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EDRの封じ込め(Containment)権限は誰が持つべきか?SOC・情シスで迷わない判断基準と運用設計

更新日:2026年02月18日

ITキャリア

1分でわかるこの記事の要約 EDRの「Containment(封じ込め)」は、サイバー攻撃の被害拡大を防ぐ最重要プロセスです。 Containment権限は、SOC、情シス、現場のいずれかに持たせる選択肢があり、それぞれ […]

1分でわかるこの記事の要約
  • EDRの「Containment(封じ込め)」は、サイバー攻撃の被害拡大を防ぐ最重要プロセスです。
  • Containment権限は、SOC、情シス、現場のいずれかに持たせる選択肢があり、それぞれにメリット・デメリットがあります。
  • 自社のセキュリティ人材、SLA、コスト、ガバナンスの4つの基準で最適な運用体制を判断する必要があります。
  • 迅速かつ正確なContainmentのため、事前の詳細なインシデント対応フローの定義と準備が不可欠です。
  • MDRサービスを活用する場合は、サービス範囲や承認プロセスについてベンダーとの詳細な合意形成が重要です。
EDR(Endpoint Detection and Response)を導入した、あるいは導入を検討しているものの、「インシデント発生時に、誰が、どのタイミングで感染端末を隔離(Containment)するのか」という具体的な運用体制の構築に悩んでいませんか。EDRはサイバー攻撃対策の強力なツールですが、その効果を最大限に引き出すには、脅威検出後の迅速な初動対応、特に「封じ込め」のプロセスが極めて重要です。しかし、このContainmentの権限と対応フローが曖昧なままでは、いざという時に判断が遅れ、被害が甚大化するリスクを抱えることになります。

本記事では、EDR運用における最重要課題である「Containment権限」に焦点を当て、その権限をSOC、情報システム部門(情シス)、現場の誰が持つべきか、それぞれのメリット・デメリットを徹底比較します。

この記事でわかること

  • EDRにおけるContainment(封じ込め)の重要性
  • 権限を持つべき部門(SOC・情シス・現場)のメリット・デメリット
  • 自社に最適な運用体制を判断するための4つの基準
  • 具体的なインシデント対応フローと事前の準備

自社の状況に合わせた最適なインシデントレスポンス体制を構築するための判断基準と、具体的な対応フローまで詳しく解説します。


EDR運用におけるContainment(封じ込め)の重要性

EDR導入後の運用を考える上で、まずContainment(コンテインメント)の役割とその重要性を正しく理解しておく必要があります。これはインシデントレスポンスの成否を分ける最初の関門と言っても過言ではありません。

Containmentとは何か?Quarantine(検疫)との違い

EDRにおけるContainmentとは、マルウェア感染や不正アクセスが疑われるPCやサーバーなどのエンドポイントを、即座にネットワークから隔離し、脅威の拡散を封じ込める行為を指します。これにより、他の端末への感染拡大(ラテラルムーブメント)や、外部のC2サーバーとの通信を遮断し、被害を最小限に食い止めます。サイバー攻撃における初動対応の中核をなす、非常に重要なアクションです。

一方、Quarantine(クアランティン)は、不審なファイルやマルウェアそのものを検出し、特定の安全な領域に隔離・無害化することを指します。ウイルス対策ソフトでよく使われる機能です。Containmentが「端末単位」での隔離であるのに対し、Quarantineは「ファイル単位」での隔離という違いがあります。EDR運用では、Quarantineで対応しきれない、より高度な脅威に対してContainmentが実行されます。

なぜContainment権限の所在が重要なのか?

Containmentの実行には、迅速性正確性という、時に相反する二つの要素が求められます。このバランスを取るために、「誰が意思決定し、実行する権限を持つのか」を事前に明確に定義しておくことが不可欠です。

権限の所在が曖昧な場合、以下のようなリスクが生じます。

  • 対応の遅れによる被害拡大 インシデント発生時、特に夜間や休日など担当者が不在の時間帯に、誰がContainmentを実行するのか決まっていなければ、承認プロセスに時間がかかり、その間にマルウェアが社内ネットワーク全体に拡散してしまう可能性があります。
  • 誤検知による業務停止リスク EDRは稀に正常な通信やプロセスを脅威として誤検知することがあります。もし、基幹システムの重要なサーバーや、経営層のPCを誤って隔離してしまった場合、ビジネスに深刻な影響を及ぼしかねません。そのため、隔離対象の端末が担う業務上の重要度を理解した上で、正確な判断を下す必要があります。

このように、Containmentは「早く、しかし正しく」実行されなければならない非常にクリティカルな操作です。だからこそ、その権限を誰に持たせるかというセキュリティポリシーの策定が、EDR導入の成否を分ける重要な課題となるのです。


EDRのContainment権限を持つ3つの選択肢【SOC・情シス・現場】

それでは具体的に、Containmentの実行権限は誰が持つべきなのでしょうか。主な選択肢として「SOC」「情シス」「現場部門」の3つが挙げられます。それぞれのメリット・デメリットを理解し、自社の運用体制に最適な形を見つけましょう。

