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ABM/ASM運用の実務ガイド:Apple端末の調達から廃棄までのライフサイクル管理を徹底解説

更新日:2026年01月16日

ITキャリア

1分でわかるこの記事の要約 ABM/ASMは、Apple端末の法人管理を効率化し、運用の負担を軽減する無料Webポータルです。 ゼロタッチ導入により、端末のキッティング作業を大幅に削減し、迅速な展開を実現します。 MDM […]

1分でわかるこの記事の要約
  • ABM/ASMは、Apple端末の法人管理を効率化し、運用の負担を軽減する無料Webポータルです。
  • ゼロタッチ導入により、端末のキッティング作業を大幅に削減し、迅速な展開を実現します。
  • MDMと連携することで、セキュリティポリシー適用、アプリ管理、リモートワイプなどの詳細設定が可能になります。
  • 端末の調達から廃棄まで、各ライフサイクルフェーズで管理者の負担を軽減し、資産の有効活用を促進します。
  • ABM/ASM導入成功には事前の運用設計、適切なMDM選定、資産管理台帳との連携が不可欠です。
企業のDX推進に伴い、業務でiPhone、iPad、MacといったApple製端末を導入するケースが急増しています。しかし、その裏側で情報システム部門(情シス)の担当者は、端末のキッティング、資産管理、セキュリティ対策といった煩雑な業務に追われているのではないでしょうか。 本記事では、こうした課題を解決する鍵となるApple Business Manager (ABM)Apple School Manager (ASM) を活用した、効率的かつ安全な端末ライフサイクル管理の業務フローを、調達から廃棄までの実務に沿って徹底的に解説します。

ABM/ASMとは?Apple端末の法人管理を革新する基本知識

まず、効率的な端末運用設計の土台となるABM/ASMの基本から押さえましょう。これらは単なるツールではなく、組織におけるApple端末管理の考え方を根本から変えるプラットフォームです。

Apple Business Manager (ABM) と Apple School Manager (ASM) の概要

Apple Business Manager(ABM)は法人組織向け、Apple School Manager(ASM)は教育機関向けに提供される、Webベースの無料ポータルです。これらは、旧来のDEP(Device Enrollment Program)とVPP(Volume Purchase Program)の機能を統合し、より強力な管理機能を提供します。

ABM/ASMの主な機能

  • デバイスの自動登録:組織が購入したApple端末を、自動的に自社のABM/ASMアカウントに紐付けます。
  • アプリとブックの一括購入・配布:App Storeのアプリや電子書籍を組織として一括購入し、管理下の端末やユーザーに配布・割り当てが可能です。
  • 管理対象Apple IDの作成・管理:組織のドメインを使ったApple IDを作成し、従業員や生徒のiCloudストレージ利用などを管理できます。

これらの機能により、組織は所有するすべてのApple端末を一元的に把握し、管理下に置くことができるようになります。

ABM/ASMが実現する「ゼロタッチ導入」の威力

ABM/ASM運用の最大のメリットが「ゼロタッチ導入」です。これは、情報システム部門の担当者が端末の箱を一切開封することなく、ユーザーの手元に届いた時点で自動的に初期設定(Enrollment)が完了する仕組みを指します。

従来、数十台、数百台の端末を導入する際には、一台ずつ箱から取り出し、Wi-Fi設定、Apple IDの設定、業務アプリのインストールといった「キッティング」と呼ばれる手作業が必要でした。この作業は非常に時間がかかり、ヒューマンエラーのリスクも伴います。

ゼロタッチ導入では、ユーザーが新品の端末の電源を入れ、Wi-Fiに接続するだけで、あらかじめ設定された構成プロファイルやアプリケーションが自動的にインストールされます。これにより、運用担当者の負担軽減はもちろん、テレワーク環境下で従業員に直接端末を送付することも可能になり、迅速な業務開始を実現します。

MDMとの連携がABM/ASM運用の鍵

ここで重要なのが、ABM/ASMはMDM(Mobile Device Management)と連携して初めてその真価を発揮するということです。ABM/ASMの役割は、あくまで「その端末がどの組織に所属しているか」をAppleのサーバー上で紐付け、MDMへの登録を”自動化”することにあります。

実際の端末に対する詳細な設定や管理(例:パスコードポリシーの強制、特定の機能の制限、アプリのサイレントインストール、リモートワイプなど)は、すべてMDMソリューションが行います。

つまり、ABM/ASMを「入口」、MDMを「実務部隊」と捉えると分かりやすいでしょう。Microsoft IntuneJamfといった代表的なMDM製品とABM/ASMを連携させることで、強力でシームレスな端末管理の業務フローが完成するのです。


【フェーズ別】ABM/ASMとMDMを活用した端末ライフサイクル業務フロー

ここからは、端末のライフサイクルである「調達・購入」「配布・展開」「運用・管理」「回収・返却」「廃棄・リプレース」の5つのフェーズに分け、ABM/ASMとMDMを連携させた具体的な業務フローと実務上のポイントを解説します。

