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「意向に沿う」の意味と使い方・「意向に添う」との違い

更新日:2024年01月31日

言葉の意味・例文

意向に沿う/添う。使い方はどちらの漢字でも正しいのでしょうか?それとも違いがあるのでしょうか。あなたはビジネス文書でこの表現を使う時、「意向に沿う」と「意向に添う」どちらを選んでいますか?また、「意向」の意味も辞書等で確認していきたいと思います。

意向に沿う/添う、どちらが正しい?どう違うの?

ビジネス文書で、相手の期待通りに取り組むことを伝える時、「意向に沿う」と書くか「意向に添う」するか。どちらの漢字を使うのが正しいのか迷った方はいらっしゃいませんか。筆者の場合、どちらでもいいだろうと軽く考えていたのですが、電子辞書(SHARP・パピルス)の広辞苑で「意向」と引くと、「意向に添う」とありました。しかし、辞書にこう書いてあるのだから「添う」が正しい、ハイ終わり。ではあまりにも味気ないと思いました。これは「意向」の言葉をどのように使うか、というあくまで一例が書かれているだけであって、「沿う」を使うことを否定する記述は一切ないからです。 もしかしたら、「意向に沿う」でも全く問題がないのかもしれない可能性もありますし、一方で「意向に沿う」は誤りなのかもしれません。では、ここではあえて2つの違いを調べていきたいと思います

そもそも「意向」とは?

「意向」とは、ある件について、これからどのようにするかというその人の考えを示すものです。どちらかというと、この言葉は改まった会話や文書に用いられるケースがほとんどです。「意向に沿う・添う」の「意向」と似た意味の言葉で「意図」という言葉があります。 しかし、「意図」だとその人の計画性や積極性が高い語感が生まれてしまいます。「意向」はそこまで強い計画性を帯びる言葉ではありません。また、「意思」も「意向」に似ていますが、「意思」よりも「意向」の方が心の向かう先が未来へ向かっていて、その時点に対する期待・願望の意味合いが濃くなります。つまり、現時点から未来へ向かって能動性・積極性がやや抑えられた期待や願望を「意向」と言います。ではそうした「意向に沿う」のが正しいのか、はたまた「意向に添う」か。

「沿う・添う」は同じ?

辞書によっては、これらを並べて同じ意味とするものもあります。もちろんそれは間違いではないのでしょう。となると「意向に沿う」も「意向に添う」もどちらでも正解のような気がしてきます。ただ、この2つ、細かく見ていくと違いがありました。 対象から離れないように何かが移行する際は「川に沿った道」「車が海岸線に沿って走る」と書き、「添う」では不適切です。「添う」は対象から何かが外れずに付け加えられるときに使います。「子の付き添い」や「身に威厳が添う」などです。これに「沿う」を使用すると不自然です。特に対象が線状である必要はありません。 「沿う」を使用する際は、「長く連なるものから離れずに進んだり続いたりする場合に「沿」を使う」と辞書には記載されていました。また「沿う」は「添う」に比べて対象となるものが線状のものを連想させます。では、「意向」は長く連なるものか、線状のものか否かという話になってきます。もし意向が線状のものでしたら「意向に沿う」方が「意向に添う」よりしっくりくることになります。

そんなことは決められませんよね。

ただ、「意向」を長いものとみるかどうかは正直分かりません。誰にも決められないのではないでしょか。自分や相手の希望を長い線状のものと、そもそも意識していないでしょう。 現時点から未来へ向かって能動性・積極性がやや抑えられた期待や願望を「意向」というので、この言葉には時間の流れもわずかに含まれるという側面があります。その時間の流れをまっすぐ線状のものと解釈し、「意向に沿う」とすることも可能かもしれませんが、時間の流れが主体ではないので、「意向」そのものが線状のイメージがあるかと問われると、やはり薄いでしょう。 しかし、あえて「意向」を長い線状のものとした場合、何とも感じないという方もいらっしゃるかもしれませんが、一方でなんだか冗長なイメージになり不快感を抱く方もいらっしゃらないとも限りません。ここはいっそ「意向」を何らかの形としてイメージする見方をやめてみたほうがいいです。キリがないですしね。そうなると「意向」の言葉のイメージよりも「意向に沿う」と「意向に添う」。これらの2つの相違点を見ていく方向で話を進めます。

