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ゼロトラストとは?わかりやすく解説|SASEとの違い、VPN代替の実現方法まで

更新日:2026年01月16日

ITキャリア

1分でわかるこの記事の要約 ゼロトラストは「何も信頼しない」を前提とし、社内外問わずすべての通信アクセスを厳格に検証するセキュリティ概念です。 テレワークやクラウド利用の拡大により、従来の境界型防御やVPNでは対応しきれ […]

1分でわかるこの記事の要約
  • ゼロトラストは「何も信頼しない」を前提とし、社内外問わずすべての通信アクセスを厳格に検証するセキュリティ概念です。
  • テレワークやクラウド利用の拡大により、従来の境界型防御やVPNでは対応しきれないセキュリティ課題が顕在化しました。
  • SDP、マイクロセグメンテーション、IDaaS、多要素認証、EDRなどの技術を組み合わせることでゼロトラストを実現します。
  • SASEやSSEは、ゼロトラストの思想を具体化する統合型セキュリティアーキテクチャとして注目されています。
  • 初期コストや運用体制の課題はありますが、段階的な導入により企業のセキュリティレベルを飛躍的に向上させます。

リモートワークやクラウドサービスの利用が当たり前になった現代、従来のセキュリティ対策に限界を感じていませんか。「社内は安全、社外は危険」という「境界型防御」の考え方では、巧妙化するサイバー攻撃や内部からの情報漏洩を防ぎきれません。

この課題を解決する新たな概念が「ゼロトラスト・ネットワーク」です。本記事では、ゼロトラストの基本から、混同しやすいSASEとの違い、具体的な実現方法までを網羅的に解説します。


ゼロトラストとは?基本概念と今求められる理由

ゼロトラスト(Zero Trust)は、その名の通り「何も信頼しない(Trust No One, Verify Everything)」ことを前提としたセキュリティの考え方です。

従来の境界型防御が、城壁で内部を守るように「内側は信頼できる」と考えるのに対し、ゼロトラストは社内外のネットワークを問わず、すべての通信を信頼できないものとして扱います。そして、情報資産へのアクセス要求があるたびに、その正当性を厳密に検証することでセキュリティを確保します。

なぜ今、ゼロトラストが必要なのか?

ゼロトラストが求められる背景には、働き方とIT環境の大きな変化があります。

  • テレワークの普及: 従業員が自宅や外出先など、安全とは限らないネットワークから社内リソースにアクセスするようになった。
  • クラウドサービスの拡大: 業務データが社内だけでなく、AWSやMicrosoft 365といった複数のクラウド上に分散するようになった。

これにより、守るべきネットワークの「境界」が曖昧になり、従来のファイアウォールやVPN(Virtual Private Network)を中心とした対策だけでは不十分になったのです。

ゼロトラストの3つの基本原則

ゼロトラストの3つの基本原則

  • 明示的な検証 (Verify Explicitly) アクセスするユーザーのID、デバイスの状態、場所、アクセス先のアプリなど、利用可能なすべてのデータに基づき、都度認証・認可を行います。
  • 最小権限の原則 (Use Least Privileged Access) ユーザーには業務に必要な最低限のアクセス権のみを付与します。万が一IDが侵害されても、被害を最小限に抑えることができます。
  • 侵害の想定 (Assume Breach) ネットワークの内外を問わず、常に脅威が存在するという前提に立ちます。すべての通信を監視・分析し、脅威の可視化と迅速な対応を目指します。

この概念は、米国の国立標準技術研究所(NIST)が発行したガイドライン「SP 800-207」でも詳細に定義されており、ゼロトラスト実現の論理的な枠組みとして世界中で参考にされています。


ゼロトラストを実現する4つの主要技術

ゼロトラストという概念を実現するには、様々な技術要素を組み合わせる必要があります。ここでは、その中核となる主要な技術を4つ解説します。

1. SDP (Software Defined Perimeter)

  • 概要: アプリケーションやサーバーといった情報資産をインターネットから隠蔽し、認証されたユーザーにしかリソースの存在を見せない技術です。「ブラッククラウド」とも呼ばれ、認証が成功して初めて、ユーザーと特定アプリ間に暗号化された安全な通信経路を確立します。アプリケーション単位でのきめ細やかなアクセス制御が可能です。

