは、多くの現場で見られる課題です。

相関分析が失敗する5つの根本原因

  • 失敗パターン1:ログ欠損
  • 失敗パターン2:正規化不足
  • 失敗パターン3:時間同期ズレ
  • 失敗パターン4:重複イベント
  • 失敗パターン5:コンテキスト不足

これらの課題を克服するには、まず自社のデータ連携の現状を把握し、一つひとつ地道に改善していく運用プロセスの見直しが不可欠です。

さらに、XDRのような新しいテクノロジーは、高品質なTelemetryによって従来型SIEMが抱えていた課題を構造的に解決する強力な選択肢となります。現状の運用の改善と、新しいソリューションの活用という両面から、より高度な脅威検知体制の構築を目指しましょう。

よくある質問(FAQ)

Q1: 相関ルールのチューニングは何から始めればよいですか?

A1: まずは、最も頻繁に発生している「誤検知アラート」の原因となっているルールから見直すのが効率的です。特定のIPアドレスや正規の管理業務に起因するアラートであれば、ホワイトリスト登録閾値調整から始めましょう。アラートの発生頻度とリスクの重要度をマッピングし、優先順位を付けて計画的に進めることが成功の鍵です。

Q2: SIEMとXDRはどちらを選ぶべきですか?

A2: 目的によって選択は異なります。コンプライアンス対応としてあらゆるログの網羅的な収集・長期保存が最優先ならSIEMが適しています。一方、未知の脅威を含む高度なサイバー攻撃をリアルタイムで検知・対応(Detection & Response)することに重点を置くなら、高品質なデータを活用するXDRが強力です。近年では両者を連携させ、長所を活かすハイブリッド運用も増えています。

Q3: テレメトリデータとは、具体的にどのようなデータですか?

A3: テレメトリデータとは、PCやサーバー内部の動作状況を詳細に記録したデータです。例えば、「Word.exeがPowerShell.exeを起動し、そのPowerShellが外部IPアドレスと通信を開始した」といった一連の挙動が含まれます。従来のログが「結果」を記録するのに対し、テレメトリは「プロセス」を詳細に追跡できるため、攻撃者の活動手順を把握する上で非常に価値の高い情報源となります。

この記事のまとめ
  • 相関ルールが機能しない根本原因は、ルール自体よりもデータ品質やシステム連携における「設計ミス」であることを深く理解しましょう。
  • ログ欠損、正規化不足、時間同期ズレ、重複イベント、コンテキスト不足の5つの失敗パターンを具体的に把握し、自社の課題として捉えることが重要です。
  • 現状のSIEM運用における課題を克服するためには、データ連携の棚卸しと、地道かつ体系的な改善プロセスを継続的に実施する必要があります。
  • XDRのような新しいテクノロジーが提供する高品質なTelemetryは、従来のSIEMの限界を補完し、より高度で効率的な脅威検知を可能にします。
  • これらの知見を活かし、データ品質設計と新しいソリューション導入の両面から、自社のセキュリティ運用を飛躍的に向上させましょう。

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初回公開日:2026年01月19日

記載されている内容は2026年01月19日時点のものです。現在の情報と異なる可能性がありますので、ご了承ください。また、記事に記載されている情報は自己責任でご活用いただき、本記事の内容に関する事項については、専門家等に相談するようにしてください。

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