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必修化した「プログラミング授業」とは?小/中/高の授業内容例

プログラミング学習

文部科学省が行う教育の情報化推進による学校教育におけるプログラミング授業の必修化の流れと現状の教育現場におけるプログラミング授業の実際を生徒のプログラミングに対する資質からみた光の当たる可能性と光の当たらない部分に関しての考察

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文部省が進めるプログラミング授業の必修化

「2020年代に向けた教育の情報化に関する懇談会」の最終まとめをもとにしたプログラミング授業

文部科学省の主導で、「2020年代に向けた教育の情報化に関する懇談会」が、平成28年2月から、7月まで5回にわたり開催され将来に向けての学校教育の情報化の検討が行われました。この懇談会の検討結果は、7月28日の最終日に「2020年代に向けた教育の情報化に関する懇談会」最終まとめとして文部科学大臣へ報告されました。 5か月間の5回の懇談会での検討で今後の情報化教育の方向が決められましたが、今後の情報化の方向を決める大切な課題ですので、もう少し時間をかけて議論してもよいはずです。 以下では、文部科学省の方向性や実際の授業、その課題について紹介します。

文部科学省の方向性

2020年代に向けた教育の情報化に関する懇談会  授業でのICT活用が着実に進展し、次期学習指導要領改訂において情報教育の充実やアクティブ・ラーニングへのICT活用が議論される一方、ICT機器等の整備や教員のICT指導力の点で課題も明らかになっている。  また、IoT社会の到来に伴い、外部・地域人材や民間など多様な分野の知見も活用しながら、データを活用した学級・学校経営支援、政策立案支援の可能性も具体化しつつある。このため、教育の情報化に向けた当面の施策の検討を行うとともに、第三期教育振興基本計画も視野に入れた「2020年代に向けた教育の情報化に関する懇談会」(「以下「懇談会」という。」を開催する。

世界から見たICT化の遅れの指摘

OECD 国際教員指導環境調査(TALIS2013)においては,日本は,「生徒は課題や学級 での活用にICT(情報通信技術)を用いる」と回答した教員の割合が参加国中最も少なかった。一方で,諸外国においては,一人一台の情報端末を学校教育に導入している事例や,ICTを活用して学習データを蓄積・分析することで教員の指導の改善につなげている事例もあり,ICTを活用した教育について,国際的にも関心が高まっている。 この中で、2020年 小学校のプログRミング授業の必修化は、日本が世界レベルに追いつこうとする取り組みでもある様です。

ICTとは

ICTは「Information and Communication Technology(インフォメーション アンド コミュニケーション テクノロジー)」の略語で日本では「情報通信技術」と訳されています。 従来よりパソコンやインターネットを使った情報処理や通信に関する技術を指す言葉としては、IT「Information Technology(インフォメーション テクノロジー)」が使われてきました。最近では情報通信技術を利用した情報や知識の共有・伝達といったコミュニケーションの重要性を伝える意味でITよりもICTの方が一般的に使われるようになってきました。

教育現場におけるプログラミング授業の必修化

学校教育のなかでは履修率が低く需要があまりないプログラミング授業

現在、高等学校では、選択科目授業としての「情報の科学」の中にプログラミング教育がありますが、この授業の履修率が低く2割程度といわれています。また、中学校においては、2012年から技術・家庭科の技術分野の授業の中にプログラミングの授業が取り入れられています。この流れの中で、2020年に小学校でのプログラミング授業の必須化が決定されました。

履修率を改善する施策となり得る

高校での履修率が低いのは、小学生からの段階を踏んだレベルアップができていないため、一部の興味のある生徒のみの履修にとどまっているためと考えられます。 そのため、小学生のプログラミング授業の必修化は、段階を踏んだレベルアップを行いプログラミングに興味をもつ生徒の範囲を広げる意味においても重要な意味を持つでしょう。