2. マイクロセグメンテーション

  • 概要: ネットワーク内部を論理的に小さなセグメントに分割し、セグメント間の通信を厳しく制御する技術です。万が一、一つのセグメントがマルウェアに感染しても、攻撃者が内部の他サーバーへ自由に移動(ラテラルムーブメント)するのを防ぎ、被害をそのセグメント内に封じ込めます

3. ID管理 (IDM) と多要素認証 (MFA)

  • 概要: 誰がアクセスしているのかを正確に把握するため、IDaaS (Identity as a Service)などのID管理ソリューションが重要です。さらに、パスワードだけの認証は危険なため、多要素認証(MFA)の導入が必須です。IDとパスワードに加え、スマートフォンアプリや生体情報などを組み合わせ、不正アクセスを防ぎます。

4. EDR/XDRによるエンドポイントセキュリティ

  • 概要: PCやスマートフォンなどのエンドポイントは、マルウェア感染の入り口になりがちです。EDR (Endpoint Detection and Response)XDR (Extended Detection and Response)を導入し、エンドポイントの操作を常時監視。不審な挙動を早期に検知し、侵入後の迅速な対応を可能にします。

ゼロトラストとSASE・SSEの関係性

ゼロトラストを調べていると、必ずSASE(サシー)SSE(エスエスイー)という言葉を目にします。これらの関係性を正しく理解しましょう。

  • SASE (Secure Access Service Edge): ネットワーク機能(SD-WANなど)とセキュリティ機能をクラウド上で統合し、単一のサービスとして提供するフレームワークです。
  • SSE (Security Service Edge): SASEからネットワーク機能を除き、セキュリティ機能群(SWG, CASB, ZTNAなど)に特化したソリューションです。

端的に言えば、ゼロトラストが「何をすべきか」という設計思想・概念であるのに対し、SASEやSSEは「それをどう実現するか」という具体的なアーキテクチャ・ソリューションの一つです。SASE/SSEを導入することは、ゼロトラストを実現するための効果的な手段と言えます。


ゼロトラスト導入のメリットとVPNが抱える課題

ゼロトラストへの移行は、既存のVPNを中心としたリモートアクセス環境の見直しから始まります。

ゼロトラスト導入の主なメリット

  • セキュリティの抜本的向上: 場所を問わず全てのアクセスを検証するため、外部攻撃や内部不正のリスクを大幅に低減できます。
  • 安全で快適なリモートワーク: VPN代替として機能し、ユーザーは許可されたアプリにしか接続できないため安全です。また、VPNの帯域逼迫問題も解消されます。
  • クラウド利用のセキュリティ統制: 複数のクラウドサービスへのアクセスを単一のプラットフォームで可視化・制御でき、運用負荷の軽減とコンプライアンス強化に繋がります。

従来のVPNが抱える課題

  • 帯域の逼迫: 全社員がテレワークで一斉に接続すると、VPNゲートウェイがボトルネックになり通信速度が低下する。
  • 単一障害点: VPN装置の故障が業務全体の停止に繋がるリスクがある。
  • 過剰な信頼: 一度VPNに接続すると、社内ネットワークへ広くアクセスできてしまうため、マルウェアの侵入・拡散リスクが高い。

導入時の注意点(デメリット)

  • ゼロトラストへの移行はメリットが多い一方、初期コストやライセンス費用新たな運用体制の構築といった課題も存在します。
  • 既存システムとの互換性確認も必要であり、段階的な導入計画が成功の鍵となります。

ゼロトラスト・ネットワークを支えるセキュリティ機能群

ゼロトラストは、以下のような複数のセキュリティ機能が連携して成り立っています。

ゼロトラストを支えるセキュリティ機能

  • SWG (Secure Web Gateway): インターネットアクセスを仲介し、URLフィルタリングやマルウェアスキャンで危険なWebサイトからユーザーを保護します。
  • WAF (Web Application Firewall): SQLインジェクションなど、Webアプリケーションの脆弱性を狙った攻撃からサーバーを守ります。
  • NAC (Network Access Control): 社内ネットワークに接続するデバイスを検疫し、セキュリティポリシーを満たすデバイスのみ接続を許可します。
  • DNS Filtering (Secure DNS): DNSの名前解決を利用し、マルウェア配布サイトなど不正なドメインへのアクセスを未然にブロックします。
  • Proxy / Reverse Proxy: クライアントの代理(Proxy)やサーバーの代理(Reverse Proxy)として通信を仲介し、通信内容の検査やサーバーの保護を行います。

