IT特化社労士、村田氏に聞く「ブラック企業のやめ方」後編

IT特化社労士、村田氏に聞く「ブラック企業のやめ方」後編

[編集者前説]
前半では社労士という仕事が、事業主側に何をしているのかをお伺いしました。
後編では主に、ブラック企業で働くSEやエンジニアの方向けに何かアドバイスを頂けないかということで、「ブラック企業のやめ方」を伺います。元SE、現役社労士だからこそできるアドバイスなど、役立つ情報もお話いただきます。
前半のインタビューはこちら「IT特化の社労士、村田氏に聞く「会社を蝕むモンスター社員問題」前編」

ブラック企業で働く。

「ここまではモンスター社員の話をしてきましたが、今度はブラック企業対策について聞いてもいいですか?」

村田社労士(以下村田氏):ブラック企業で働かせられてしまう、長時間の過酷労働があるという点がありますよね。そういうときに、正直派遣だといい面って、時間をきっちり区切ることができるんですよ。やっぱり労働者の方って、会社と直接交渉するからハードルが高いんですよね。精神的に。もめたら居づらくなってしまうんじゃないかとか、それこそ会社に対してだけでなく直属の上司にも言いにくかったりするんです。上司がすごい働いてるのに、自分はプライベートが大事なのでといって帰るのも、なかなか言えないと思うので。でも生活もあるしってところで困っている人もいると思うんですけど、派遣に関しては派遣会社が言ってくれるので、エンジニアさんにとっては良いのかなって思いますね。

「実際派遣されて行ってみたら、夜中の3時でも対応しなければいけないけれど、タイムカードは切れないという会社に行ってしまったりする。それがその職場では暗黙の了解になっているけれど、それを知らずに行ったから、プロジェクトは早めにやめるという事例もありますね」

村田氏:そういうときは、一応聞くんですよ。闘いたいですか?っていうことを。平穏に終わらせたいというか、その人にとって闘わせる時間ももったいないと思うところもあって、だったらさっさと次行った方がよくないですか?と。そういうことをよくすすめてるんですね。

特にこの業界だったらすぐ見つかるじゃないですか。特にその人がある程度経験があって、すぐに見つかるような人だったら次いきましょうよって勧めると思うし。でもその人が一年とか我慢してきて、闘ったら結構とれますよっていう時とかありますし、それで会社に対しても恨みを持っていない人もいるんですけど、恨んでる人もいるんですよ。そういう時は闘いましょうっていうことを勧めたりはしますけどね。

毎月100時間くらい残業してて一銭も出ていなければ、100×12ヶ月で1200時間分取れるんで、取った方がいいですよねって話しになるんですよ。それを、分かっててやってないのか、知識がなくてやってないのかっていうのはやっぱ会社の責任なんです。会社をやるっていうのはそういうことも見なくてはいけないってことなので。だからエンジニアの方やブラックに働いた人とお話をする際には、こういう話しから行きますね。ただ、その人の時間がもったいないので、闘うくらいだったら次に行った方がよくないですか?っていう話しにはもっていくことも多いです。

真の「ブラック企業」とはなにか?

ブラックな企業イメージ

村田氏:ただ、世の中でいうブラック企業って、ここがかなり根深いところなんですけど、例えば残業代きちんと払っていて、法にのっとって三六協定って聞いたことありますかね?会社として残業をさせるっていうときには、労働基準監督署にそういう協定をだして、こういう時は残業をさせますよっていう協定をだして、こういう時は合法的に残業をさせることができるんですね。それをちゃんと出してて。残業をさせて、残業代をしっかり支払ってっていう会社もあるんですけど、本当のブラック企業はそういう協定を守ってやっているんだけど、人が死んじゃったり。守ってやらしているので法は違反じゃないんですよ。でも体壊しちゃったら何にもならないじゃないですか。合法的に残業をさせて。

「合法なのに過酷っていうのは、処理とかはしてるけど、結局残業時間が長いとかですか」

村田氏:そうです。でもう徹夜で帰れないのがずっと続いてるとか。それでも残業代を払っていれば、違法じゃないんですよ。で、有給休暇とかも、例えばプロジェクトが終わった後に申請させれば取らせますとか。申請されたらあげれば問題ないので、取れるじゃないですか。ただ、半年間のプロジェクトの間に申請できる空気ではないので申請できないんですよ。それで半年間ずーっと働いてて倒れたりとか。法を守っているにも関わらず蝕んでしまうような。