プログラミングの実際と授業への組み込み

世の中でのプログラミングの認識

プログラミングといえば、ほんの20数年前までは、一部の専門技術者だけが取り組むことのできる特殊技術で、その技術者も専門分野が違えば、対応できないほど深くて狭い技術だったものでした。 機械分野のプログラミングでは、ロボット制御のプログラムが、通信分野では通信装置の内部ファームプログラム、金融分野では大型コンピューターを稼働させるためのCOBOLなどのプログラム、パソコンなどではC言語やアセンブラ,BASICでプログラミングされていました。 いまでは少なくなりましたが、当時の一般の人は、プログラマーというとコンピューターのことなら全部わかると勘違いしている人がほとんどでした。

プログラミング授業と生徒の資質向上がリンクしない部分がある

プログラミングとは、汎用言語もありますが、前述の様に機械を相手に機械専用の言葉で会話や指示をするような作業イメージで、開発する製品に対応した色々な言葉(言語)があり、かなり専門化されたものです。 学校教育においての授業では、これらの専門分野と密接なつながりを持ったプログラミングをどの様に授業に取り入れ、生徒のどの様な資質をどのような方向に向上させようとしているのでしょうか。 特定の産業分野に特化した専門家を育て上げることは目的でないでしょうから、生徒のどの様な資質を向上させたいのかはリンクしない部分が残ります。

平成28年度のプログラミング教育実践ガイドによる授業の違和感

全学年にわたりかなり高度なレベルまでの教育を想定

文部科学省が公表している平成28年度のプログラミング教育実践ガイドによると、

コンピュータを利用して問題を解決するために,手順を論理的に示すアルゴリズムやプログラミン グの基礎的な学習に関する実践事例を紹介します。実践事例の中で行われているICT 機器・ネットワークを利用し た問題解決の過程において評価し改善する活動は,今後の社会を生きる児童生徒の,論理的な思考力や問題解決能 力などを育むために不可欠であり,それらのための実践が積み重ねられていることがおわかりいただけると思いま す。

高校生では、かなり実践レベル

高校の授業では、基本的なアルゴリズムの学習を学び、Web プログラミングやタイマーオブジェクトによる授業オリジナルプログラム製作・C 言語と電子工作・センシングの基礎学習の4コースのプログラミング授業があります。

中学生の段階での具体的プログラミング作業は妥当なレベル

中学校の授業では、ペアで取り組む交差点の信号機プログラミング・車型ロボを制御して課題コースをクリアしよう・プログラミングを利用してLEDを制御しよう・アニメーション制作でプログラミングの基礎学習の4コースの授業があります。

1年生の段階で具体化しすぎている部分もある

小学校の授業でも、「調べた人物をプログラムで表現してみよう」から、「プログラムロボット学習」や「めざせ!行列のできるおすし屋さん!」・「1年生からのプログラミング体験」の4コースの授業があります。

現状における小学生のプログラミング授業

iPadで学習アプリなどを使用

これらのコースの授業が一体どういう内容か実践事例を小学生からのぞいてみますと、 小学1年生では、一人一台配布されたiPad上で、学習アプリで計算などを行ったり、Viscuitという絵を用いての抽象化されたプログラミングで絵本や虫の動きを表示するプログラムを作ったりする授業のようです。

機器に慣れ、入力から出力(結果)を想像する

まずは、パソコンやiPad、タッチペンなどの情報機器に触れることに慣れ、「何に対して何をしたらどうなるか」という入力に対して出力を得るための論理的な思考を身につけさせることから始めているようです。

グループでの作業を学ぶ

高学年の授業になるにつれて絵のように抽象化されていた言語や操作方法がより、具体的になり、論理的な思考に加え新しい発想や共同作業でものづくりを行うためのプロジェクト作業を経験して学んでいくようカリキュラムされています。

