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「取引先に贈答品を贈ったら、経費にできる?」
「贈答品を経費で計上する場合の勘定科目はどうなるの?」
贈答品の経理処理について、どうすればいいか分からないこともあるのではないでしょうか。
本記事では贈答品を経費で計上できるのか、勘定科目や経費で計上する時に注意したいポイントや贈答品を贈るコツを紹介しています。
この記事を読むことで贈答品を経費として計上する方法や、取引先に贈答品をどう贈ればいいのか分かるでしょう。
贈答品は経費で計上できる?
自社の取引先へ贈答品を贈ることも多々あるでしょう。仕事で付き合いのある取引先への贈答品は、経費として計上できます。
これは取引先への贈答品が、交際費等の範囲(措置法第68条の66第4項)と見なされるためです。得意先や仕入先といった自社の事業に関係のある企業への接待や供応、慰安や贈答、それと同様の行為のための支出は、交際費等の範囲になると規定されています。
また、折に触れて取引先や仕入先へ贈るプレゼントは贈答品と同じく、経費として計上できる交際費等の範囲となっています。ただ、取引先や仕入先といった事業に関係のある相手へのプレゼントであっても、なんでも経費に計上できるという訳ではありません。
贈答品やプレゼントを経費として計上するには、事業を円滑にするためにその贈答品やプレゼントが必要であるということと、一般的な常識の範囲内での贈答品やプレゼントであることが必要でしょう。
出典・参照: 第1款 交際費等の範囲|国税庁
贈答品やプレゼントの勘定科目の仕訳
それでは実際に贈答品やプレゼントをした際、勘定科目の仕訳はどうすればいいのかを見ていきましょう。
取引先や仕入先へ贈答品やプレゼントをしたら、経理の上でも経費としてしっかり計上していく必要があります。
贈答品やプレゼントの勘定科目には、「接待交際費」として処理する場合と「福利厚生費」で計上する場合、「広告宣伝費」として計上する場合の3つの処理方法があります。
接待交際費として処理すべき贈答品やプレゼントを福利厚生費で計上したり、広告宣伝費に入れるべき贈答品やプレゼントを接待交際費として計上したりしてしまうと、後で問題になる可能性があるためどの勘定科目で処理するかは重要です。
以下で、それぞれの勘定科目で計上できる贈答品やプレゼントについて紹介しています。贈答品やプレゼントをした時は、何が目的で誰を対象にしていたのかによってふさわしい勘定科目を選びましょう。
勘定科目を接待交際費にする場合
得意先や仕入先等を対象に贈答品やプレゼントを贈った場合は、勘定科目を「接待交際費」で処理します。これは取引先や仕入先への贈答品やプレゼントは、自社の事業を円滑に進めるために必要なものであると考えられているためです。
たとえば1万円分の贈答品を現金で購入し、取引先に贈った場合の仕訳は、「借方に接待交際費で1万円」、「貸方に現金で1万円」という仕訳になります。
勘定科目を福利厚生費にする場合
贈答先やプレゼント先が取引先や仕入先ではなく自社の従業員であった場合は、接待交際費ではなく「福利厚生費」で仕訳します。これは、従業員のための慰安や慰労のために要する旅行等の費用は、福利厚生費として処理できるためです。
勘定科目を福利厚生費にする場合は、贈答先やプレゼント先が従業員であることが重要です。
ただ、従業員を贈り先とした贈答品やプレゼントであっても、全従業員を対象としたものでなければ福利厚生費とは認められないことに注意してください。特定の従業員のみを対象とした贈答品やプレゼントでは、福利厚生費にはならず、給与扱いになる可能性が高いでしょう。
贈答品やプレゼントを福利厚生費で計上する場合の仕訳方法は、「借方に福利交際費」「貸方に現金等」になります。
出典・参照: No.5261 交際費等と福利厚生費との区分|国税庁
勘定科目を広告宣伝費にする場合
広告宣伝費の勘定科目になる場合は、その贈答品やプレゼントをする目的が主に「自社の宣伝」であった場合です。
