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「やらせていただく」は間違った言葉づかい?正しい使い方と表現

更新日:2024年03月13日

敬語表現

「やらせていただく」「やらせていただきます」これらは、威勢がよくてかつ謙虚な言葉遣いに聞こえます。しかし一方で過剰に使われているような気がします。ここでは「やらせていただく」という言葉を考察していきます。この言葉遣いは正しいのでしょうか。

「やらせていただく」=「やる」+「(さ)せていただく」

結論から申しあげると「やらせていただく」という言葉遣いそのものは正しいです。しかし、なぜ私たちは時にこの表現に違和感を感じたり、使う事をためらったりするのでしょうか。 「やらせていただく」を「やる」「(さ)せていただく」 と大きく2つに分けて、それぞれの意味とニュアンスを掘り下げてみます。

「やる」について

日本語語感の辞典・中村明著・岩波書店で「やる」を引いてみたところ、 やる→①「する」などの意で、主として会話か改まらない文章に使われる日常的な和語。「する」と両方使える例でそれぞれのニュアンスを比較してみると、例えば「する気がある」と「やる気がある」、「勉強をする」「勉強をやる」では、どちらの組み合わせでも後者の方に積極性が感じられる。また「卓球をする」「登山をする」の場合は遊びでもかまわず技術の程度はさほど問題にならない感じであるが、「卓球をやる」「登山をやる」となると、少しは本格的な経験があってある程度専門的な技術を備えていそうな雰囲気が増すように思われる。一方、語の文体的レベルを比べれば「する」がどこにでも適応する一般語であるのに対し、「やる」は会話的な感じが強い。 とありました。

「せていただく」について

これも分解していくと、 「せる」は「する」の使役形を表す表現で「足を波に洗わせる」という使い方があります。 「いただく」は動詞の連用形に助詞「て」のついた形などに連なって、「してもらう」の謙譲語となります。「教えてもらう」も謙譲表現にすると「教えていただく」となります。 「せる」と「いただく」がくっついて、「する・させてもらう」の意の謙譲語が出来上がります。 相手の許可・依頼を得て「(そう)させてもらう」場合と相手の好意や恩恵を得て「(そう)させてもらう」というような、許可や恩恵などがあって使われる言葉です。 例えば、相手が「どうぞ、この辞書をお使いになってください」というような場面で 「ありがとうございます。使わせていただきます」と答えるといった具合です。 他にも、祝賀パーティの招待を受ける時に、「喜んで出席させていただきます」という のも相手の許可が存在しているので正しい使い方です。

「やらせていただく」の正しさ

「やらせていただく」という言葉は、正式な文書では会話調なため、あまりそぐわないかもしれませんが、それ以外の場面で使うことは何ら問題がありません。 「やる」という言葉は、積極性とプロ意識をうかがわせるもので相手に意気込みを伝えることができるでしょう。 そして意気込みだけでなく、「せていただく」を付けることで、相手の依頼・許可が必要な行為を自分が謙譲の姿勢で取り組むという意思も伝えられます。

「させていただきます」でもよい

相手の許諾・依頼などがあった場合、「やらせていただきます」の他に、「する」の使役形と「いただく」を組み合わせて、「私が、(そのように)させていただきます」とするのもよいでしょう。 人によっては「やる」という言葉に、野卑なイメージが拭えない方もいます。人が「やらせていただきます」と言うのはよくても、自身で使いたくないと思われる場合は 「させていただきます」と言う選択肢もあります。

やら「さ」せていただきます?

「やらせていただきます」は良くても、「やらさせていただきます」は、よろしくありません。 「させる」を謙譲表現として誤用した「さ入れ言葉」をあちこちで頻繁に見聞きします。 「私がやらさせていただきます」「読まさせていただきます」「行かさせていただきます」などですが、これらは明らかに誤用です。 この誤用はなぜ起こってしまうのでしょうか。おそらく職場の上司に対する尊敬語を、社外の人に対しては謙譲表現に切り替えることのややこしさからきているのでしょう。 社内では「〇〇課長がそのようにおっしゃってました」も 社外では「課長の〇〇がそう申しておりました」とします。 「させる」を謙譲表現として誤用した「さ入れ言葉」が生まれてきたのも仕方ないような気もします。

「やらせていただく」に対する違和感

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初回公開日:2017年03月28日

記載されている内容は2017年03月28日時点のものです。現在の情報と異なる可能性がありますので、ご了承ください。
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