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更新日:2024年10月09日
「援用」という言葉は、日常生活の中では、あまり見かけない言葉です。「援用」は、特に、法律について語られるときに、多用されています。意味を知らないと、内容を推察しづらい言葉です。使い方や文例をもとに、「援用」という言葉の意味を理解しましょう。
【文例】 「取締役の就任承諾については、株主総会議事録の記載を援用する」 株式会社の取締役が交代した場合は、商業登記法にもとづく登記が必要になります。就任した取締役の「就任承諾書」を添付する必要がありますが、株主総会で、選任された取締役が、「取締役への就任を承諾します」と宣言している場合は、株主総会議事録が承諾書の代わりになります。 株主総会議事録には、該当する取締役が「就任を承諾した」旨の記載がされています。この部分を承諾書代わりとして、使用するという意味で、「記載を援用」という表現を使います。
「時効の援用」とは、「時効によって利益を受ける者が、時効の利益を受ける旨の意思表示」(民法145条)と定義されています。「時効の援用」によって、初めて時効の効果が生じるともいえます。当事者が、時効を援用することによって、時効が確定します。逆に、当事者は、時効の利益を放棄することもできます。 時効の援用が必要なのは、ニュースやドラマで耳にする、犯罪の時効ではなく、民法で規定されている時効です。借りたお金も、黙って一定期間返さなければ、時効によって、「なかったもの」になります。
例えば、次のような事例で考えてみましょう。 「半世紀も前に、祖父が借金をして事業を立ち上げましたが、身内は誰も借金の存在を知りませんでした。相手からも何の催促もなかったにも関わらず、突然、証文を持って「さあ、返せ」と貸主の身内がやってきました。」あなたなら、どうしますか? ある人は、「そんな昔の借金なんて、知らない」と門前払いにするでしょう。半世紀前というと、金銭貸借の消滅時効を、確実に主張できます。「50年間一度も、催促を受けたことがありません。そんな借金の存在を知りませんでした。」と主張することが、「時効の援用」です。 一方、「借金も知らなかったし、催促を受けたこともないので、時効にかかっているだろうけれど、祖父が借りたお金を踏み倒すのも忍びない」と考え、「わかりました。肩代わりして払います。」と、借金の存在をあらためて受け入れる行為が、「時効の利益の放棄」と呼ばれます。
「援用」とは、法律用語としては、民法をはじめ、法律の条文から、申請手続きなどの、記述様式(きまり文句)として、多用されています。法律用語で「援用」が使われている場合は、「裁判所などの法律機関に対して、権利を行使することを伝える」という意味だと解釈すると良いでしょう。 この意味で解釈すれば、「時効の援用」は、「時効を適用することを宣言します」ということだと、理解できます。「証拠の援用」は、「使える証拠があるなら使いますと主張した」という意味に解釈でき、「抗弁権の援用」は、「いいわけできるものは、使います」という意味に解釈できます。
ご紹介してきたように、「援用」には、一般的な意味もありますが、多くは法律用語として使われています。あまり日常会話には使わない言葉ながら、日常生活に無関係なわけではありません。「時効の援用」などは、知らないとちんぷんかんぷんな言葉であり、自分の利益を逸してしまう可能性もあります。 法律用語というと、少し難しいイメージはありますが、日常生活の中でも損をすることのないよう、言葉の意味はきちんと押さえておきましょう。
記載されている内容は2018年01月12日時点のものです。現在の情報と異なる可能性がありますので、ご了承ください。
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