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新型コロナウイルスの感染拡大により、これまでのビジネスの常識が大きく変化し始めている。
株式会社ベーシックは「Webマーケティングの大衆化」というミッションを掲げ、情報のオンライン化によって企業同士を結びつけ、各企業の抱えている素晴らしい商品やサービスがあらゆる人に届くような世の中を築こうとしている。
取締役COOを務める林宏昌氏は、ビジネス領域で“新しい当たり前”を築き上げるべく、Webマーケティングの重要性、そして今後ベーシックが歩むべき道のりを説いている。
多くの企業がWebマーケティングを活用できていない現実
株式会社ベーシックのご説明をお願いします。
「創業18年目の企業になるのですが、マーケティングのSaaSを軸としています。特にWebマーケティングを大衆化していくというミッションを掲げておりまして、多くの方々がマーケティングを推進する際に直面する「知識」「環境」「人」の不足という課題を解決していきたいと考えています。その上で3つの事業を運営しており、『ferret One』はBtoBマーケティングに特化したツールで、これさえあれば見込み顧客獲得に必要なコンテンツマーケティング、メールマーケティング、セミナー、ホワイトペーパーなど複数の施策をなんでもできるというオール・イン・ワンのSaaSです。また、『formrun』はフォーム作成管理サービスで前年比250〜300%の成長率となっています。ノウハウのない中で、マーケティングをどうしたらよいのかわからないという方々に向けては、『ferret』という国内最大級規模のマーケティングメディアを運営しております」
林さまがベーシックにジョインされた際の役職はどういったポジションになりますか?
「多くの企業でマーケターの人材不足が問題となっている一方で、『ferret』はマーケターの人材を中心に約45万人の会員がいたので、この方々を副業でマッチングさせる人材シェアリング事業という新しいサービスを立ち上げる役割を任されました。また、同時に人事の最高責任者であるCHROの役割も務めるということで、2018年に入社しました」
その後、取締役COOに就任された背景を教えてください。
「就任したのは2021年3月です。前述の通り、元々は新しいサービスを立ち上げることを検討していたのですが、入社直後に感じたのは、組織改革を着実に進めていかなければ次の成長に向けて非常に脆い状態に陥るということでした。これまでリクルートの働き方変革推進室室長など様々なことを歴任してきた経験則から、人事制度の刷新だったり、ビジョンやミッションの再定義をする必要性を強く感じたので、新規事業を一旦止めて、CHRO業務に集中したいという旨を秋山に伝えました。その後、組織体制や人事制度の変革が一段落したタイミングで、今後伸ばしていきたい事業だった『ferret One』が思うように伸びていなかった事情もあって、次は『ferret One』の事業部長も担うことになりました。現在は人事からは離れ、もう一つのSaaSである『formrun』も含め、取締役として事業全体を管掌する立場となりました。おかげさまで、昨年はSaaS事業を飛躍的に伸ばすことができ、2021年末には11億円の資金調達も行っています」
ベーシックの強みは「人材とビジョン・ミッション」
そんな林様が考えるベーシックのストロングポイントはなんでしょうか?
「人材、そして、ミッション・ビジョンの浸透の大きく2つだと考えています。昔からベーシックはミッション・ビジョンを大切にしていて、我々は何を成し遂げたいのか。何を目指していきたいのか。そういったところが各社員まで広く浸透していて、ミッション・ビジョンに含まれる『世の中の人々の情熱を最大化させていく』ということを心から言ってくれているメンバーが多い。共通のゴールに向かって一体感を持って進んでいく組織は本当に強いですが、それをしっかり実現できている組織だと思っています。
人材という観点においても、本当に素直で利他的なメンバーが多い。その上で変化に強く、変化することを全く厭わないという姿勢が、元々ベーシックに根付いている人材の価値だなと感じています。毎日何かしらの変化が生じているが、そこに対して前向きに常に挑戦し、変化を楽しんでいる社員がたくさんいる。何か新しいことを学んでどんどん変化していく意欲のある人が多いのは、人材領域における強みになります。
組織作りにおいて、それまではトッププレイヤーがマネージメントしていたのですが、マネージメントの役割というのは、人の能力を開発したり、あるいは業務の目標をしっかり持って、全体をコミットして高い成果をあげて率いていくことだと再定義しました。そのため、ミッションについても個人と会社、部門のミッションが密接につながってるようにしています。具体的には、各経営陣が管掌機能のミッション案を持ち寄り、ミッションツリーを作成して会社の目指す方向性を示す形にした上で、事業部ごとのミッションツリー、各メンバーのミッションツリーの順でより詳細に落とし込んでいます。だからこういう構造の中で自分はこの仕事をこのレベルでやるんだ、としっかり認識することがポイントになると思っています。そのため、組織としてのマネージメント、人を育成するための時間、1on1や人材開発会議で、ミッション設定、あるいはその進捗確認を、心と時間を砕いて取り組むことで、育成スピードや向上意欲、情熱感の高い状態を維持できると考えています」
先ほど11億円の資金調達のお話がありましたが、詳細をお伺いしてもよろしいでしょうか?
