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更新日:2024年08月20日
最近、一部の会社の電話応対マニュアルから、「お電話差し上げます」が削除されているようです。理由は、「差し上げます」は「上から目線」と受け取られるから、顧客や取引先には不適切との判断のようです。それは全くの誤解です。何故、誤解なのかを詳しく紹介します。
ビジネスシーンでよく見かける「差し上げます」には、どのような意味があるかご存じですか。「差し上げます」は、「差し」「上げます」の二つのことばから成り立っています。「上げます・上げる」の意味から考えていきましょう。
「上げる」ということばは、本来、「物を、低い所から高い方へ動かす」場合に用いられ、言い方を変えれば「下から上へ」となります。 これを人間に置き換えれば、「目下から目上」となり、目下の者から目上の者へ物を動かす際に、上げると使うようになり、転じて、何かの行為をする場合も使うようになりました。これに対して、「目上から目下へ」の場合は、下るではなく、「やる・与える」を使うようになりました。
具体的な使い方で説明します。「目下から目上」の場合として、生徒が先生に対して、「先生に、誕生日のプレゼントを上げました」と言いますが、「先生に誕生日のプレゼントをやりました(与えました)」とは言いませんし、使っている人はほとんどいないでしょう。 次に、「目上から目下」の場合として、親が子供に対して「子供に、誕生日のプレゼントをやりました(与えました)」が正しい使い方です。ところが、最近「子供に、誕生日のプレゼントを上げました」という使い方が大変多くなってきました。これは、意味から考えると正しい使い方とはいえないでしょう。
また、最近「犬に餌を上げる」、「花に水を上げる」という言い回しが増えていますが、正しい言い方は「犬に餌をやる」、「花に水をやる」です。 さらに、物に対して使っていることもあり、例えば料理番組で「塩を多めに振って上げます」「野菜を細かく切って上げます」と表現しています。正しくは、「塩を多めに振ってやります」「野菜を細かく切ってやります」です。
おそらく、「やる」ということばを誤解あるいは勘違いして、間違った使い方をしてしまっているのだと思います。 整理すると、以下のようになります。 ・「上げる」は、「やる・与える」の謙譲語であり、丁寧語ではありません。 ・「上げる」は、下から上の時に使うものであり、上から下の時には使いません。 ・上から下の時には、「やる・与える」を使います。
敬語は間違った使い方をすることが多々あります。 「差し上げます」が正しい使われ方をしているのか確認していきましょう。
敬語には、「尊敬語」「謙譲語」「丁寧語」の3種類があります。「差し上げます」は、美しい謙譲語です。謙譲語とは、自分を相手より下に置いて、へりくだる(謙る)ことで相手へ敬意を表すことばです。「差し上げる」という動作は、単に、物を下から上へ移動させるのではなく、両手で丁寧に移動させることです。 このことから、「上げます」を更に丁寧で、相手に対してより敬意を表す言い回しにすると「差し上げます」となります。ところが、最近、「差し上げます」という美しい謙譲語が、「違和感がある」「上から目線で偉そうだ」と感じる人が増えているようです。しかし、これは誤解といえます。
原因は「差し上げます」の後半の「上げます」にあるようです。前述のように「上げる」を間違って、「やる・与える」の丁寧語と解釈して使っている人が増えているからです。つまり、「上げる」の上下が逆、つまり上から下となり、「上から目線」になるととらえています。 「差し上げます」は、目上の方への敬語としては、極めて正しい使い方といえます。
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