日頃から付き合いのある取引先に対してする贈答品やプレゼントは、広告宣伝費ではなく接待交際費になります。しかし取引先に贈答やプレゼントする場合であっても、それが自社の新しい商品の見本品や試供品等の場合は、接待交際費ではなく広告宣伝費になるでしょう。
取引先や仕入先に贈った贈答品やプレゼントの目的を考えて、接待交際費か広告宣伝費か判断しましょう。
例えば、一般の消費者に景品をプレゼントする場合や、工場見学時の製品の試飲や試食も広告宣伝費に該当します。
広告宣伝費で贈答品やプレゼントを処理した場合は「借方に広告宣伝費」、「貸方に現金や普通預金等」で仕訳します。
出典・参照: No.5260 交際費等と広告宣伝費との区分|国税庁
経費で計上できる贈答品
贈答品やプレゼントは経費で計上できますが、それも全てできるという訳ではありません。経費として計上できない贈答品やプレゼントもあるため、ここからは経費で計上できる贈答品を種類別に紹介します。
また、経費として計上する場合はどの勘定科目で処理すべきかについても紹介していますので、参考にしてください。
お祝い品や返礼品
取引先や仕入先、従業員の冠婚葬祭に対して贈るお祝い品や返礼品については経費にできる贈答品、プレゼントです。
たとえば取引先の社長自身の結婚式や、家族の結婚式に呼ばれた場合のご祝儀、仕入先で葬式が行われた際の香典代といった冠婚葬祭にまつわる費用の場合は接待交際費として計上します。
自社の役員や従業員が結婚した際のご祝儀については、対象が自社の役員・従業員であることから、接待交際費ではなく福利厚生費で計上することになります。
ただ個人事業主で、事業と関係のない親族へのご祝儀や香典代を支払った場合は経費として計上できません。また、香典返しの費用も経費にはできないことに注意してください。
冠婚葬祭以外でも、取引先や仕入先に返礼金や返礼品を贈ることがあるでしょう。お礼の意味合いが強い返戻金や返礼品であれば、その費用は接待交際費で処理することになります。
出典・参照: 第1款 交際費等の範囲|国税庁
手土産や謝礼品
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新規の取引先や仕入先に手土産を用意して相手の会社を訪れることがありますが、手土産の費用は基本的に接待交際費として経費に計上できます。
また、手土産を持参した後に会議が予定されていて、なおかつ持参した手土産が少額であった場合は会議費として計上することも可能です。
接待交際費として計上するのであれば、その謝礼品がお礼の意味を強く含んでいる必要があります。
たとえば取引先に特別に配慮してもらったような場合の謝礼品であれば、お礼として渡すため接待交際費で構いません。しかし講師を招いたことに対する謝礼の場合は、お礼よりも報酬という意味合いの謝礼になるため、接待交際費では計上できないでしょう。
出典・参照: 第1款 交際費等の範囲|国税庁
季節のご挨拶
取引先や仕入先への季節のご挨拶として、年賀状を送付したりお歳暮を贈ったりした費用も経費として計上できます。
取引先や仕入先へ新年のご挨拶として、年賀状を送った費用は基本的に「通信費」として処理します。挨拶のために送付する年賀状であれば、印刷会社を利用したとしてもその費用が高額でなければ、そのまま通信費で処理できます。
ただ、挨拶のためというよりも宣伝のために年賀状を送付したような場合は、通信費ではなく「広告宣伝費」になります。
また、お歳暮やお中元を取引先や仕入先に贈った費用は「接待交際費」となります。年賀を祝うためにお菓子類を購入した場合も、同じく接待交際費として処理可能です。
ただし、お年玉は事業に関係ないという考え方のため、経費として計上できません。たとえお年玉を配る相手が取引先や仕入先の社長の子であっても、経費として計上しないようにしましょう。
出典・参照: 第1款 交際費等の範囲|国税庁
贈答品を経費で計上する時に気を付けること
贈答品やプレゼントは経費で計上できますが、いくつか気を付けておかなければならないポイントがあります。
ここからは、贈答品を経費で計上する時にどのようなことに気をつけなければならないのか、4つのポイントを紹介していきます。贈答品やプレゼントを経費として計上する前に、しっかり把握しておきましょう。