フェーズ1:調達・購入 – ゼロタッチ導入の第一歩

効率的な端末ライフサイクル管理は、端末の購入段階から始まっています。

まず、ゼロタッチ導入を実現するためには、AppleまたはApple正規販売代理店から端末を購入することが必須条件です。購入時に、自社の「組織ID」と販売代理店の「リセラーID」を互いに伝え、紐付けてもらう必要があります。これにより、購入した端末のシリアル番号が自動的に自社のABM/ASMポータルに登録されるようになります。

この段階での業務フローは以下の通りです。

  • 販売代理店に組織IDを伝え、ABM/ASMへの自動登録を依頼して端末を発注。
  • 端末の出荷後、ABM/ASMポータルにシリアル番号が反映されたことを確認。
  • ABM/ASMポータル上で、登録された端末をどのMDMサーバーで管理するかを割り当てる。
  • MDMの管理画面にデバイス情報が同期されたことを確認。
  • 同時に、IT資産管理台帳に、シリアル番号、購入日、機種、資産番号といった初期情報を登録します。この時点から資産管理を始めることが重要です。

フェーズ2:配布・展開 – キッティング業務の劇的な効率化

端末がMDMに登録されれば、配布と展開のプロセスは劇的に変わります。従来の煩雑なキッティング作業は不要になります。

業務フローは非常にシンプルです。

  • 運用担当者は、MDM上で配布対象のユーザーグループに応じた「構成プロファイル」を事前に準備します。これにはWi-Fi設定、メールアカウント、パスコードポリシー、機能制限などが含まれます。
  • 必要な業務アプリケーションも、MDM経由で自動インストールするように設定しておきます。
  • 端末をユーザーに貸与(または配送)します。
  • ユーザーは端末の電源を入れ、言語・地域を選択し、Wi-Fiに接続します。
  • すると、端末は自動的にAppleのサーバーにアクセスし、自社の管理下にあることを認識。「リモートマネジメント」画面が表示され、MDMへの登録(Enrollment)が促されます。
  • ユーザーが手順に沿って進めるだけで、事前にMDMで設定された構成プロファイルやアプリがすべて自動で展開され、すぐに業務で使える状態になります。

このフローにより、運用担当者は物理的に端末に触れることなく展開作業を完了でき、大幅な負担軽減と導入スピードの向上につながります。

フェーズ3:運用・管理 – セキュリティと利便性の両立

端末の貸与後、運用・管理フェーズではセキュリティの維持と継続的な資産管理がテーマとなります。

ABMとMDMを連携させることで、以下のような管理が可能です。

  • セキュリティポリシーの維持:OSのアップデートを促したり、紛失時に遠隔で端末をロック(リモートロック)やデータ消去(リモートワイプ)したりすることで、情報漏洩リスクを最小限に抑えます
  • アプリの管理:業務で必要なアプリを追加で配布したり、不要になったアプリを削除したりといった管理を遠隔で一括して行えます。
  • コンプライアンスの確保:禁止アプリのインストールを制限したり、特定の機能(カメラ、App Storeなど)を無効化したりすることで、組織のコンプライアンスを維持します。

また、このフェーズで重要になるのが定期的な「棚卸し」です。IT資産管理台帳の情報を最新に保つため、誰がどの端末を利用しているかを定期的に確認する必要があります。MDMには、管理下の端末から情報を自動で収集する機能があります。この情報を資産管理台帳と突合させることで、棚卸し業務を大幅に効率化し、正確性を高めることができます。

フェーズ4:回収・返却 – スムーズなデータ消去と再利用

従業員の退職や部署異動に伴い、端末を回収する際の業務フローも、ABM/ASM環境下では安全かつ効率的になります。

従来の課題として、ユーザーが私用のApple IDを設定したまま返却してしまい、「アクティベーションロックがかかって端末が再利用できなくなる問題」がありました。

ABM/ASMとMDMで管理された端末では、以下のフローでスムーズな回収が可能です。

  • 従業員からの返却を受け付け、回収手続きを開始。
  • MDMの管理コンソールから、対象端末に対してリモートワイプ(初期化)命令を送信。これにより、端末内のデータは完全に消去され、情報漏洩を防ぎます。
  • ABM/ASMで管理されている端末は、MDMからアクティベーションロックを解除するコマンドを送信できるため、万が一ロックがかかっていても問題なく初期化できます。
  • 初期化された端末は、すぐに次の利用者への再配布(再キッティング)が可能です。

このように、回収から再利用までのプロセスを自動化することで、管理者の負担を減らし、IT資産の有効活用を促進します。

フェーズ5:廃棄・リプレース – 安全なIT資産の処分

端末が故障したり、リース期間が満了したりして廃棄する際も、適切な手順を踏むことがコンプライアンス上、非常に重要です。

廃棄時の業務フローは以下の通りです。

  • 廃棄対象の端末を特定し、MDMからリモートワイプを実行してデータを完全に消去します。
  • データの消去が完了したことを確認後、MDMの管理コンソールから該当デバイスの登録を削除します。
  • 最後に、ABM/ASMポータルからも該当デバイスを「解放」します。これにより、組織との紐付けが完全に解除されます。
  • 物理的な廃棄は、信頼できる専門業者に依頼します。