一般的に、法を守っていないのがブラック企業って思われがちなんですけど、法的にはそんな完全に労働基準法を守るって難しいんです。正直あれって昔の工場労働者とか向けのものなので、それをいま現代にカスタマイズはしてきてはいるんですけど、追いついてないんですね。ちょびっとした違反はでてきてしまうんですけど大きな違反はないと。それでも大きなところはちゃんと守ってて、それだけ見ると全然ブラックじゃないんですけどね。でもそういうところは実際働いてみないと分からなかったりとか。そういう空気感っていうのは伝わって来ると思うので。そういうのをちょっと見たりすることはできるんですよね。そういうのは大事かなと思います。

倒れるまで働くならやめて失業給付もらおう

「なるほど。たとえばその合法で、過酷な仕事をしている人が相談に来たときは手を差し伸べるってことは可能なんですか?労務的にはやっぱり難しい?」

村田氏:いや、でも、何時間以上残業をしていて、たとえば100時間以上超えてて、3ヶ月続いて辞めた場合って、雇用保険所はすぐ失業給付とか出るんですよ。残業たくさんしてて辞めた人って。なので、そういう人はそいういうものを出して、転職活動できるからすれば?っていったりとか。でもそういう人達って責任感が強くて、なかなか応じてくれないことが多いんですよね。なのでそこまでいくと先に弁護士さんとかの範囲になっちゃうんですけど。

後は健康診断いって健康の内容にやっぱりそういうのは出るので、そういうものを提出させたりっていうのは考えます。ただやっぱりそういう働き方って本人の意志でやってて、会社の法には違反してないっていうのは難しいですし、そこまでいっちゃうと生活のためとかではなくて、目的がちゃんとあってやってる、例えば周りの人とかにもそうですしね。

「確かに責任感が強くて辞められない人とかって多そう。多分倒れるまでやる人っていうのは、そういう責任感だったりとか」

村田氏:ありますね。ストレスもあると思いますよ、PMの方とか。本当言ってしまえば、指示を受けて働いている人、コーディングだけしてる人とかテスターの人とかは今自分がいなくなったらっていうのって少なかったりするので、どこかで応じてくれたりするものなんですよ。

PMの方だと、これ抜けたらこの会社どうなっちゃうんだっていうことがあるじゃないですか。会社を守るって言うよりは、一緒に働いてる人達っていうのが大きいですよね。取引先だったりとか下請け会社だったりとか。

あとは、炎上してしまったりする案件って、全ての会社がうまく、人材の能力が高ければ起こりにくいじゃないですか。例えば、上流の会社のスキルが足りないと。で、下に落ちてきた時にはもうどうしようもない、ってなってしまっている状態って結構あると思うんですよ。

その下請けの会社のせいだけじゃないとか。逆にプロジェクトマネージャーとか、ある程度の人達も、そういうの分かってると思うんですよね。だからやるしかないと。構造の問題もあると思います。納期とか、上流の会社がスキルが足りなくて、エンジニアのスキルアップも必要かなって。世の中全体の。

例えば、そういう炎上しそうな案件が降りてきたとき、そこで勇気をもってストップさせられる人が上に行くとか。炎上するのが分かってるから一旦止めて、ちょっとやり直してという調整をするとか。そっちの方が早かったりもするじゃないですか。

僕も経験あるんですけど、何が悪いのかわからなくて、もぐらたたきをするような、そういうのが一番効率悪いですよね。ある程度経験を積んできた人達はみんな経験してると思うんですけどね。そういう危機感をみんなが持てるレベルまでいくのも大事なんですよ。

「なるほど」

村田氏:まあ、そういうのがあったらやめて、体壊す前になんとか次をみつけたりとか。そんなに若い時間を無駄にすることもないかなって思うんですけどね。それに失業保険とかもあるので、やめる事自体は本当はそんなにリスクはないんです。

2年間の間に、12ヶ月以上雇用保険入ってる人が失業保険を受け取れるんですけど、例えばその会社の都合で辞めさせられたりとか、自分が悪いことしてないのに辞めさせられた場合はすぐに出ます。それと同じような扱いで、その、直近何ヶ月の間に残業時間がたくさんあるような人はそういう扱いをされたりとかですね。