出典・参照:第1款 交際費等の範囲|国税庁
金券や商品券は避ける
商品券やギフト券等の金券を贈答品として経費で計上する際はいくつか注意点があるため、できれば避けた方が無難でしょう。商品券等を購入して取引先や仕入先に贈った場合は、「接待交際費」として計上できます。
しかし、金券は使った時に費用計上することになるため、金券購入時点では費用として計上できないことに注意が必要です。
また、金券ショップを利用し額面よりも安価で購入していた場合は、得をした部分の金額は「雑収入」で処理する必要があります。
さらに自社の従業員に対して商品券等の金券を贈った場合は、現金と同等の扱いをしなければなりません。「福利厚生費」あるいは「給与」として処理しましょう。
常識の範囲内のものを贈る
もしも常識の範囲を超えた贈答であると判断された場合、経費として認められなくなる可能性があるでしょう。
具体的な贈答品の常識の範囲内というのは、基本的に1つの贈答につき1万円程度です。会社の規模によってはもう少し高くても認められる可能性はありますが、数万円になると認められない可能性が出てくるでしょう。
これはあまりに高価な贈答品は、贈りものではなく本人が使っている可能性があると見なされるためです。高額な贈答品は、税務調査時に問題になる可能性があることを認識しておきましょう。
従業員に対する福利厚生費として処理する際にも、注意が必要です。常識の範囲内の贈答品であれば福利厚生費として計上できますが、あまりにも高額だった場合は給与に該当するとされる可能性があるでしょう。
どんな贈答品をしたか説明できるようにしておく
贈答品を経費として計上するためには、どんな贈答品を誰にしたのかをしっかり説明できるようにしておく必要があります。
もし贈答品を経費で計上していても、どんな贈答品を誰にしたのか明らかになっていないと社長個人が使った可能性があると受け取られてしまい、経費として認められなくなってしまいます。
税務調査の時にしっかり説明できるように、誰にどんな贈答品を渡したのかしっかり記して説明できるようにしておきましょう。
とくに、商品券等の金券をまとめて購入したような場合は注意が必要です。少しずつ取引先に贈った場合でも、どこにどれだけ贈ったのかをしっかり説明できるようにしておかなければなりません。
いらぬ疑いを招かないためにも、贈答についてはしっかり記録を残しておくことをおすすめします。
贈答品として経費に計上できないケースを知っておく
たとえば贈答品として購入した商品券を自分で使ってしまった場合や、プレゼント先が事業に関係のない家族や友人等だった場合は、経費として計上していても認められないでしょう。
贈答品として購入しても、自分で使った場合は贈ったことにはなりません。また、プレゼント先が自分の家族や友人の場合は事業に必要な贈答品とは認められないことから、経費として認められません。
さらに個人事業主や役員のみの会社では公私の区別がつきにくいため、福利厚生費として計上するのは難しいでしょう。
取引先に贈答品を贈るコツ
贈答品を取引先や仕入先といったビジネス上の付き合いのある相手に贈る場合には、マナーを守って贈るようにしましょう。贈答品を贈っても、マナーがなっていなければ失礼になってしまったり、相手に不快な思いをさせてしまったりする可能性があるためです。
ここからは、贈答品をビジネスで贈る場合のマナーについて紹介していきます。
とくにこれまであまり付き合いのなかった相手に贈る場合や初めての相手に贈るような場合は、最低限これらのマナーを押さえておく必要があるでしょう。贈答品のマナーで迷った際は、参考にしてみてください。
- 前もって取引先に送り状を送付する
- 取引先が贈答品を受け取れる企業かどうか確認する
- のしを付けてもらう
- 季節の贈り物をする場合には時期を確認する
前もって取引先に送り状を送付する
贈答品を取引先に贈る際はいきなり贈るのではなく、前もって取引先に送り状を送付し、贈答品が届くことを知らせておきましょう。一方的に贈答品を贈りつけるような行為は、かえって迷惑になってしまう可能性があります。