選択肢1:SOC(Security Operation Center)が権限を持つ場合

  • メリット: セキュリティアナリストが高度な分析に基づき、確度の高い判断を迅速に下せます。
  • メリット: 24時間365日対応を委託できるため、情シス担当者の深夜対応などが不要になります。
  • メリット: 脅威検出から封じ込めまでの一連の対応を専門家に任せられます。
  • デメリット: 高度な専門サービスのため、MDRサービスの利用には相応の費用がかかります。
  • デメリット: 外部組織であるため、自社の業務やシステムの重要度を理解してもらうための密な連携が不可欠です。
  • デメリット: 権限移譲の範囲や承認プロセスについて、ベンダーと詳細な取り決めが必要です。

選択肢2:情報システム部門(情シス)が権限を持つ場合

  • メリット: 端末の利用者や業務上の重要度を把握しており、業務影響を的確に判断できます。
  • メリット: 関連部署との連携や、社内の意思決定プロセスを迅速に進められます。
  • メリット: MDRサービスを契約するよりもコストを抑えられる可能性があります。
  • デメリット: 高度化するサイバー攻撃を分析・判断できる専門知識を持つ人材の確保が困難です。
  • デメリット: 24時間365日の監視は物理的に難しく、夜間・休日の対応遅延リスクがあります。
  • デメリット: 対応が特定の担当者に集中し、その担当者が不在の場合に対応できなくなる可能性があります。

選択肢3:現場部門(またはCSIRT)が一部権限を持つ場合

  • メリット: 業務影響を最も理解している現場が判断するため、迅速なアクションが可能です。
  • デメリット: セキュリティの専門家ではないため、判断を誤る可能性が高くなります。
  • デメリット: インシデントの報告漏れや隠蔽のリスクがあり、組織全体の統制が難しくなります。

この選択肢は、高度なセキュリティ教育を受けたCSIRT(Computer Security Incident Response Team)のような専門チームが現場と密に連携できる場合に限定されるべきでしょう。一般的には、情シスやSOCが主導権を持つ体制が推奨されます。


自社に最適なEDR運用体制を構築するための4つの判断基準

「SOC」と「情シス」どちらの体制が自社にとって最適なのか。それを判断するためには、以下の4つの基準に沿って自社の状況を客観的に評価することが重要です。

判断基準1:セキュリティ人材の有無と専門性

まず評価すべきは、自社にEDRを運用できる専門知識を持った人材がいるかどうかです。EDRのアラートは、OSの挙動、通信先、プロセスなど多角的なログ分析能力が求められます。

  • 人材がいない/育成の余裕がない場合: 専門家集団であるMDR/SOCサービスへの委託が有力です。
  • 経験豊富な人材がいる場合: 情シス主導での運用も十分に可能です。

判断基準2:インシデント対応の許容時間(SLA)

次に、インシデント検知からContainment実行までに、どれくらいの時間をかけられるかというSLA(Service Level Agreement)の観点です。

  • 24時間稼働のサービス/工場など: 即時対応が必須なため、24時間365日監視のSOCへの委託が不可欠です。
  • 業務時間が日中に限定される場合: 情シスが主担当となり、緊急連絡網を整備する体制も考えられます。

判断基準3:コストとリスクのバランス

EDRの運用体制は、コストとリスクのトレードオフで考える必要があります。

  • MDRサービス利用: 委託費用は発生するが、インシデント対応の質は向上し、被害拡大リスクを低減できます。
  • 情シス運用: 外部委託コストは削減できるが、人材育成コストや、対応ミスによる被害拡大リスクを自社で負うことになります。

MDRの年間コスト」と「インシデント発生時の想定被害額」を天秤にかけ、どちらが合理的な投資かを経営層も巻き込んで判断することが重要です。

判断基準4:組織のセキュリティポリシーとガバナンス

最後に、組織全体の情報セキュリティに関するポリシーやガバナンス体制がどの程度整備されているかも重要な判断基準です。

  • CSIRT等が存在し、連携フローが確立: 情シス主導でも高度な対応が可能です。
  • インシデント対応体制が未整備: プロセス全体を包括的に支援してくれるMDRサービスに頼る方が確実です。

EDRのContainment対応フローと事前の準備

Containment権限の保有者を決定したら、次は具体的な対応フローを定義し、いつでも実行できるように準備しておく必要があります。準備不足は初動対応の遅れに直結します。

事前に定義すべきインシデント対応フロー

インシデント発生時に慌てないよう、以下のような一連の対応フローを文書化し、関係者全員で共有しておきましょう。

  1. アラート検知: EDRが脅威を検知し、管理者に通知します。
  2. トリアージ: アラートの緊急度・重要度を評価し、対応の優先順位を決定します。
  3. 調査・分析: アラートの内容を詳しく調査し、誤検知か実際の脅威(インシデント)かを判断します。
  4. Containmentの意思決定: 調査結果に基づき、Containmentを実行するかを決定します。このプロセスを「誰が」「どのような基準で」行うかを明確に定義しておくことが最も重要です。
  5. 実行: 決定に基づき、EDRの管理コンソールから対象端末のContainmentを実行します。
  6. 復旧と根絶: 隔離した端末からマルウェアを駆除し、脆弱性を修正するなど、根本原因を解決して安全な状態に戻します。
  7. 報告と改善: インシデントの概要、対応内容、影響範囲を関係者に報告し、再発防止策を検討して運用フローを改善します。