「おかげさまで『ferret One』の導入社数が1,000社を超えたのですが、Webマーケティングを大衆化していくには早く1万社にご活用いただけるよう、スピードを加速させていく必要性があると思っています。また『formrun』も累計で13万人以上の方々に登録いただいています。今後海外展開も見据えた時に、人やプロダクトやマーケティングへの投資は重要になってくるため、投資可能な体制を築くためにも、資金調達を行いました」
新型コロナウイルスの感染拡大が依然として猛威を振るっていますが、影響はいかがですか?
「ビジネス全体の常識を変化させる事象になっています。特にBtoB領域は、最近まで企業同士の出会い方が昔ながらの体制が中心で、いきなり営業の電話を掛けたり、大規模な展示会などで名刺交換して営業の機会を得るなど、非効率で営業のエネルギーを奪う形が定着していました。コロナ蔓延後はそのようなイベントも開催されなくなり、リモートワークが浸透して会社に電話する機会も無くなってきていることから、オンラインでの出会い方が加速度的に模索されている状況にあります。オンラインのセミナーや商品紹介イベントのニーズが高まり、従来の営業方法から、Webマーケティングという新たな常識が拡がってきているという実感はあり、WebマーケティングのSaaSを提供するベーシックにとっては追い風になっています」
ベーシックを「人々の情熱を妨げる問題を解消していく会社に」
リモートワークが定着しつつある一方、マネージメントに苦労しそうです。貴社にとっては得意分野ですか?
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「そうですね、円滑な管理ができていると思います。弊社として良かったのは、ビフォア・コロナの段階で、一人ひとりが半期単位でどのような目標と意義を持って仕事を進めるのかを整理できていたことです。リモートワークがうまくいかない要因としては、自分が何をしているのか把握し切れておらず、半期、あるいは今月という単位で、何をどれくらいの粒度で業務推進するのか擦り合わせできていないことが挙げられます。また、リモートワーク自体の課題は大きく分けて2つあり、1つは人間関係の構築です。例えば新卒の社員がいきなり最初からリモートで人間関係を築いていくのはなかなか難しいので、リモートワークだけに固執するのではなく、オフィスで顔を合わせる機会も多少は設ける必要があると思います。2つ目は濃密なディスカッションであり、スピード感を持ってクリエイティブなディスカッションをするには、やはりオフィスで面と向かって話し合うのが効率的です。リモートワークの良い面と悪い面を切り分けながら、あえて完全リモートとは謳わず、リアルとの使い分けをすることで、熱量の共有、人間関係の構築、抽象的な議論の整理などを補填していくのが良いかと思います」
最後の質問になりますが、林様が思い描くベーシックの未来図はどういったものになりますか?
「人々の情熱を妨げる問題を解消していく会社になっていきたいですね。そのために、Webマーケティングの大衆化が手法になると思っています。様々な企業が強みに立脚できるような社会にしていきたいです。そして、そのようなサービスや商品が届くべきところにちゃんと届く世の中にしたいですね。例えば、BtoBで言うと、非常に良い商品やサービスを持っている企業がありますが、先ほど話したようなリアルの展示会でたまたま通りかかって名刺交換した人たちに電話を掛けて、たまたまそのサービスを知った人にしか届かないというのは、あまりにもったいない。そんな現状を打破するためにも、Web上できちんと認知されるのが当たり前の社会にしていかなければなりません。Webマーケティングの大衆化に向け、我々のサービスにより、誰でも簡単にWebマーケティングができ、顧客はマーケティングに頭を悩ませることなく、自分たちのサービスや商品を磨き込むことに時間と情熱を捧げられるような手助けをしていきたいです。そのために、我々自身もまだまだサービスを磨き込んでいく必要があります。その過程で人材不足という壁に当たるのならば、そういった人材をどのように育成していくのか。または、人材不足でも運用していけるようなデータを活用して自動化していくのか。この辺りの挑戦をしっかりやっていくことで、思い描く未来を一刻も早く実現させていきたいと思っています」
プロフィール
株式会社ベーシック
取締役 COO 事業本部長・ferret One事業部長
林 宏昌
2005年、リクルート入社。新築マンション首都圏営業部で、優秀営業を表彰する全社TOP GUN AWARDを2年連続で受賞。2014年、リクルートホールディングスにて経営企画室室長を担い、株式公開を経験。2015年、広報ブランド推進室室長兼「働き方変革プロジェクト」プロジェクトリーダーに就任。その後、広報ブランド推進室室長、働き方変革推進室室長を歴任。2017年、リデザインワークを創業。大手企業の働き方改革のコンサルティングを推進。2018年ベーシックに入社しCHROとして人事制度を刷新、現在はCOOとしてferret One事業を中心に事業全体を管掌する。