中小企業向けゼロトラスト導入の4ステップ

「ゼロトラストは大企業向け」と思われがちですが、クラウドを活用する中小企業にこそ不可欠です。現実的な導入ステップを紹介します。

  • Step1: 現状把握と目的の明確化 守るべき重要資産は何か、現在のセキュリティ課題(VPNの性能、クラウドの不安など)は何かを洗い出し、導入目的を明確にします。
  • Step2: スモールスタートでの導入計画 いきなり全社展開せず、まずは特定の部署や重要なアプリを対象に段階的に導入します。例えば「全社員のMFA強化」や「開発部門のVPN廃止」など、具体的な計画を立てます。
  • Step3: ソリューションの選定とPoC(概念実証) 自社の課題に合った製品・サービスを比較検討します。近年は中小企業でも導入しやすいSSEプラットフォームが増えています。候補を選定後、PoC (Proof of Concept) を実施し、効果や影響を検証します。
  • Step4: 段階的な展開と運用改善 PoCで問題がなければ、計画に沿って対象範囲を広げます。導入後はアクセスログを継続的に監視し、ビジネスの変化や新たな脅威に対応するため、ポリシーを常に見直していくことが重要です。

まとめ

本記事では、ゼロトラスト・ネットワークの基本概念から、SASE/SSEとの関係性、VPNからの移行、そして具体的な導入ステップまでを解説しました。

リモートワークとクラウドが前提となった現代において、「何も信頼しない」を原則とするゼロトラストは、もはや特別なものではなく、すべての企業にとって必須のセキュリティモデルとなりつつあります。

SASEやSSEといった統合ソリューションを活用し、自社の状況に合わせて段階的に導入を進めることが成功への近道です。まずは自社のセキュリティ課題を洗い出し、ゼロトラスト化に向けた第一歩を踏出してみてはいかがでしょうか。

この記事のまとめ
  • ゼロトラストは、従来の境界型防御に代わり、すべてのアクセスを検証する新たなセキュリティモデルです。
  • テレワークやクラウドサービスの普及により、その必要性が高まり、企業のセキュリティ課題解決に貢献します。
  • SDPや多要素認証、EDRなど多様な技術を組み合わせることで、強固なセキュリティ環境を構築できます。
  • SASEやSSEといったクラウドネイティブなソリューションは、ゼロトラスト実現の具体的な手段を提供します。
  • コストや既存システムとの互換性に配慮しつつ、段階的に導入を進めることが成功への鍵となります。

よくある質問(FAQ)

Q1: ゼロトラストを導入すればVPNは完全に不要になりますか?

A1: 多くの場合、ZTNA/SDPといったゼロトラスト・ソリューションがVPNの役割を代替できます。特にアプリへのリモートアクセスが主目的なら、VPNは不要になる可能性が高いです。ただし、一部のレガシーシステム等でVPNが必要な場合もあるため、既存環境を精査し、段階的に移行するのが一般的です。

Q2: ゼロトラストの導入コストはどのくらいかかりますか?

A2: コストは、導入規模、機能、ユーザー数によって大きく変動します。クラウドベースのSSEサービスであれば、ユーザー単位の月額(または年額)ライセンスが中心となり、初期費用を抑えてスモールスタートできます。複数の製品を個別に導入・運用するコストと比較し、TCO(総所有コスト)の観点で検討することが重要です。

Q3: 既存のセキュリティ製品とゼロトラストは併用できますか?

A3: はい、併用できます。ゼロトラストは既存対策をすべて置き換えるのではなく、連携させて強化するアプローチです。例えば、既存のEDRやID管理システムと連携させることで、より精度の高いアクセス制御が実現できます。自社の資産を活かしながら、段階的に構築していくことが可能です。

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初回公開日:2026年01月14日

記載されている内容は2026年01月14日時点のものです。現在の情報と異なる可能性がありますので、ご了承ください。また、記事に記載されている情報は自己責任でご活用いただき、本記事の内容に関する事項については、専門家等に相談するようにしてください。

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