誤検知への対応体制も忘れずに

EDRの運用において、誤検知は避けて通れません。正常な業務アプリをインシデントと誤判断してContainmentを実行すると、業務に大きな支障をきたします。

そのため、誤検知が疑われるアラートを迅速に調査し、安全が確認できた場合にContainmentを解除する(あるいは実行しない)フローも必ず定めておきましょう。

MDRサービスを活用する場合の注意点

MDRサービスにContainment対応を委託する場合は、サービス開始前にセキュリティベンダーと以下の点について詳細に確認し、合意しておくことが不可欠です。

  • サービスの範囲(SLA): Containmentの実行はサービスに含まれるか? 24時間365日対応か? 脅威検出から実行までの目標時間は?
  • 実行の承認プロセス: 自動実行か、顧客承認ベースか? 承認が必要な場合の夜間・休日の連絡手段と承認者は誰か?
  • 情報共有と連携体制: インシデント発生時の報告タイミング、報告先は誰か? 自社のCSIRTや情シスとの連携方法は?

これらの点を曖昧にしたまま契約すると、いざという時に「想定と違う」という事態に陥りかねません。


まとめ:EDRの価値は「封じ込め」の運用体制で決まる

EDRの導入は、エンドポイントセキュリティを強化するための重要な一歩です。しかし、ツールを導入するだけでは、サイバー攻撃から企業を守ることはできません。その真価は、脅威を検知した後にいかに迅速かつ的確に「Containment(封じ込め)」を実行できるか、という運用体制にかかっています。

Containmentの権限をSOCに委託するのか、それとも情シスが担うのか。その選択に唯一の正解はありません。自社のセキュリティ人材、事業継続性、コストとリスクのバランス、ガバナンス体制を総合的に評価し、最適な判断を下す必要があります。

この記事を参考に、まずは自社の現状を客観的に把握することから始めてみてください。そして、経営層や関連部署を巻き込みながら、インシデント発生時に誰が、何を、どのように行うのか、具体的なインシデントレスポンス体制の議論を深めていきましょう。


よくある質問(FAQ)

Q1: Containmentは自動で実行すべきですか?手動ですか?

  • これは組織のポリシーとリスク許容度によります。ランサムウェアなど緊急性が極めて高い攻撃には自動実行が有効です。一方、誤検知による業務影響を懸念する場合は、専門家(SOC/情シス)が分析した上で手動で実行する承認ベースのフローが安全です。脅威の深刻度に応じて自動と手動を使い分けるハイブリッドな運用が理想的です。

Q2: 中小企業で情シスが1人しかいません。どのような体制がおすすめですか?

  • 1人情シスや兼任担当者しかいない中小企業の場合、24時間365日の監視や高度な脅威分析は現実的ではありません。このようなケースでは、MDRサービスを利用して専門家に運用を委託することが最も効果的かつ効率的な選択肢となります。自社の担当者は、MDRサービスからの報告を受けて社内調整やユーザー連絡に専念することで、限られたリソースを最大限に活用できます。

Q3: MDRとSOCの違いは何ですか?

  • SOC(Security Operation Center)は、セキュリティ監視・運用を行う「組織や機能」そのものを指す言葉です。一方、MDR(Managed Detection and Response)は、このSOC機能をサービスとして利用する形態の一つです。特にEDR等の情報を専門家が分析し、脅威の検出から封じ込め、復旧支援までを能動的に行う点が特徴で、一般的なSOCサービスより高度で積極的な対応を含むサービスと位置づけられています。
この記事のまとめ
  • EDRのContainment権限の所在は、インシデント発生時の被害を最小限に抑えるための最重要事項です。
  • SOC、情シス、現場の各部門が権限を持つ場合のメリット・デメリットを理解し、自社に合った選択をすることが大切です。
  • 最適な運用体制を構築するには、セキュリティ人材、SLA、コスト、ガバナンスの4つの基準で客観的な評価が求められます。
  • 具体的なインシデント対応フローを事前に定義し、誤検知対応やMDRサービスとの連携事項を確認しておくことで、初動対応の遅れを防ぎましょう。
  • EDRの効果を最大化し、サイバー攻撃から企業を守るためには、ツールの導入だけでなく、その運用体制、特に「封じ込め」の仕組みを確立することが不可欠です。

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初回公開日:2026年02月18日

記載されている内容は2026年02月18日時点のものです。現在の情報と異なる可能性がありますので、ご了承ください。また、記事に記載されている情報は自己責任でご活用いただき、本記事の内容に関する事項については、専門家等に相談するようにしてください。

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