世界標準のプログラミング言語も使用

実例としてあげられている学校では、150か国以上で情報処理の学習に使われているScratch(スクラッチ)という本格的な言語を使用しています。

現状における中学生のプログラミング授業

ネットワーク環境やセキュリティに関する授業も含まれる

中学校に進むと、より具体的な結果が求められるプログラミング授業が行われています。ネットワーク環境での無線LANを使ったパソコン同士の接続に加えUSBメモリなどの外部記憶装置の取り扱いなど、現在の社会でも問題となることがあるセキュリティ面に関しての教育まで授業の中で行っています。

プログラミングの対象が物理的な装置にまで具体化している

プログラミングの対象となる機器もLED(発光ダイオード)やロボットなどになり機械制御という専門的な作業もおこなっています。

興味を持つことで、進路選択の幅が広がる

中学生という多感な時期に、将来の職業に密接に結び付く専門的なプログラミングを学ぶことは、生徒の人生に大きな選択肢を与えることになるでしょう。

現状における高校生のプログラミング授業

C言語を使用する授業

実例では、高校生になると、10数年前では、プロの技術者がプログラム開発に使用し、いまでも多くの言語の基礎となっている標準的な言語であるC言語を使用してプログラミングをしています。プログラミング内容もマイコンボードを制御して温度を測定するなどより高度な課題となっています。

WEBプログラミングも使用している

また、他の実例ではWEBプログラミングとしてHTML/CSS によるホームページ作成からJavaScriptを使用しての動きのあるホームページ作成も行っています。今では、HTML/CSSとJavaScriptが使えるとスマホアプリも自作できるサービスもありますので、実用的な課題でもあります。

実践的な授業で即戦力から起業家まで現れる可能性も有る

高校生の段階で、ここまで学習すると、本人の取り組み方次第では、企業に入社しても即戦力となったり、自分自身で起業する方向も考える生徒も出てくるのではないでしょうか。起業するということは、多様な働き方を目指す働き方改革のひとつの方向としても有意義なことになります。

世界初のCPUを発明した日本人に続いてほしい

IBMやマイクロソフト、グーグル、フェイスブックなど、現在の情報処理技術は欧米の企業や起業家が中心となって開発してきました。 日本でも、坂村健が中心となって開発したリアルタイムOSのTRONや筑波大学、東京大学が政府のプロジェクトの一環として開発した仮想化システムBitvisorなど高い技術が使われた製品も出始めていますが、大きな流れとはなっていません。かつて、世界初の商用マイクロプロセッサを作ったのは、日本は嶋正利という一人の日本人でした。 今回策定されたプログラミング教育の成果として、日本からもマイクロソフトのビルゲイツやアップルのスティーブ・ジョブズ、マーク・ザッカーバーグの様な世界的な起業家が登場して、世界標準となる技術を開発してもらいたいものです。

TRON(トロンについて)

TRONプロジェクト(トロンプロジェクト)は、坂村健による、リアルタイムOS仕様の策定を中心としたコンピュータ・アーキテクチャ構築プロジェクトである。プロジェクトの目指す最終的到着点のグランドイメージとして「HFDS」(Highly Functional Distributed System: 超機能分散システム。「どこでもコンピュータ」などとも)を掲げている[1]。1984年6月開始

筑波大学とその卒業生が起業した株式会社イーゲルと東京大学情報基盤センターの品川高廣准教授による、純国産の仮想マシンモニター。 BitVisorの特徴としては、(1)OS非依存:Windows XP/Vista、Linux、FreeBSDなどのOSを修正することなしに利用可能、(2)軽量:インテル ヴァーチャライゼーション・テクノロジー(Intel VT)およびAMD Virtualization.(AMD-V.)Technologyの両ハードウェア機能を活用することで仮想化オーバヘッドを最小化、(3)純国産オープンソース:スクラッチから実装し、コードを公開――の3点が挙げられる。  用途としては、学校や企業に配備されるパソコンおよびモバイル端末のUSBメモリ、ハードディスクの暗号化による情報漏えい対策や、在宅勤務用パソコン本体や営業用モバイル端末などを強制的にVPN接続するなど、セキュリティソフトに大きな予算を割けない環境でのセキュリティ向上を想定する。

