連載2回目 社会人大学院(MOT)という選択 ~SEキャリアの道の途中

SEの働き方を、SEを経てITコンサルへとキャリアを進めた田邊氏が語る本連載「今後SEのが描く未来の選択肢」の第二回です。初回では田邊氏の描くSEの選択肢、これまでの経験を語っていただいたが、今回は「社会人大学院(MOT)」について語っていただこう。

このままでは嫌だ

テスタ、プログラマ、SE、チームリーダー、プロジェクトマネージャーとステップアップしていく道筋。日本では一般的なこの道を歩んでいく姿自分を想像したとき、私には耐えられないだろうと思いました。決められた枠の中で失敗しないことを求められ、新しいことはが一切ない、そんなイメージを持ってしまったからです。実際は少し違うとは思いますが。

プロマネではなく、技術のスペシャリストになるというキャリアもあると思います。ですが私はこちらも、何か違うなと思いました。三度の飯よりプログラミング、みたいな人がスペシャリストになってい行くのんだろうなと、そういう人には勝てないだろうなと。

じゃあ、自分は一体何になりたいんだろうか。自問してもすると答えは抽象的なものばかりが浮かびます。なんかもっとこう、社会とつながっている実感があって、できれば世の中の流れや仕組みを大きく変えるような業務に関わりたいなぁ、と。

なぜ社会人大学院、MOTなのか

SEの選択肢。MOT

MOTは技術経営と訳され、技術を経営に活かす方法を学ぶところであり、技術版MBAと呼ばれています。MOTは、経営の分かる技術者、あるいは技術の分かる経営者を育成することを目指しています。

ソフトウエア技術に魅力を感じてこの業界に入り、プロマネでもなく、技術のスペシャリストでもないものを目指す自分。ここに行けばモヤモヤしている現状が何か変わるかもしれない。そう感じました。

身についたこと、自分のキャリアにプラスになったこと
最終的にMOTで学んだことは多く、将来の道筋を選ぶ助けにもなりました。ここでの学びは数え上げればきりがないですが、複数の講義で横断的に習ったものや特に印象に残っているものをいくつか挙げてみます。

・フレームワーク、MICE

ファイブフォースやSWOT分析等のフレームワークを使って考えたり議論したりする機会が多く、MICE(モレなくダブりなく)に考える癖がつきました。これは後にコンサルタントを目指す上で非常に有益な経験でした。

例えばこんなフレームワークがあります具合に。
[SWOT分析](注1)
外部環境として新しい技術が台頭することは、脅威となる。だが未だにCOBOL技術者が多く、変化のスピードが遅い金融業界で、新しい技術に投資することにどれだけの価値があるのか。…(略)

[ファイブフォース分析] (注2)
(略)…また、経済産業省の資料によると、SIerの平均年収は○○○万円であり、上場企業の平均年収と比べてもさほど大きくなく、新規参入の脅威は比較的低いのではないだろうか。

フレームワークを用いて考え、資料を作り、発表し、そして指摘を受けることで、考えが深まっていきました。経営に関わるようになってから経験することを、先取りして経験しているような感じです。

・戦略と戦術

何をするか、どんなことをやるか(=具体的な方法:戦術)よりも、何故それをやるのか、何故そうするのか(方針、方向性の共有:戦略)の方が重要だという話です。

何か案を出すときは、必ず会社のビジョンやミッション、方向性を意識して、それに合っているかを確認する癖がつきました。従業員に共通の意識を持たせ、一丸となって進むことの重要性を学びました。
これもコンサルタント業務では非常に重要な要素だと思っています。

「それは戦術の話だよね?戦略はないの?」など、授業を一緒に受けた学生同士では、共通の認識を持って会話が盛り上がったのを思い出しました。

・イノベーション

MOTに特徴的な分野だと思います。例えば、「クラウドコンピューティングは破壊的イノベーションとなるか」、「プロダクトイノベーションを起こす組織とプロセスイノベーションを起こす組織の違いについて」、「プログラミング言語Scalaはキャズムを超えられるか」など。

先行事例に学ぶというのは非常に大事なことで、これらは技術系の経営に関わる人の間では共通言語のようなものかもしれません。それを早いうちから学ぶことができたのは経営層の人と話すための、共通言語を学んだと言ってもいいのではないかと思っています。

この他にも、例えば財務諸表や有価証券報告書等の見方を学んだこと、日本社会の特徴に関わる議論なども印象に残っています。

また、授業の内容のみならず、講義やグループワーク、演習を通して、他業種、多国籍で年齢幅も非常に広い、そして意識の高い人たちと出会い、過ごした日々は何ものにも代えられない経験ができたと思います。

おわりに

SEの業務に戻ると、おなじみの仕事が待っていました。変わらない景色、変わらない道。これが大事な仕事であることは分かっているのですが、だんだん耐えられなくなっていきました。

それは上記のように、技術系の職業に精通しているだけでは学ぶことのできない、経営的な視点を、技術的な能力と絡めて学んだことで、「もっと上流へ、ユーザーサイドに近いところの問題解決へ」という気持ちを増幅させたからです。

また職場では会えない、多様な層と会ったり、グローバルに活躍する講師の話を聞いたり、世界の事例を学ぶことで、視点が広くなり、日本のユーザー企業全体の問題解決に取り組みたいとも思えてきました。
システム化だけを意識するのではなく、業務全体を考え、経営的な視点でどうするべきか、そして技術的な視点でどういう解決策があるか、などということを考えていきたいと思いました。

さて次回は、SEからコンサルタントへなるという道を選んだことについて語りたいと思います。

田邊 圭介
ITコンサルタント。独立系SIerにて約8年間システムエンジニアをし、その後ITコンサルタントへ転職。SE時代には、某大手銀行の大規模情報系Webシステムの開発等に従事し、要件定義から設計、開発、テスト、導入、保守までを先導した。

一方働きながら社会人大学院に通い、2012年に技術経営修士(専門職)(MOT: Master in Management ofTechnology (Professional))を取得。MOTでの研究テーマは、「クラウド時代におけるシステムインテグレータの戦略」。

現在はSE時代の知識を活かし、某大手銀行の業務効率化等に取り組んでいる。