これらの手順を確実に踏むことで、廃棄する端末からの情報漏洩を完全に防ぎ、安全なIT資産のライフサイクルを完結させることができます。


ABM/ASM運用を成功させるための3つの重要ポイント

ABM/ASMとMDMを導入するだけでは、理想的な端末管理は実現しません。ツールを最大限に活用し、運用を成功させるためには、3つの重要なポイントがあります。

1. 成功の鍵は事前の「運用設計」にあり

  • 設計の重要性: 最も重要なのは、導入前の「運用設計」です。場当たり的な運用は、将来的に混乱を招き、管理コストを増大させます。
  • 明確なルール設定: 管理ポリシー、配布・回収ルール、アプリ管理、トラブル対応フローを関係部署と連携し、事前に明確に定めます。
  • ライフサイクル全体での視点: 一貫性のあるスムーズな端末管理を実現するため、ライフサイクル全体を見据えた設計が不可欠です。

2. 自社に合った「MDMソリューションの選定」

  • MDMの役割: ABM/ASM運用の実務はMDMが担うため、自社の要件に合ったMDMソリューションを選ぶことが極めて重要です。
  • 比較検討項目: 対応OSと機能、管理規模と価格、操作性とサポート体制を十分に比較検討しましょう。
  • 最適な選択: 自社のITリソースや管理レベルに応じて、最適なMDMを選ぶことが成功への近道です。

3. 「資産管理台帳との連携」と棚卸しの自動化

  • IT資産管理の一環: ABM/ASMとMDMによる端末管理はIT資産管理の一部であり、既存の資産管理台帳との連携が重要です。
  • API連携の活用: 多くのMDMが持つAPI経由でのデバイス情報出力機能を活用し、資産管理システムと連携させましょう。
  • 効率化と正確性: これにより、棚卸し業務の自動化が可能となり、手作業による工数を削減し、IT資産の正確な把握と管理業務の劇的な効率化が実現します。

よくある質問(FAQ)

Q1: 中古で購入したiPhoneやiPadをABMに登録できますか?

A1: 原則として、ABM/ASMへの自動登録はAppleまたは正規販売代理店から新規購入した端末のみが対象です。中古端末は登録できません。ただし、macOSの場合は「Apple Configurator」というツールで手動追加する方法がありますが、機能が制限される場合があるため、ゼロタッチ導入のメリットを最大限に活かすには新規購入が推奨されます。

Q2: 従業員の私物端末を業務利用するBYODでもABMは使えますか?

A2: ABM/ASMは、あくまで組織が所有する端末を管理する仕組みです。従業員の私物端末を業務利用するBYOD(Bring Your Own Device)には適していません。BYODの場合は、「ユーザー登録(User Enrollment)」という別の仕組みを利用します。これは、端末全体ではなく仕事用の領域のみをMDMで管理する方式で、従業員のプライバシーを保護しつつセキュリティを確保できます。

Q3: 導入にあたり、専門的な知識は必要ですか?

A3: ABM/ASMやMDMの基本的な仕組みを理解する必要はありますが、高度な専門知識が必須ではありません。最近のクラウド型MDMは直感的に操作できるものが多く、サポートも充実しています。また、導入設計から運用までを支援してくれる専門のサービスパートナーも存在するため、自社のリソースに不安がある場合は外部の専門家を活用するのも有効な選択肢です。


まとめ:ABM/ASMで次世代のApple端末ライフサイクル管理へ

ABM/ASMとMDMを連携させた端末管理は、もはや一部の先進的な企業だけのものではありません。働き方が多様化し、セキュリティの重要性が増す現代において、すべての企業にとってスタンダードとなるべき運用手法です。

本記事で解説した「調達」から「廃棄」までのライフサイクル全体を見据えた業務フローを導入することで、

  • 情シス担当者の日々の負担を大幅に軽減
  • 堅牢なセキュリティとコンプライアンスの確保
  • 従業員の生産性や満足度の向上

といった多くのメリットが期待できます。

まずは自社の現状の端末管理フローを洗い出し、課題を明確にすることから始めてみてはいかがでしょうか。そして、その課題解決の最適な手段として、ABM/ASM運用の導入をぜひご検討ください。

この記事のまとめ
  • ABM/ASMとMDMの連携は、Apple端末の法人管理において標準となるべき運用手法です。
  • 調達から廃棄までのライフサイクル管理を最適化し、情報システム部門の負担を大幅に軽減します。
  • 堅牢なセキュリティとコンプライアンスを確保し、情報漏洩リスクを最小限に抑えられます。
  • 従業員の生産性向上にも繋がり、企業のDX推進を加速させる強力なツールとなります。
  • まずは現状の管理フローを見直し、ABM/ASM導入による具体的な改善点を検討しましょう。

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初回公開日:2026年01月16日

記載されている内容は2026年01月16日時点のものです。現在の情報と異なる可能性がありますので、ご了承ください。また、記事に記載されている情報は自己責任でご活用いただき、本記事の内容に関する事項については、専門家等に相談するようにしてください。

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