連載5回目 SEを経てどのような未来を作り出せるか ~これからの選択~

いよいよ「今後SEのが描く未来の選択肢」も最終回です。最終回の今回は、SEを経て、どういうキャリアを描けるか。田邊氏の経験、SEという職業を離れ、コンサルとして企業に関わっている今、SEの仕事についてどう考えているのかについて語っていただきます。

未来について

早いもので、今回で連載最終回となりました。 最終回のテーマは未来です。

未来ってわくわくしませんか?新しい技術、新しい社会の仕組み、新しい価値観、新しい仲間、新しい考え方、新しい世界。未来は楽しみにあふれています。

MOTを選んだ時も、コンサルを選んだ時も、それから新卒でSEになったときも、私はわくわくしていました。新しいことが始まるからです。転職をしないという選択は選びませんでしたが、仮に選んでいたとしたら、恐らくわくわくするような新しい何かを始めるために行動を起こしていたと思います。

未来、もちろん良いことばかりではないですが、受け身にならず、みんなでより良い未来を創っていきましょう。

日本のユーザITの課題

日本のシステムユーザ企業のソフトウエアについて興味深いデータを1つご紹介します。

受注ソフト:パッケージソフト:自社開発ソフト
日本 8:1:1
米国 3:3:4
(※参考:元橋一之「ITと生産性に関する日米比較:マクロ・ミクロ両面からの計量分析」(2010))

日本は、圧倒的に受注ソフトの割合が高いことがわかります。受注ソフトは、いわゆるオーダーメイドの開発なので、他の2つと比べるとコストが非常に高くなります。これは多重下請け構造とも関係していると言われており、また日本人の要求過多や、全体最適の考え方が苦手であること、などとも関係していると私は考えています。

このデータだけで言い切ることは出来ませんが、パッケージソフトの割合が低いのは、業務が標準化されていないことを、また自社開発ソフトの割合が低いのは、ビジネスとITの両方に詳しい人が少なく戦略的にITを利活用出来ていないことを表しています。SEの将来の役割は、このような課題に応えることだと思います。

SEとしての経験は貴重

ITができる人は、ユーザ企業で重宝されます。日本の企業のITリテラシーの低さはすぐに改善するのは難しく、これからはユーザと一緒にITを利用したビジネスを考えていける人材が非常に重要な役割を果たします。

また、システム開発のプロジェクト管理は非常に難しいので、SEとしていくつかのプロジェクトを経験している人は、自然とプロジェクトマネジメント力が身についています。私の場合もSE時代に進捗管理や品質管理、課題管理などをしていた経験は今の業務に活きています。いつまでに何をやらなければならないか、たくさんのタスクが積み重なっているが、きちんと優先順位をつけて滞りなく進められるか、どうコントロールするかなどを組み立てる経験は非常に役に立っています。

更にプログラミングやシステム開発手法を勉強すると、色んなものをカテゴリ分けしたり、共通化したり、分解したりする力、あるいは全体最適の考え方や、論理的思考力などが身につきます。これらはさまざまな仕事に応用の利く能力だと思います。
もったいないのは、これらの能力がユーザの業務と切り離されていることです。ユーザに言われたことをいかにうまくやるかということは非常によく考えるが、ユーザ業務をどのように変えればより良くなっていくか、という視点がほとんどないのが現状ではないでしょうか。

これからの選択

システム開発工程の最上流で、ITの専門家としてユーザ業務を一緒に考えていくこと、例えば新しい技術を使い、新しいサービスを導入し既存の業務を抜本的に変えるような提案をすることが、SEとして活躍しておられる皆さまの一つの未来の姿だと思います。そしてそれは日本社会にとってとても重要なことです。

ではSEの未来にどのような選択が待っているのでしょう。

未来のことは分からないというのが答えではありますが、やりたいことや変わらない価値観みたいなものに引っ張られるのではないかなと思っています。

私の話をしますと、標準化、共有化、効率化に関しては徹底的に行いたいと思っています。行き着くところは企業をまたがった日本社会、あるいは世界社会全体の最適化。他社と差別化できないシステム開発は、とことん共有し、オリジナルなシステムに力を注げる環境を作りたいです。

また、Fintech、ビットコイン、SOA、人工知能、IT教育、グローバル、この辺りのキーワードも、近い未来でも遠い未来でも、ぜひ取り組みたいテーマです。

選択の裏側

MOTという選択は、現状を変えたいけど何をしていいか分からなかったとき、その突破口となりました。コンサルへの転職という選択では、システム開発の世界から外へ出て、自分の成長と家族の幸せを考えました。転職をしないという選択は選びませんでしたが、今いる環境に対して当事者意識を持ち、会社での将来に渡る自分の役割を考えました。

さて、これで5回に渡る連載も終わりです。選択という言葉を通して書いてきましたが、大事なのは、選択の裏にある、何かを成し遂げたいという情熱や自身の成長、家族への想い等だと思います。

皆さまのこれからの選択が、実りあるものになることを心より祈っております。



[筆者プロフィール]

田邊 圭介
ITコンサルタント。独立系SIerにて約8年間システムエンジニアをし、その後ITコンサルタントへ転職。SE時代には、某大手銀行の大規模情報系Webシステムの開発等に従事し、要件定義から設計、開発、テスト、導入、保守までを先導した。

一方働きながら社会人大学院に通い、2012年に技術経営修士(専門職)(MOT: Master in Management ofTechnology (Professional))を取得。MOTでの研究テーマは、「クラウド時代におけるシステムインテグレータの戦略」。

現在はSE時代の知識を活かし、某大手銀行の業務効率化等に取り組んでいる。