プログラミング授業の光と影

教師の教育

プログラミング授業を有効なものとして、活用していくには、教える側の教師の資質も大切な要因となります。教師の中には、プログラミング自体を全く理解していない教師がいると考えられますし、プログラミング授業専門の教師を各学校に配置するのも人員や予算の面でも難しくなるのではないでしょうか。 教師自身が自分でプログラミングができたとしても、生徒に教えることができる訳ではありません。プログラミング教えるには、幅広い知識が必要となります。プログラミング授業の教師が不足したり、教える教師の資質が低い場合は、外部からシステムエンジニアやプログラマーの招へいを考える必要も出てきます。

学校で取り組もうとしているプログラミング教育には、このように大きな光が当たる部分も生じてくるでしょうが、これに対して授業についていけない生徒にとっては、全く何をやっているのかわからないまま時間をついやしてしまう陰の部分も大きくなることが予想されます。

すでに動き出しているICT授業

学校では、教室に電子黒板やプリンター、カメラ、無線LANシステムを設置するなどすでに環境整備は始まり、NEC、エプソン、ベネッセなどの企業が、ビジネスチャンスととらえ活動しています。 今後は、教師だけでは、とても対応できない状況も考えられることから、導入後サポートや運用支援として、メーカーの担当者の支援や保守サービスが必要となることが考えられます。

ついていけない生徒には苦痛

2020年には小学生から必須化される学校教育でのプログラミング学習は、遊びに近い状態で目的を達成するための考え方を学ぶところから入っていき、段階を踏んでレベルアップしていくので、最初の取り組みで苦手意識を持たなかった生徒は段階を踏んでスムーズに学習していけるでしょう。 しかし、最初の取り組みで苦手意識を持ってしまうと、全く分からないまま、授業が進むに従い迷路にはまり込み、授業の内容やペースについていけない子が少なからず出てくることが予想されます。

論理的な思考を持つ生徒にはメリットが大きいが、苦手な生徒には苦痛

教育の情報化を目的としてプログラミングを必須化することは、論理的思考をもった能力のある生徒には、将来の展望に大きなメリットがある反面、苦手な生徒には、大きな時間的精神的な損失をもたらす可能性があります。

ついていけない生徒に対する取り組みも大切

その様な子が少しでも少なくなるように、情緒的に優れた感覚を持つ生徒の才能を見出す取り組みも同時進行で考えてもらいたいものです。論理的な思考(左脳)と情緒的な思考(右脳)は、本来、バランスを取りながら同じように訓練していくべきことなので、論理や結論のみに偏った教育はひずみを生んでしまいます。

予習が必要

また、プログラミング言語も言葉ですので前もって知っているか知らないかの差は大きく出てくると思います。今では、大概のことがインターネットで調べたり、学んだりできるので、学校のカリキュラムが分かった時点で先に学んでおく機会はたくさんあります。

自分のペースで学習できる環境が重要

自分のペースで進んで学べるようにしてあげることが、子供の将来にとってより重要なこととなってきます。

小学生のプログラミング授業の必修化の影響

小学生からのプログラミング授業の必修化は、生徒たちに可能性と選択肢を与え、日本の技術レベルの向上をもたらす可能性がある反面、生徒に新たな負担を増やさないような慎重な取り組みが肝心です。

プログラミング教室に通う人の増加

いかがでしたでしょうか。 今回は、プログラミングの必修化とその影響について紹介してきました。 上記でも説明した通り、プログラミングは論理的思考を育むのに適した教材と言えます。しかし、その分その思考法が苦手な人には大変なストレスでしょう。 いま塾に通って学校の勉強を補う子が多いように、これから先、プログラミング教室に通う子供、学生が増えることが予想されます。

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