「この技術はよそでは通じない、は勘違い」エンジニアの相談

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(参考:エンジニアの労務相談を受け付けている村田氏のTwitterアカウント

「村田さんはエンジニアの労務相談にも乗られていますよね」

村田氏:相談受けるだけでいえば、TwitterでSEの方から相談を受けたり、エンジニアには限らず飲食業とか、他の業界も多かったりします。あとは本人ではなく奥さんとかが相談に来ることもありますね。

SEの方で相談に来る人は、若い人が多いです。20代とか30代前半。30超えた人はみんなよそで通じるか分からないから今の環境にいるっていう人が多いです。一社しか見ていないと他のところとどれくらい違うか分からない、転職したところで同じような環境じゃないのとか。今の会社で一部しかやらせてもらえないんよ。特に大手は。自分で一通りできないからつぶしがきかない人間じゃないかって。

同じことやらされるなら今のままでいいやとか、悪くなるかもしれないとか。こっちも無責任なことは言えないんですよね。ですが、いつも、例えばよそで通じるか分からないって言われれば、そこは心配ないと答えてます。今の会社でできているなら、最初は戸惑うかもしれないけど3ヶ月我慢してやれば大丈夫って。

一個しっかり何かやった人って他の物にも柔軟に対応できると思うんですよ。同じ言語を使ってても他の会社で違うやり方に対応するまでのことを考えれば同じようなことかなとも思いますし。

「一回しっかりやって、その後他へ行くことで問題は解消するんですね」

村田氏:大手って給与が安いんですよとにかく。8年いて残業してなかったら20いかないとか。ありますよ。実際、そういう方はBrandingEngineerさんにお世話になって給料が2倍以上になりましたよ。でも、同じようによその会社に行っても通じるか分からないって思っていたわけです。業界的に賃金水準が低いシステム部とかって、業界の中での水準なので、凄く給料が低いんですよ。移動で他の部に配属されて変わる可能性はあるんですけど、同じようなことをやってシステム会社に勤めてる人とかはすごい低い。業界をスイッチしたら給料が上がるっていう可能性はやはり高いんでしょうね。

「Webに行かれる方はやはりかなり上がったと」

村田氏:例えばSIerで働かれている方が常駐案件型のサービスを使って、Web業界の会社に修行で行ってみて、経験を3年くらい積んだあとに正社員としてWeb系に転職するなり、フリーで独立するなりという選択をするといいと思っていて。それこそうちからBrandingEngineerさんに紹介した方も、そういう経路でかなり給料は上がったみたいですしね。SIerはブラックとかデスマーチとかそういう面が切り取られがちですけど、たしかに教育とか研修とかはしっかりしてるので地力がついている保証にはなりますし、Web系に転職したときに力が足りないってことにはなりにくいみたいですね。

「ステップとして常駐型案件を取って、現場経験を積むっていう感じですね」

村田氏:SIerの方とかって、1つの世界、1つの企業しか見ていないのでかなり視野が狭くなっちゃってると思うんです。20台後半になったときに他の企業の商習慣とか、技術感とかを見る機会がなくなるから自分の実力が通用するのかわからなくなるんですよ。転職しても同じなんじゃないかとか、大手だと一部しか任せてもらえないからそれをアピールしてもどこまでできるのかわからなかったりするんです。このシステムに携わりました、と言っても本当に一部だったりすると。ですが、先に言ったようにどういうキャリアを歩むかを考えて経験を積んで行けば、上がることも多いはずなんですけどね。どういうキャリアを歩むのかを考えてプランを進めていけるといいですね。

前半のインタビューはこちら「IT特化の社労士、村田氏に聞く「会社を蝕むモンスター社員問題」前編」

[筆者プロフィール]
murata村田 吉典
東京都生まれ。武蔵大学経済学部経済学科卒業。 卒業後は物流会社で社内SEとして勤務していたが家業の工務店を継ぐために退職。
労務管理の重要性に気づいたことから、労務管理に関心を持ち、独学で社会保険労務士試験に合格。

合格後は神奈川県にある社会保険労務士事務所で勤務。2014年9月に品川にて村田社会保険労務士事務所を設立した。主に助成金、就業規則の作成、労務管理事務の支援、労務の仕組み設計の支援を行う。