また、贈答品の送り状はパソコンで作成するのではなく、手書きで作成しましょう。一般的には「頭語」から「時候の挨拶」を述べ、「取引への感謝」「贈答品について紹介」を記した後「先方の健康や成功を願う言葉」と「結語」で締めるのがマナーです。
近年ではオンラインでのやり取りが増えたこともあり、メールを送信して送り状を送付したことにするケースも増えてきました。相手との付き合いの程度や親しさによっては、メールだけで済ませても問題ないでしょう。
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取引先が贈答品を受け取れる企業かどうか確認する
取引先に贈答品を贈る前に、そもそも贈答品を受け取れる企業かどうかを確認することも大切です。これは、贈答品の受け取りを企業全体として禁じている場合があるためです。
もし贈答品を贈る取引先が贈答品の受け取りを拒否している企業であった場合、贈答品を贈ろうとする行為で相手を困らせてしまう可能性が高いでしょう。とくに大企業や新規企業が相手の場合は、気をつけましょう。
また、公務員が相手の場合はさらに注意が必要です。公務員は国家公務員倫理規程によって、利害関係者から金銭や物品の贈与、接待を受けることを禁止されています。たとえ割り勘であっても一緒にゴルフをしたり、旅行したりすることも禁じられているため、注意しましょう。
出典・参照: 倫理法・倫理規程Q&A|人事院
のしを付けてもらう
取引先への贈答品には、「のし」を付けてもらうことを忘れないようにしましょう。
のしというのは日本で古くからある習慣で、贈答品に縁起物として「のしあわび」を付けていたものが変化したものです。勘違されがちですが「のし」はのし紙の右上にある赤色の飾りのことで、贈答品にかぶせる紙自体のことではありません。
のしは縁起物であるため、慶事でしか使わないことに注意してください。また。贈答品にあらかじめリボンが巻かれていることがありますが、リボンとのしを同時につけるのはマナー違反にあたるため、どちらかにしましょう。
さらにのしにもいくつか種類があります。慶事の中でも結婚や快気祝いの場合には一度切りの関係や出来事を示す「結び切り」を、何度も繰り返される慶事であれば「蝶結び」となります。これからもお付き合いしたい相手に贈る場合は、蝶結びを選びましょう。
季節の贈り物をする場合には時期を確認する
日本では季節の贈り物をする習慣がありますが、贈答品を贈る際はふさわしい時期かどうかを確認して贈りましょう。
たとえば、「お中元」は日頃お世話になっている相手へお盆の季節に贈り物をするという習慣のものです。そのため、お中元を贈る時期は関東で7月初旬から7月15日、関西で7月初旬から8月15日までとなっています。
お中元を贈る時期から遅れてしまった場合は、立秋までは「暑中御見舞い」を、立秋以降ならば「残暑御見舞い」を送付します。
また、「お歳暮」はその年の末に贈る贈り物です。もともとは12月13日から12月20日までに贈るものとされていました。12月26日以降に届いてしまう場合は「御年賀」や「寒中御見舞い」、または「寒中御伺い」とするのが正式なマナーです。
現在では、お歳暮は12月31日までに贈れば良いと変化していますが、年末のあわただしさを避けるためにも12月20日までに届けることがおすすめです。最近では師走の忙しい時期を避けて、11月下旬に贈ることも増えています。
贈答品を経費で計上する時の勘定科目の仕訳や気を付けることを知っておこう
取引先へ贈答品を贈る際は、経費で計上することになります。しかし計上の仕方や贈答品の内容、額等によっては経費として認められないことがあるでしょう。
贈答品を贈る際は経費として計上できるかどうかをしっかり把握した上で贈り、誰にいつどれだけの金額相当のものを贈ったのかを記録しておくことが大切です。贈答品の贈り先や贈答品に含まれた意味によって、ふさわしい勘定科目を使うことも重要になります。
また、贈答品を送る際はビジネスマナーを守り、相手の迷惑にならないように気をつける必要があります。
この記事で紹介したこと参考にして贈答品を送りましょう。