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「せう」の意味と使い方・「しましょう」に変化した理由

更新日:2024年02月13日

言葉の意味・例文

皆さんは歴史的仮名遣いをご存知ですか。今では馴染みの少ない歴史的仮名遣いですが、一昔前までは多くの場面で使用されていた言葉です。その歴史的仮名遣いの中には、頻繁に使われていた「せう」という言葉が存在します。今回は、この「せう」という言葉について紹介します。

「せう」の意味と使い方

今回、焦点を当てて紹介する「せう」という言葉ですが、この言葉の意味を知る前に、まずは歴史的仮名遣いについて理解を深める必要があります。 歴史的仮名遣いとは、名前のとおり、昔に使用されていた仮名遣いのことを指します。「そもそも仮名遣いって何」と思われる方もいるでしょう。仮名遣いとは、仮に付けられた名前のことを「仮名遣い」と呼びます。 例えば、「王様」という言葉があります。これを声に出して読みますと、音としては「おおさま」という音になります。しかし、これを文字に表記しますと「おおさま」ではなく、「おうさま」と表記されます。この「おうさま」という言葉こそ仮名遣いです。したがって、発される言葉ではなく、それを文字に表した言葉を指しています。 先ほどの話しに戻りましょう。歴史的仮名遣いとは、この仮名遣いが現代の仮名遣いではなく、歴史的であることを示しています。つまり、昔に使用されていた仮名遣いだということです。 今回、焦点を当てていく「せう」という言葉も、歴史的仮名遣いの1つであるため、現代では馴染みが薄く、知らない人も多いでしょう。 歴史的仮名遣いについて理解したところで、「せう」という言葉の意味を知りましょう。この「せう」という言葉は、現代の言葉に直しますと「しょう」という言葉に当てはまります。例えば、先ほど筆者が使用した「知りましょう」という言葉は、歴史的仮名遣いに直すと「知りませう」となります。 また、相手に問いかける際には、基本的に「せう」の後、「~せうか」のように「か」を付けることで問いかける分が完成します。ちなみに、例として「手伝いませうか(現代仮名遣いで「手伝いましょうか」)」という使い方が挙げられます。

行きませう

歴史的仮名遣いとはどのようなものなのか、そして「せう」の意味を理解したところで、2つの「せう」使用例を紹介します。 まずは「行きませう」です。先ほど「せう」は「しょう」という意味である事を話しました。これをそのまま当てはめることで訳すことができます。したがって、これは「行きましょう」という意味になります。 会話文として紹介するならば、「今日はどちらへ行きませうか。」という例文が挙げられます。もう訳は必要ないでしょうか。現代の言葉に直しますと、「今日はどこに行きましょうか。」と相手に問いかけている文章となります。

やりませう

こちらも「行きませう」が「行きましょう」という意味の歴史的仮名遣いであることと同様に考えます。したがって、「やりませう」は「やりましょう」という読み方になり、何かに対し行おうとしている状況を示す言葉となります。 この「やりませう」は、多くの場面で使用されるため、「行きませう」に比べて使用された頻度も多いでしょう。例文として挙げるならば、「これらを明日までにやりませう」や「私がやりませうか」という会話文があります。 これらを現代仮名遣いに直しますと、「これらを明日までにやりましょう」という肯定文と、「私がやりましょうか」という疑問文になります。

「しませう」が「しましょう」に変化した理由

今でこそ「しましょう」と表記される言葉ですが、紹介してきたように、一昔前までは「しませう」という歴史的仮名遣いで表記されていました。ここで「なぜ、『しませう』から『しましょう』に変化したのだろうか」と疑問に思う方もいるのではないでしょうか。 この理由として、戦後間もなく、内閣告示によって最初の現代仮名遣いが定められたことが背景にあります。しかし、現在使用されている現代仮名遣いは、この1946年に定められた現代仮名遣いではなく、後に再度定められた内閣告示の現代仮名遣いです。 なぜ内閣告示にによって現代仮名遣いが定められたのでしょう。それは「しませう」という歴史的仮名遣いが、歴史的仮名遣いとして使用されていた時代よりも昔に理由があります。 この歴史的仮名遣いとして使用されていた時代よりも前の時代には、実際に「しませう」という音で言葉を発されていました。しかし、時代と共に、少しずつ「しませう」という発音から「しましょう」に変化し、表記のみ「しませう」のまま残されていました。 しかし、発される言葉と表記される言葉が違うことに違和感を感じる人は少なくありません。そこで、発音と表記を統一するため、内閣告示により現代仮名遣いが定められ、今の形に変化したという経緯があります。 これらが「しませう」から「しましょう」に変化した理由です。

「でせう」の意味

続いて「せう」に「で」という字を加えた「でせう」という歴史的仮名遣いについて紹介します。こちらも意味は「せう」と同じように考えるため、「でせう」は現代仮名遣いで「でしょう」という言葉になります。したがって、会話文では「明日は雨が降るでせう」のように使用されます。 この「でせう」は、「でさうらふ」という言葉が元になっています。この「でさうらふ」は、現代仮名遣いに直すと「で候(そうろう)」となります。したがって、意味は「~でございます。」という目上の人に対して使用する丁寧語です。 この「でさうらふ」が省略される形で「でさう」となり、時を超えて江戸時代に「でせう」という言葉が使用されるようになりました。

「せう」の現代仮名遣い

先ほどより何度も「せう」の現代仮名遣いについては触れてきましたが、ここで再度おさらいしましょう。 「せう」という歴史的仮名遣いは、現代仮名遣いに直すと「しょう」となります。したがって、「~しませう」は「~しましょう」となりますし、「あちらに行きませう」は「あちらに行きましょう」という現代仮名遣いに直すことができます。

「せう」は「しよう」という意味なのか

ここまで「せう」の意味や現代仮名遣いについて紹介してまいりました。したがって、皆さんは「せう」が現代仮名遣いに直されると、「しょう」となることを既に理解していただけているでしょう。 ここで「せう」で間違いやすい勘違いについてお話しさせていただきます。「せう」は「しょう」という表記の歴史的仮名遣いであると説明しました。そこで「ならば『しよう』という意味も『せう』と使われていたのか」と疑問を持つ方も少なくないでしょう。 しかし、「せう」は現代仮名遣いに直すと「しょう」であり、「しよう」とは違う言葉です。実際、「しよう」にも歴史的仮名遣いが存在し、歴史的仮名遣いでは「しやう」と表記されます。 先ほど「せう」は「候(そうろう)」という言葉が省略され、後に使用されるようになった言葉であるという話が出ました。これは、目上の人に対して使用される「です」「ます」という意味を持っています。 対して、「しよう」の歴史的仮名遣い「しやう」は、これから行う事を自分の意思として、相手に伝える意味を持っています。したがって、「せう(しょう)」と「しやう(しよう)」は別の言葉となります。

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初回公開日:2017年11月17日

記載されている内容は2017年11月17日時点のものです。現在の情報と異なる可能性がありますので、ご了承ください。
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