「意向に沿う」の味

では、やはり「意向に沿う」と「意向に添う」は同じものとして見たほうがいいのでしょうか。決してそうではありません。「沿う」には「添う」では出せない良さがあるのです。「沿う」の意味を見てきましたが、「意向に沿う」と書くと、相手の意向が途中どのような変貌を遂げようとも、どんなに長く続こうとも、こちらは終始補佐したいという持久力と積極性が感じられます。「企業の方針にそって行動する」の場合「沿う」を書きます。もちろん「添う」でも間違いではありませんが、多くは「沿う」です。力強いイメージを出したい際は「ご意向に沿う」と変換してみたはいかがでしょうか。

「意向に添う」の意味

「意向に沿う」が能動的な雰囲気を醸し出す一方で、「意向に添う」とした場合別の良さが生まれます。 「添う」ではなく「添える」で辞書を引いてみると、付き従わせるという意味がありました。 「意向に添う」と書くことで対象となるものが主体で、こちらはそれに準じる立場という日本人の美しき謙譲の姿勢が生まれます。品の良さを強く出したい時は、「意向に沿う」と表記するより「添う」と書くといいかもしれません。

誰の「意向」なのか。誰が沿う・添うのか。

こうして見てみると、「意向に沿う・添う」というのは、「意向」が外部の方のものか、身内のものか、また「沿う・添う」のは誰なのかと考えてみると、使い方が変わってくるといえないでしょうか。 敬語表現は本当にややこしいですね。気を付けているつもりでも、間違えてしまうこともあります。自社内で、平の社員から上司や先輩に資料を渡すときに「部長、こちらの資料をご覧ください。」と言います。ただ、外部の方へ身内のことをお話する際、どんなに身内が自分より目上の立場であっても謙譲語を使うのがマナーです。例えば、上司が外出しているときに突然の訪問客がやってきたとします。こういったケースでは、お客様へ返答する際、「あいにく、〇〇(上司の苗字)はただいま社内におりません」と表現します。上司は自分より目上ですが、「いる」の謙譲語「おる」を使わねばなりません。身内をお客様に対して高めるような表現は避けたいものです。当然のことをわざわざ書いて申し訳ないのですが、このことから考えると、「意向」が誰のもので、どんな相手に対して使うかで「意向に沿う・添う」を使い分けてみるのも一考を要すると言えます。

使い分けの一例を挙げてみました

例を挙げると、お客様や目上(身内)の方宛の文書で「意向に沿う・添う」を表現する場合。「お客様のご意向に添うように努めてまいります」とすると、「添う」のおかげで、へりくだった奥ゆかしい雰囲気が出ます。また「お客様のご意向に沿うように努めてまいります」とすると「意向に沿う」ぞ!というアクティブな印象になるのではないでしょうか。 また、お客様宛の文書で「意向」が身内の上司のものであるときには、これに従う社員が「添う」と使うと、どうでしょうか。おそらく間違いではないのですが、さも社員は外部の方よりも自分の上司を第一にするというニュアンスになってしまうかもしれません。また事と次第によっては、相手にこちらの方針に従っていただきたいケースもあるでしょう。そうした際、「意向に沿う」を使うとよいでしょう。 「弊社・部長〇〇がお客様の要望をすべて伺いたいという意向を示しておりまして、私共もこれに沿いたい所存でございます」や「この件については、こちらの意向に沿っていただけると幸いです」と表現すると、敬語の問題もクリアしていると言えます。

そんなに神経質になる必要もない

長々と述べてきましたが、「意向に沿う」「意向に添う」どちらを使おうが相手との人間関係が壊れることもないと思います。ただ、気になり始めると本当に気になってしまいますよね。もしも、歩かないか分かりませんが「意向に沿う」と「意向に添う」で誰かと言い合いになった場合、この記事が一助になればこんなにうれしいことはございません。

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初回公開日:2017年03月18日

記載されている内容は2017年03月18日時点のものです。現在の情報と異なる可能性がありますので、ご了承ください。
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